オオカミ

オオカミと羊 #8

今この国の王が何故、我らオオカミをここまでして毛嫌いするのか?その理由はただ一つ。我らの声が耳障りだからだ!!

我らの声は、理性の声。それは王の中にある自分勝手に動き回ろうとするその自我を抑える。何もかも自由に振舞おうとするその心を押さえつける。この国の王はそれが苦しくてたまらないのだ!!

何もかも自分の思うようにしたい。けれど、我らの声がそれを邪魔する。王に意見し、その王がしようとしている事を制止させようとする我らが王は憎いのだ!!

何でもかんでも自分の思い通りにしたい。けれど、我らがいる事で、王はそれが出来ない。我らの声が王の中に届くとき、王の中にある自我の力はそれにかなわない。我ら理性の声にかなわない。それがこの国の王は気に入らない。

本当は理性の力の前でなど膝まつきたくはない。でも、今は自我の力がまだ理性の力に勝つ事が出来ずに、どうしても我らの声の前に王はひれ伏すしかない。でも、王は我らオオカミの前になど絶対にひれ伏したくはない。この国の王は、何としても我らオオカミにその価値を認めたくないのだ!

何故、そこまでして君たちオオカミの価値を認めようとしないんだ!!理性の力というものを王は認めようとしないんだ?

この国の王は、新しい人間たちによってその自我を何処までも大きく膨らまされてしまったんだ。その何処までも大きく膨れ上がってしまった自我は、自分以外に価値があるものなどこの世界にあるはずがないとそう思うようになった。

この国の王は言う。私に指図をするな!!私に意見をするな!!と!自分の言っている事は全て正しい事なのだから、それを正そうとすることは間違いだ!とそういう。

王がどんなに間違った事を言ったり、したりしていたとしても、それをこの国の者は誰も咎める事は出来ない。こうした王を作ってしまったのは、この国の者の責任ともいえる。

皆、自分の今ある立場を失うのを恐れて、何でもかんでも王の言いなりになってしまった。誰も王に意見をする者がいなくなった。その結果、王の自我は何処までも大きく膨れ上がっていった。そしてこの国で自分が一番素晴らしいものであると王はそう思い込んでしまった。そうなれば、ますます我らオオカミの声など耳障りのなにものでもなくなる。

毎晩我らは王の枕元に現れては、お前は王にふさわしくない!とそう告げてきた。しかし、この国の王はそれを何も聞かない。私に意見などするな!私に命令するな!!とただそう言うばかりで、この国の王は何故、自分が我らからその様な事を言われるのか?という事を改めて考えようともしない。

何故、毎晩毎晩この様な事を言われなければならないのか?それを考えるどころか、そうした事を言う我らオオカミを王は全て狩り、焼き払ってしまおうとした。

この国の王というのは、自分にとって不都合な事は全て抹消したいのだ!!何もかも全て失くしてなかったことにしようとする。今まさに多くのオオカミを狩り、それにより、これまであった人間とオオカミが共に生きたというその歴史そのものを王は抹消しようとしているのだ。!!

そう言った歴史があるのにも関わらず、それが自分にとって不都合だから、と言って、彼は今まさに歴史そのものを自分のその身勝手な思いで変えようとしている。

オオカミとの絆、それを取り戻すのなら、この国は再び安定を取り戻す。それがこの国の王はわかっているのだが、自分の持つ権威を失いたくないばかりに、どうしてもそのオオカミの存在を消したい。オオカミの存在を消して、本来であれば、オオカミが賞讃されるべきところのものを全て王は自らのものにしたいのだ。

この国の王は何もかも自分が欲しいのだ。何もかも自分がその手に持たないと満足できない。他のものに持たせるなんて事は王のプライドが許さない。

王のその膨れ上がった自我、プライドのせいでこの国は今破綻寸前の所まで来ている。何もかもが上手く立ち行かなくなっている。なのに、そこに目を向けようとはせずに、この国の国民の事など何も思う事なく。王はただ自分の為だけにこれまでの歴史を隠そうとしている。

我らオオカミを全て狩って殺してしまわなければ、王は自分の自我を自由に羽ばたかせる事は出来ない。いつでも、オオカミである我らがいれば、その我らの目にさらされ、王は何一つ自分の思うようには出来ない。出来たとしてもいつもその心の何処かには罪悪感の様なものをかんじなければいけない。

我らの声、そして目、それは理性そのもの。神そのもの。だから、王は、その目を欺いて、自分勝手に何か事を成す事に強い抵抗感を持っている。自分勝手に何かを成すという事は、神を犯す行為だ!!という事が王は心の何処かでわかっている。だから、苦しくなるし、我らの声が邪魔になる。

だから、この森に住むオオカミを一匹残らず捕まえて殺そうとしているのだ!王は、本当の事を言って今ある自分の権威が失墜する事を恐れている。我らにその価値を認めた瞬間に王の持つ価値は多少なりとも落ちる。それが許せない。だから、王以外の何物も彼は認めようとしない。

王はこれまでの歴史を正しく伝える事よりも、今自分の持つその権威を守りたいというのだ。多くの民の為に真実を明かそうとはせず、彼は自分の為だけにその真実を闇に葬り去ろうとしている。

このままオオカミである我らを、獣としての価値しかないものとして王は全て抹消してしまいたいのだ!!誰からも気付かれない内に王は我らを全て殺すつもりだ。

様々なものに意味を、そして価値を認めたくない。意味、価値、それを分散させてしまえば、自分の価値が減ってしまう。彼は自分だけに価値を置きたいのだ。他の何ものにもない意味や価値が自分には在るとそう思いたいのだ。そうやってこれまでもこれからも、王はこの国の国民を騙していくつもりだ!!

この国の王は、我らオオカミをこの国から完全に抹消し、その穴を埋める為にお金を使う。お金さえあれば、何もかも全てが万事うまくいくというような思いをこの国の国民に抱かせた。本当はお金など持っていても自分の中にあるバランスを欠いたものなど補償は出来ない。でも、王はそれがお金で出来るとそういい、多くの国民を騙した。

本当に大切なもの。それを自分のエゴによって切り捨て、そこにそのかわりとしてお金を据えた。それで、何もかも万事OKの様な顔をしている。

今の現王は、この国の内情を何も見ようとはしない。国は荒れ、今にも分断してしまいそうなところまで来ている。町では貧困と富裕層の間に格差が生まれ、いくらお金が個人の心を補償してくれるものであるといっても、そのお金が、ほんの一部の富裕層の間で握られている。最下層の貧困層の所まで、その自分の欠けた部分を補償してくれるというお金は回ってはこない。そうなれば、その一番最下層の人間はどうしたらいい?お前の様な人間はどうしたらいい?

そう!!王の言うなりに動くしかなくなる。

この国の王は何もお前たち国民の事など考えてはいない。この国を思う事もない。彼はただ自分の事しか思ってはいない。本当にこの国の事を、国民の事を思うのならば、何が真実であるのか?正しいこれまであった本当の歴史について王はその口を開かなくてはいけない。でも、この国の王はそれをしようとはしない。

何もかもその全てを捻じ曲げて、自分に都合のいい解釈に変えてしまう。そしてそれをこの国の国民は皆、真実であるとそう思って生きている。もし、この森から全てのオオカミが狩られてしまったら、この国はもう完全におわってしまう。何故なら、理性の声を聞こうとも、もう絶対に聞く事は出来なくなるからだ!!この森にオオカミがいる限り、その声を聞く事が出来る人間も中にはいる。それをお前という人間が今此処で証明した。

我らは此処で全て死に耐えてしまう訳にはいかないのだ!!この国を滅ぼさないためにも、我らはこの国に残らなければならない。我らと人間の絆を再び蘇らせ、この国を我らはもう一度再生させなければいけないのだ。

お前は何も知らないだろうが、世界はこの国を中心に構成されている!!つまり、この国というのは、他の世界の全ての発端にあたる国なのだ!!ここを我らが守る事が出来なけば、もうもはやどの国も守る事は出来ない。世界そのものが崩壊してしまうのだ!










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