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エンドレスヒールⅡ-3.11 #17あさみの場合

(再び2011年4月~)

書棚の一列目をなんとか整え、向かい合った二列目と三列目に向かう。
唯野と浅海は、寒さに耐えながら、それでも少し汗をかいていた。
4月の寒さ。
いや、外は春の陽気が徐々にS県N市にも訪れていた。
道行く人も 春の装いになりつつあった。

しかし図書館の中は、真冬の戸外並みの寒さ。
空調・・・暖房が入って無いのだ。
ビルの中なので、中の寒さは冬並み。
本の並び変えをしている人たちは、皆 真冬の格好。
ダウンジャケットや冬用ジャンパーといった物を離せない状況だった。

そして、浅海達が本を並び変えているのと同時進行で、図書館内の地震によって被害のあった個所の工事も進められていた。
そんな寒い中でも、動き始めると熱くなってくる。
それだけ動きが激しいのだろう。

一冊二冊ではない。
館内には何百・何千冊の本がある。
もちろん、重い本も、信じられないほど大きい本もある。
浅海が最初に唯野と担当した箇所は、普通の本だったが、文庫本ではない。
一般装丁の図書だ。

何冊も 何冊も、中には長いシリーズ物など、表紙からして重いものなど 様々なバージョンの本を何冊か手ではさんで移動する。
一冊でも 違う箇所にあったら、うまく入ればいいが、入らなければ大移動だ。
そんなことの繰り返しで、唯野と浅海は、やっと二列目の整理を終え、三列目も目鼻がつき始めた。

「もう、時間だね。明日にしよう。続き、私たちだし。」
唯野がキリのいいところで 書棚を見つめると、リーダーから本日の終了の声がかかった。

4月7日(木)夕方のことだった。

2011年6月17日(金)
※4/7、あの大きな余震が夜中に襲うことを、まだ知らない・・・。

エンドレスヒールⅡ-3.11 #17あさみの場合

かあさん、僕が帰らなくても何も無かったかのように生きていってね

次回 エンドレスヒールⅡ #18はこちらから
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前回 エンドレスヒールⅡ #16は こちらから
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