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トンニャン#31 愛と美の女神 ウェヌス 

※この物語は、「阿修羅王」編、「アスタロト公爵」編の、本編です。
「ウェヌスの巻」のような意。話の位置は前回の「ブラックエンジェルの巻」の続きです。
なお、この物語で「現在」「今」という場合は「日本民族が滅びてから約1000年後」のこと。つまり、今から何千年後かの未来です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

ウェヌスは自分の城の庭で、花を見ながらくつろいでいた。
この庭の四季折々の草花は、いつも自分の美しさに彩りを添えてくれる。
どんな花でも、自分の美しさに比べたら、色あせてしまう。
それでも美しいものに囲まれているのは気持ちがいい。

「ウェヌス様、お庭の手入れが終わりました」
いつも庭に手を入れるのは、息子のクビドの妻であるチェリーの仕事だ。
チェリーはクビドの仕事の手伝いをする傍ら、時々この庭の手入れに来てくれる。草むしりから水やり・間引き・植え替え、何でも嫌がらずやる。
ウェヌスはこのクビドの妻を、まあ、それなりに気に入っていた。
前の妻・プシュケーもよく働く娘だった。
その事を知ってか知らずか、チェリーはウェヌスの頼み事は、ほぼ二つ返事でやってのけていた。

愛と美の女神 ウェヌス
恋の女神。彼女の仕事は欲望をかきたてる事、恋が職業である。ギリシャ神話のアフロディーテと同一であり、「泡から生まれた」との意。神々の父クロノスが、父親のウラヌスを殺し、海に投げ捨てた、その身から出た血が白い泡となり、そこからアフロディーテが生まれた。ゼウスの命で鍛冶の神ヘパイトスの妻となるが、多くの情事を重ね、父の違う子供を多く生んだ。その都度ヘパイトスは彼女を許したという。たくさんの情事の相手の一人には、ゼウス、アレス(マルス=ミカエル)も含まれる。愛の天使クビドは、彼女の子供の中で、最も有名な天使である。

「先日いただいたカモミール、カモミールティーにして出したら、クビドがとても喜びました。
ウェヌス様のお庭には、なんでもあって、こうして手入れをしていても、次々咲いてゆき楽しみが途切れる事がありません」
ウェヌスはチェリーの言葉が聞こえてるのか、すいと立ち上がると、一輪の白いユリを手折った。
「この花と私と、どちらが美しい?」
「はい、ウェヌス様でございます」
チェリーは即座に答え、ウェヌスは満足そうに頷いた。

「クビドは元気でいるの?」
「はい。人間界が乱れておりますので、いろいろと苦労もあるようですが、元気でおります」
ウェヌスは微笑みながら、手折ったユリをチェリーに渡した。
「これを飾っておきなさい。私には劣るけれど、美しいものには違いない」
「ありがとうございます」
チェリーが満面に笑みを浮かべてユリを受け取った。
「おや、あれは?」
チェリーがウェヌスの目を追うと、庭の中ごろに空から飛来した天使がひとり、降り立った。天使は立ち上がると、近づいてきた。

「クビド。珍しい事もあるものだわ。チェリーを迎えにきたのかしら?」
その天使はクビドだった。彼はウェヌスの前まで来ると、ていねいに挨拶をした。
「お久しぶりでございます。ウェヌス様」
チェリーも、少し面食らっていた。クビドが母親のウェヌスを訪ねるなど、何百年ぶりのことか。
「今日は、少し早めに仕事が終わりまして、たまにはウェヌス様のご機嫌伺いに参りました」
「それは嬉しいこと。いつもチェリーから話は聞くものの、どうしているかと案じておりましたよ」
ウェヌスは、クビドに自ら近づき、その手を取った。
「クビド、これは・・・」

続く
ありがとうございましたm(__)m

トンニャン#31 愛と美の女神 ウェヌス

※トンニャンシリーズの「〇〇の巻」noteなら、ほぼ五回。
これから時間のある時に、一挙に五話アップします。
たまにしかアップできないので、お時間のある時、ゆっくり一話ずつ読んでくださると嬉しいです。

トンニャン#32 愛と美の女神 ウェヌスへ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/na21e93ce94e8

トンニャン#30 夜の女王ブラックエンジェルはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n5e06b79e7fbb

最初からトンニャン#1は
https://note.com/mizukiasuka/n/n2fc47081fc46

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