見出し画像

クラシックが好きなのではなくモーツァルトだけが好きだと言うことについて。

第59回に書きましたが宮沢賢治は生前出版した唯一の童話集「注文の多い料理店」の序文にこのようなことを書いてます。

これらの物語は自分が書いたのではなく林や野原を散歩した時に林や月の光が語りかけてくれたことを自分は書き写しただけですから自分にもワケの分からないお話なのです。

【きっかけ屋☆映画・音楽・本ときどき猫も 第62回】

つまり林や月や自然に賢治はチャネルして得た物語を自動筆記したということを告白しているのです。

ということで前回は日本にチャネラー・ブームを巻き起こしたダリル・アンカ(バシャール)初来日講演の話に寄り道してしまったワケです。

その時はチャネラーという存在が今ひとつしっくりこなかったのですが、ある時、この人はチャネラーだと思わせる人に出会ってしまいました。

若い頃からジャズやロックばかりを聴いてクラシックを素通りしていたのですが、ひょんなきっかけからクラシックを聞くことになったのです。

そのあたりの経緯を昨年発売した電子書籍『きっかけ屋 アナーキー伝:昭和♡平成・企画屋家業』にはこう書きました。


驚天動地とはこのことだ ~モーツァルトとの出会い~

山下洋輔さんのライブで「ボレロ」をたびたび聞き『センチメンタル』にも収録したので、洋輔さんのボレロと正調「ボレロ」を聞きくらべてみたくなりソニー時代にクラシックを担当していた同期の横山樹郎さんに相談した。

「樹郎さん教えてちょうだい」
「何よ、あ~た久しぶりね、電話なんかしてきて」
「極めつけの『ボレロ』を推薦してくれない?」
「誰の演奏で聞いてもそれほど変わらないのよ『ボレロ』は」
「そんなこと言わずに。ポリドールの社販で買えるCDがいいんだけど」
「作曲家がフランス人だから同国人の演奏がいいかな。シャルル・デュトワ指揮にしましょ」
「もう一枚なにか見繕ってよ。社販一枚だけ頼むのは気が引けるから」
「それじゃあ同じラヴェルのピアノ曲。デュトワの元の女房マルタ・アルゲリッチの『夜のガスパール』」

ポリドールから2枚のCDが届いた。シャルル・デュトワ指揮、モントリオール交響楽団の「ラベル」。面白くない。中学時代に音楽の授業で聞いた時とまったく同じ印象でただただ退屈。が、しかし、アルゲリッチの演奏にはぶっ飛んだ。世の中にこんなに上手いピアニストがいる! しかも美人! さっそくもう一人のソニー時代の同期・境田正俊君に電話した。

「まあちゃん。クラシックが好きになりそうなんだけど……」
「あ、そ~、それで」
「アルゲリッチにカウンター・パンチを食らっちゃってさ」
「だから~」
「クラシックのオススメCDを教えてもらいたいんだけどね」
「モーツァルトを聞きなさい」
「え?」
「モーツァルトのピアノ・ソナタとピアノ協奏曲の20番以降を聞きなさい。君の人生は変わるから」
「ほんとか? 音楽で人生が変わるか? 演奏者は誰がおすすめ?」
「マレイ・ペライアが指揮振りしている『モーツァルト・ピアノ協奏曲全集』」
「全集は高いでしょ」
「社販で買ってあげるよ」
「いい響きだね~社販。ピアノ・ソナタは誰?」
「グレン・グールドの『モーツァルト・ピアノ・ソナタ全集』」
「これも全集?」
「社販で買ってあげるから」
「わかった」

一週間ほどして2組の全集が届いた。

ペライアの演奏するモーツァルトのピアノ協奏曲の美しさに涙が出た。これほどよどみなく泉のように溢れでる音楽が世の中にあったなんて! モーツァルトは天才だ! 片やグレン・グールド。美しいメロディーが親しみやすい。子供のころにいやいや弾かされて耳覚えのある曲も何曲かある。けれどグールドの演奏はどこか変。
モーツァルトに魅了されたぼくは古今東西の演奏家でピアノ・ソナタを聞き比ベ、一年ほどたってから久しぶりにグールドのモーツァルトを聞いた。

凄い! こんなに面白いモーツァルトはない。甘味過剰で砂糖菓子になりがちな美しいメロディーをグールドはとてもスリリングに弾く。モーツァルトが聞いたら下品な笑いを声をあげてよろこぶこと間違いない。ぼくは一気にグレン・グールドにのめりこんだ。

それから約20年間クラシックに、というか厳密にはモーツァルトとモーツァルト以前の音楽を聞き漁った。

以上、『きっかけ屋 アナーキー伝:昭和♡平成・企画屋家業』より。

最後までお読み頂き有難うございました。。

次回もお寄り頂ければ嬉しいです。

連載はここから始まりました。


電子書籍を販売しています。
立ち読み頂けます

Kindle Unlimitedでお読み頂けます👇


2002年に書き始めたブログ「万歩計日和」です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?