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ポーカーのミックスゲームのすすめ

 ポーカーという言葉は特定のゲームを指したものではなく、共通の特徴を持つトランプゲームの総称です。その特徴とは、「手札で指定された役(ワンペアやフラッシュなど)を作り、その強弱で戦う」こと。これさえ守られていればどんなゲームでもポーカーです。
 ポーカーの世界的な主流はテキサスホールデムです。2枚の手札と5枚の共通場札を使って役を作ります。シンプルかつどこまでも奥深い、とても面白いゲームです。ただ、もうみんな上手すぎるんですよね。勉強素材がネットに山ほどありますし、GTOという有効戦略も常識になりました。プレイヤーの平均値が高いから、とても細かなところの技術の大小でしか差が出ません。勝ち続けるには大きな努力や根気が必要になっています。ひとつのことを突き詰められる人には向いているでしょうが、「毎回90点取るのは得意なんだけどな」という人もいることでしょう。
 そんな人におすすめなのがミックスゲームです。これは複数の種類のポーカーゲームを入れ替えながら遊ぶものです。ゲーム数は決められておらず、2つのときも5つのときも10個のときもあります。扱うゲームの内容も自由ですが、基本的には多数ある定番ゲームの中から選ばれます。定番と言ってもホールデムに比べたら相当マイナーです。戦略も確立されていませんし、勉強素材も乏しい。つまり自分の頭と経験で戦っていくしかないんですね。それが本当に楽しい。いろんなボードゲームを買っては遊ぶような人に向いていると思います。
 ミックスゲーム、ちょっと前までは日本じゃ全然遊ばれてなかったんですけどね。2022年に日本で最も有名なプロポーカープレイヤー・木原直哉さんが海外の超ハイレベルミックストーナメントPPCで3位入賞するという快挙を成し遂げ、その前後からじわじわ人気が伸びていった感覚があります。今では大型大会でトーナメントが組まれる程度には人気になりました。
  そんなミックスゲームの代表的な種目を簡単に紹介していきましょう。

ホールデム系

 手札の他にコミュニティカードと呼ばれる場札がいくつか公開され、全プレイヤーがそれを参照して役を作っても良い、というタイプのゲームです。テキサスホールデムの普及により一躍有名になりました。
 シンプルなルールで誰でも遊びやすい一方、公開されている情報量の多さから深いレベルでの読みあい、駆け引きを行うことが可能です。

■テキサスホールデム
 先述のとおり、圧倒的に人気のある種目です。ただしミックスゲームの中ではそこまで好まれない印象があります。ミックスゲームプレイヤーはテキサスに飽きていることが多いので。

■オマハ
 基本的にはテキサスホールデムと同じですが、異なるのは手札が2枚ではなく4枚であること。そして、そのうち2枚を必ず役として使用しなければならないことです。手札が多いので強い役を作りやすいようでいて、「必ず2枚」の制限がのしかかって思ったようになりません。大抵ポットリミットで遊ばれます。種目としてはテキサスの次に人気があり、これ単体の大会もよく開かれています。

■オマハハイロー
 オマハのルールに、「弱い役(ロー)を作る」という別の目標を追加したものです。勝者は通常ルール(ハイ)から1名、追加ルール(ロー)から1名の延べ2名となり、それぞれ勝ち分としてポット(賭けられたチップの総額)の半分が与えられます。同じプレイヤーがどちらも勝利することもあり、その時は総取りです。これを「スクープ」と呼び、プレイヤーはこれを目指していくことになります。
 こういった、勝利条件がハイ・ローの2つあるゲームは「スプリットゲーム」と呼ばれ、ミックスゲームではよく好まれます。

スタッド系

 共通カードはありません。各プレイヤーにまず所定枚が配られます。このうち1枚だけが表です。その後、ターンごとに表で1枚ずつ、所定枚数追加で配られ、最後に裏で1枚配られて終わりです。この中から5枚を選んで役を作り、勝負します。これらの流れの中で複数回の賭け(ベット)のターンが発生します。
 カードが表向きで追加されていくため、役が進展したかどうかがわかりやすく、相手との比較もしやすいという特色があります。また、それを逆手に取り、裏カードが全然弱くても表カード(よく「看板」とか「顔」とか呼ばれます)が強ければ積極的にブラフできます。まあ、そんなに単純ではないですが。
 70年代くらいまではこれがポーカーの主流だったようです。それも納得できるくらい、ポーカーの原始的な面白さが詰まっています。

■セブンスタッド
 通常のポーカーの役を使って戦うスタッドです。手札は合計表4枚裏3枚になります。

■ラズ
 通常とは逆に「役がどれだけ弱いか」を競います。このタイプのゲームはローゲームと呼ばれます。ラズではストレートは考慮しないので、最も弱い役=最強の役は「A2345」です。
 なぜわざわざ弱い役で競うのか。そこには役が出来上がる確率が関係しています。ポーカーの強い役って出現確率が極端に低いんですよね。だから、大体ワンペア以下で戦うことになる。ワンペア対ブタの戦い、みたいなのはあまり駆け引きの余地もなく終わってしまいます。それが、ローゲームだと単なる数字の集まりだけを見るので、どの役も同じ確率で完成します。「A2345」も「9TJQK」もイーブンなんですね。つまり強い役から弱い役まで均等に現れ、バランスが良いのです。まあ、このあたりの問題はホールデム系だとあまり気にしなくて良いんですが。
 というわけで、ラズは良くできた人気ゲームなのです。

■セブンスタッドハイロー
 セブンスタッドルールのスプリットゲームです。

ドロー系

 プレイヤーが手札を交換しながら役を完成させていくゲームです。手番のプレイヤーは複数枚の手札から要らないものを選び、何枚捨てるか宣言して裏向きに捨てます。そしてそれと同数枚を裏向きで得ます。これを何回か繰り返し、出来上がった役で勝負となります。
 かつての日本ではポーカーといえばこれが主流でしたよね。今でも家庭で遊ぶ人もいるのではないでしょうか。しかし侮ってはいけません。これは大人の勝負に耐えうる強度を持った遊びなのです。
 表向きになるカードが1つもなく、プレイヤーが得られる情報は相手の交換カードの枚数とチップアクションだけ。それなのに実に奥深く高度な駆け引きが繰り広げられます。他のルールに比べプレイヤーのやることが多く、スキル差が出やすいルールでもあります。

■2-7(deuce to seven) Triple Draw
 ドロー系のローゲームです。こちらはストレートを考慮するので「23457」が最強。ゆえに2-7と名付けられています。交換回数は3回。各回ごとにベットを行います。
 ストレートを考慮しないA-5、交換回数1回のSingle Drawなどもあり、どれも人気を博しています。

■Badugi(バドゥーギ)
 ポーカーの中でも特殊なゲームで、通常の役を使いません。プレイヤーは4枚の手札を配られ、それを3回チェンジしながら「全てのカードのスートが異なる」ことを目指していきます。数字は小さい方が強く、最強は「A234」です。ただしスートの多さが優先されるので、「A23」(1枚かぶり)より「TJQK」のほうが強いです。この、スートが4枚揃った状態のことを「バドゥーギ(バド)」と呼びます。
 2-7に比べて役を完成させにくいゲームです。例えば2が欲しいカードだったとして、2-7ではスートが関係ないので4枚存在しますが、Badugiでは1枚しか存在しません。それがゲーム性に大きく影響しています。

終わりに

 ミックスゲームは本当に楽しいです。いろんなゲームが遊びたいなという人の欲求を存分に満たしてくれます。まだまだ日常的に遊べる場所は少ないですが、少なくとも都内に数店舗はあります。興味があるなら行ってみるのも良いでしょう。
 筆者は目下ドローゲームにどハマり中です。いや、めちゃめちゃ面白いんですよ。ホールデムより圧倒的に面白い(言い過ぎ)。上手い人は本当に上手いですが、運さえ良ければ初心者でも大会で勝ち上がれるチャンスは十分にあります。ぜひ挑戦してみてください。

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