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海と魚とアーケード。

今日の取材先は、半年ぶりに訪れた逗子だった。

仕事を終えたその足で、海岸通りを目指して歩いてみた。でも、駅のまわりは閑静な住宅街。目指す方向は合っているはずなのに、細くて紆余曲折した住宅街を抜けるには、方向音痴のわたしにとってちょっとした試練だった。

感覚だけを頼りに15分ほど歩いていると、ゴールを確信させるような、潮の香りと波の音。

海はもうすぐだ。

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波のリズムに合わせるように、色とりどりのヨットが揺れている。

砂浜には玩具で砂をもてあそぶ子ども。波打ち際、というより海に半身浸かってびしょ濡れではしゃぐ中学生。

やることがないので、人差し指と親指で「L」の形をつくって合体させてみる。まるでカメラのファインダーを覗くみたいに。

そこには平和の2文字がぼんやりと浮かぶような、穏やかでホッとする時間が流れていた。

帰りは不思議と迷子にならなかった。

だけど、京急線の逗子・葉山駅を目指したはずが、JR逗子駅に辿り着いたので驚いた。とりあえず、商店街のアーケードを進んでいれば迷子にはならないことを知った。

ベンチに腰掛け、取引先に急ぎの報告メールを打っていると、前方から微かに魚のにおいがした。香ばしくて美味しそうな魚ではなく、生魚の。

普段スーパーの魚に見慣れているわたしは、生粋の魚屋を見つけると浮かれてしまう。

腰の曲がったおじいちゃんが、誰よりも威勢のいい声で店番をしていた。2切れ400円に値下げしてもらった天然の鯛を入手して気分が上がったわたしは、サンルイ島で桃のジュレと、フランス産のチーズを使った人気のチーズケーキも買ってしまった。

空を見上げたら、ほんのり赤く染まった夏の雲。

「なんだか観光している気分」

だって、最近外に出られないし。日本人も外国人も。世界中の人々が、制限をかけられたり、曖昧な基準のまま自己責任に委ねられたりしている。仕事の帰り道くらい思いきり楽しみたい。

天然の鯛はシンプルに酒蒸しでいただいた。白髪ねぎと松茸に見立てたエレンギを添えて。

新鮮な魚の美味しさを噛みしめながら、いつか海のそばに住むのも悪くないなぁと思った。

#逗子 #海 #日常 #エッセイ #逗子海岸 #ヨット #波の音




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