本漆金継ぎと簡易金継ぎの違い
金継ぎの種類
①本漆金継ぎ
割れたり欠けたりした器を、天然の漆で修理する日本古来の伝統技法のこと。
接着から下地、装飾のすべてに天然漆を使います。
②簡易金継ぎ
器の割れや欠けを、接着剤やエポキシ樹脂などを使い修理する方法。
上から「新うるし」と呼ばれる化学塗料(漆とは無関係)を塗ったり、表面のみ天然漆を使用したりと装飾の仕方は様々です。
それぞれのメリット・デメリット
①本漆金継ぎ
メリット :
材料が自然素材(小麦粉、水、砥の粉など)なので、人体や自然に優しい。直したあとは口に触れる箇所でも安心して使える。半永久的にメンテナンスが可能。
デメリット : 工程や漆が乾くのを待つ時間が多く、仕上がりまで時間がかかる。(通常2ヶ月〜半年)修理費が高価。
②簡易金継ぎ
メリット : 安価。仕上がりが早い。
デメリット : なおったあとは食器(食べ物や口が触れる箇所)として使うことを推奨されない場合が多い。作業時に有害ガスが発生する。劣化する。
個人的な想い
どちらがいい、悪いではなく、捨てられてしまう器が減っていくためにはどちらも必要だと思っています。
人によって安心安全の尺度はちがうので、あくまでお客さまがなにを選ぶのか。そのために選択肢があることが大切なことだと感じています。
ただ、わたしの場合は本漆金継ぎのみをしています。
きっかけは、20代で経験した夫の大病。
体、心、食、自然、すべては繋がってるんだなーということに気づいたら、そのすべてに優しいことをしていきたいと思うようになりました。
それが叶うのが、漆や金継ぎだったのです。
特に、これからの子供たちには安全なものを使ってほしい。
食べ物や飲み物がのる器は、自然のものでなおしたい。
そして、依頼主の方が待ってくださっている中あれなのですが。
最近「待つ」ということって、なかなかする機会がないなぁと思っています。
週1回のテレビ番組が始まるのを録画ボタンに指をかけて今か今かと待つ。
愛読してる雑誌が本屋さんに並ぶ日を待つ。
時間通りに来ないバスをバス停で20分待つ。
今すぐ欲しいものがあるけど買い物に行ける日まで待つ。
今や、スマホと指1本でなんでもできてしまう時代。
時間は調べれば節約できるし、動画は好きな時にネトフリで見れる。SNSやネットでモノや情報はすぐ手に入る。
待つことなんかほとんどない中で、唯一わたしたちの思い通りにいかないのが、自然だと思うのです。
漆は生き物といわれるほど、自然のリズムに近い存在。
気候や条件によって、思い通りに乾かなかったり、なぜか前と違っていたり。
陶芸をしていると土も、子育てしていると子供たちも、自然に近い存在だなぁなんて思うことがあります。
そのペースは決して私たちのペースとピタッと合いはしないから戸惑うけど、できることをやったらあきらめて観察してみる。すると、不思議と自分の心も落ち着いてくる気がするのです。
そうか、大人になったわたしも、前は何にも縛られずそうだったんだよなーと。
自分のことで言うと、前はもっと喋るのも歩くのも食べるのもとっても遅くて、よく注意されたほど「のんびりや」だったんですよね。
金継ぎをしていて「マインドフルネスだ〜」と感じるのは、こんな自然に還る感覚があるからなのかもしれません。
本漆金継ぎならではだと思います。
最近は、ガラス用漆という樹脂が少量入った漆があったり、漆での金継ぎも100%自然なのかと言われると難しいところもあります。
なのでこれは、あくまでわたしが思う安全なお直しです。