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【DAZZLE】観劇レビュー「SHELTER」2(ネタバレ無し)

私の夏は、少し不思議な『避難生活』だった。

勝手にDAZZLEプロモーション、今回は8/24に終了となったイマーシブシアター「SHELTER」の総合感想だ。本作品は終演後も「ネタバレ禁止」となっている為、作中の謎に触れるという事はしない。各プロモーション動画やツイートで解放されている内容にのみ触れていこうと思う。

本作は9人の主人公によるマルチストーリー、マルチエンディングとなっている。多岐にわたる分岐。全てが一発勝負の世界だ。「イマーシブシアター」および「SHELTER」について詳細に記したnoteはこちらをご参照頂きたい。お金を払って観に行って、全く同じエンディングにぶち当たる面白さ。…普通の舞台ならそうだって?そうじゃないかもしれないのがこの「SHELTER」である。

分岐に分岐を重ねた末に毎回結末が決まるのだが、それらの完全制覇は21日に発生したらしい。唯一「ある」と言われていた「レアエンディング」だ。多くのマルチエンディングの中で唯一の「SHELTERの真相」に迫る物だったのだろう。…私はこの日に参加出来ていないが、それでも「出なかったらどうしよう」と言う僅かな不安が払拭された日となり、心なしか嬉しかったのは事実だ。ただそれでも「真相」の全貌がまだ明かされていないと言われている。最後の最後まで真相に迫るべく奔走してくださった謎解き組に敬服する。

時々、苦言を呈する様な公式ツイートもあった。過激な謎解き組や、不正を行う者が居たらしい。…ダンスカンパニーのイマーシブシアターなんだからパフォーマンス見よう、そしてルールを守れ。ふせいをゆるすな。

ここからは、今回結局足を運ばれることの無かった方々にとって、「何が凄かったのか?」という事を伝えていきたいと思う。

1.距離感

先のnoteにも書いたのだが、通常の舞台作品と言うのはステージがあり、客席があって、ステージ上で催される演目を客席から観る、というのがスタイルであると思われる。イマーシブシアターというものは「体験型劇場」「参加型劇場」という表現をされており、客席と舞台という概念が存在していないのだ。

言うなれば、本当に手を伸ばせば届く距離に演者が居るのである。演者から手招きされて後をついて行ったり、持ってたものを何気なく手渡されてしまったり、飲食物を提供されてみたりと、本当に「人と人が触れ合える距離」で何もかもが起こるのだ。

パフォーマンスも、観ている位置によっては「パーソナルスペースとは…?」って思う程に近くまで演者が来ることがある。本当だ。何度も体験した私が言うんだから間違いない。僅かな視線の動きだって見えてしまう。

ただ、この「距離感」というものについてはイマーシブシアター自体の凄さであり、SHELTERの凄さではない。イマーシブシアターそのものが、その演目の「エキストラ出演者」という立場になれる舞台作品なのだと思ってもらえればよいかと思う。

2.分岐

ここからは本当に「SHELTER」の凄いところだ。ここまでの間に何度か「分岐」という言葉を使用したかと思う。DAZZLE主宰の長谷川達也氏によれば、本作は多岐に渡る分岐により物語が変化し、エンディングが変わっていくという仕組みだと言う事だそうだ。

実際に、私自身の体験談をひとつ。
某日、私はとあるキャラクターを追いかけていた。その公演回中ずっと彼の後を追い、パフォーマンスを観て…という事をしていた。「どこで・どのくらいの時間に・どんなパフォーマンスが行われるのか」を把握できるほどに追い回した。

が、後日。
そのキャラクターの全く見たことのないパフォーマンスを目にしたのである。そのパフォーマンスは、その日の分岐が「レアエンディング」に近付いていたことを意味していた。何度もそのキャラクターを追ったのに、初めて観たそのパフォーマンスに愕然としたものである。まだ隠していたのか、と。

逆に、私が最初に見たパフォーマンスはその日を境に行われることは無かった。高確率でビンゴに近付いていたことを意味していた証拠である。本当に「分岐」によって実際に演じるパフォーマンス内容が異なる。つまり、演者は1つのシーンに対して複数のパフォーマンスを記憶しなければならないという事だ。それをやってのけるDAZZLEが何より凄い。

エンディングに関してもそうだ。ほぼ毎回異なるエンディングを見せられた。途中から「レアエンディングはこれだ」と気付いた人達によって特定のエンディングに固定されたらしいが、それでも前半は毎回違うエンディングだった。エンディングが異なることにより若干パフォーマンス内容がこちらも異なる。そしてその内容も全て把握しなければならない。なんてことするんだこの人達。

そして参加する私達にとって、マルチエンディングは大いに頭を悩ませる。違うエンディングであることで、連日行ったとして「昨日はこうだった。今日はこうだった。明日はどうなるんだ」となってしまう。正解が見つけられないまま毎日を過ごす羽目になるのである。こんなにもやもやする話が過去にあっただろうか?そりゃぁ「話の内容」の影響でもやもやすることはあるだろうが、「エンディングが毎回違う」事でもやもやしたという経験を、これをお読みの皆さんが体験されたことがあるかどうかを問いたい次第である。少なくとも私は今作が初体験だ…。

ここまで書いてみて「なんとなくそういうものか」という風に思って頂けたかと思う。ここで実際の参加者視点で撮影された動画をご覧頂きたい。百聞は一見に如かず。参加者のインタビュー付である。SHELTERの中がどうやって動いていたのか、ざっくりとでもご理解頂けるかと思う。

今回は既に終演となってしまった。しかしイマーシブシアターの凄いところは「建物があれば再演できる」というところにある。終わったばかりという事もあり再演情報等は一切ないのだが、もし本noteにてご興味を持っていただけた方は下記無料マガジンをフォローしておいて頂けると、再演情報が発表された時には情報を上げていきたいと思っている。

それ以外にもダンスカンパニーDAZZLEの作品やその他舞台について色々書いているので、DAZZLE自体にご興味を持っていただけた際には導入編にでもしてもらえたら幸いだ。

これにて、『避難生活』を終了する。

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