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-映画紹介-『Mank マンク』 メディア王の愛人の秘部を巡る物語に仕上げたアル中の脚本家は・・・。

《乱れ撃ちシネnote vol.108》

『Mank マンク』 デヴィッド・フィンチャー監督 2020年公開  アメリカ

【Introduction】
リストアップしたNetflix定額見放題作品『Mank マンク』を観る。
デヴィッド・フィンチャーはかなり好きな監督だ。

ぼくの映画日誌にメモしてあるフィンチャーの作品がこれです。

21.06.04(03)☆☆☆『ゾディアック』デビッド・フィンチャー監督 2007年アメリカ  

21.06.03(02)☆☆☆☆『ゴーン・ガール』デビッド・フィンチャー監督 2014年アメリカ  

22.05.08(18)☆☆☆★『ベンジャミン・バトンの数奇な人生』 デビッドフィンチャー監督 2008年アメリカ

22.05.18(45)☆☆★『ゲーム』 デビッド・フィンチャー監督 1997年アメリカ

映画日誌を書く以前に観ているフィンチャーの作品がこれです。

・『ドラゴン・タトゥーの女』(2011)

・『ソーシャル・ネットワーク』(2010)

・『パニック・ルーム』(2002)

・『ファイト・クラブ』(1999)

・『セブン』(1995)

・『エイリアン3』(1992)

ウィキペディアで確認したところフィンチャーの全作品を観ていることが分かった。
この2作は特におすすめです。

『Mank マンク』『市民ケーン』の制作秘話らしいということしか知らずにリストアップしていた。

本作はオーソン・ウエルズと共同で『市民ケーン』の脚本を仕上げた脚本家ハーマン・ジェイコブ・マンキーウィッツと黄金期のハリウッドを描いた作品だった。

『市民ケーン』は新聞王ランドルフ・ハーストをモデルにした作品だ。

『市民ケーン』は映画史上もっとも偉大な映画だが公開当時は巨大メディアを牛耳り政治家にも通じるハーストの圧倒的な圧力で妨害されたことでも有名だ。
本作は1940年に『市民ケーン』の脚本を担当したアル中の脚本家マンキーウィッツ執筆当時の話と1930年代のハリウッドの回想シーンのカットバックで構成されている。

【Story】
〜オープニング・クレジット〜
1940年。
24歳の奇才オーソン・ウェルズは映画会社RKOに招かれてハリウッドへ。オーソン・ウェルズに映画製作権が全て与えられ誰と何を作るかも自由だった。

1940年。
牧場の宿泊施設にハーマン・ジェイコブ・マンキーウィッツ(ゲイリー・オールドマン)が到着する。
ハーマンは数週間前に自動車事故に遭い足を大怪我していたがオーソン・ウエルズ(トム・パーク)に脚本の執筆を依頼され、牧場で缶詰になり60日間で脚本を仕上げねばならなかった。
ハーマンの口述をリタ(リリー・コリンズ)が筆記します。
リタは初めて脚本を読んだときにこの物語にはモデルがいることを見抜く程頭のいいイギリス女性です。

1930年(回想)。
ハーマンはMGMの共同創設者のルイス・B・メイヤー(アーリス・ハワード)の撮影現場で女優マリオン・デイヴィス(アマンダ・セイフライド)と気が合いウイリアム・ランドルフ・ハースト(チャールズ・ダンス)に紹介される。
ハーストはウィットに富み辛辣なハーマンのユーモアのセンスを気に入る。
その後ハーマンは実弟のジョセフ(トム・ベルフリー)をメイヤーに紹介し、ジョセフはMGMスタジオに雇われることになった。

1940年。
シナリオ執筆中のハーマンにジョセフから電話がありオーソン・ウェルズがハーストに喧嘩を売るための映画に兄貴が手を貸していることを心配する。

1933年(回想)
ハーストが開催したメイヤーの誕生会にハーマンも参加した。
メイヤーは心からハーストに感謝していたが酔ったハーマンは余計なことを口にしてしまう。
パーティでの会話はヒトラーや社会主義者の州知事候補シンクレアの話題になる。
シンクレアはハーストが豪邸を建てマリオンを愛人として囲っていると書いたために敵視されていたのだ。

1940年。
ハーマンが200ページの脚本を書き上げた。
リタは傑作だと絶賛する。
当初、映画のクレジットにハーマンの名前は出さない契約だったがそれは見直した方が良いと助言される。
ハーマンの弟が牧場までハーマンに会いに来てハーストに対決を挑んでも潰されるぞと警告するが、この脚本は兄貴の最高傑作だと称賛する。
ある日牧場にハーストの愛人マリオンが尋ねて来てハーマンの脚本は事実に即していると褒めつつもハーストのために映画化しないように訴える。
ハーマンは映画化が実現したら許してほしいとマリオンに答える。

オーソンもハーマンの脚本に満足する。
ハーマンはこの脚本は自分一人で書いたも同然なので脚本のクレジットを要求し、オーソンは怒り狂いながらも共同脚本クレジットを認めた。

1942年。
アカデミー賞でハーマンとオーソンは最優秀脚本賞を受賞する。
しかし2人とも授賞式を欠席していた。
それぞれ別々にコメントを発表したがハーマンはオーソンと共同クレジットだったことへの嫌味を口にした。

【Trivia & Topics】
*『市民ケーン』。

劇団を主宰してオフ・ブロードウェイで頭角を現した若き天才オーソン・ウエルズがハリウッドに招かれて映画を作ることになった。
まったく映画に関しては素人の24歳のオーソン・ウエルズの初監督作品が『市民ケーン』。一人の新聞記者が新聞王ケーンの死後多くの関係者に取材してケーンの生涯を解き明かしていく物語です。

モデルにされたランドルフ・ハーストの猛烈な圧力で上映妨害運動が起こり、第14回アカデミー賞で9部門ノミネートされたが脚本賞しか受賞出来なかったいわくつきの作品です。

英国映画協会が10年ごとに選出するオールタイム・ベストテンでは5回連続(50年間)第一位に選ばれ、映画芸術の遺産を称えるアメリカン・フイルム・インスティチュート選出の「アメリカ映画ベスト100」でも第一位にランキングされている。

*ルイス・B・メイヤー。
現在のベラルーシ共和国のユダヤ系の家に生まれ、幼い頃に家族とともにニューヨークにわたる。その後カナダに定住しスクラップ業者の親のしごとを手伝い、1904年に単身ボストンに移りスクラップ業者を開業するとともに朽ち果てた小劇場を買収し1907年に大改修して劇場として経営を始める。
いくつもの劇場を買収して映画の配給権獲得のビジネスでも大成功を収めたメイヤーは映画製作に乗り出す。
1924年にマーカス・ロウ(M)、サミュエル・ゴールドウィン(G)とともにメイヤー(M)はMGMスタジオを創設し映画製作部門の最高責任者に任命され実質的にMGMの主導権を握った。
メイヤー絶頂期のハリウッドが本作でも再三回想シーンで語られています。

1929年にウォール街が大暴落してアメリカは不況の嵐に襲われた。
メイヤーがいかに経営手腕に長けていたかはそんな不況に苦しむ全従業員の前で今を乗り切るためにみんなの給料を半額にさせてくれとお願いする1934年の演説シーンでも見られます。

*お気に入りの2人の女優。
最近のお気に入り女優のアマンダ・セイフライドとリリー・コリンズが共演しているのは個人的には幸せでした。

◯アマンダ・セイフライド。
現在37歳のアメリカ人。
ハーストの愛人マリオン・デイヴィスを演じています。
マリオン・デイビスを売り出そうとハーストは巨額な資金を投入して映画を制作しますがヒットしませんでした。
デイビスはコメディエンヌとして恵まれた才能を持っていたのですがハーストは彼女を銀幕の大スターに育てようとして失敗したのです。

アマンダ・セイフライドの出演作で《乱れ撃ちシネnote》でとりあげたのはこの2作です。
《乱れ撃ちシネnote vol.76》☆☆☆☆☆『あなたの旅立ち、綴ります』 マーク・ペリントン監督 2019年アメリカ

《乱れ撃ちシネnote vol.77》☆☆☆☆☆『ジュリエットからの手紙』 ゲイリー・ウイニック監督 2010年アメリカ

将来有望な女優なので今から楽しみです

◯リリー・コリンズ。
個性的美人のアマンダ・セイフライドとは違い、画面で彼女を初めて観た時にはエリザベス・テイラー(注参照)の再来か?と思わせた正統的美少女がリリー・コリンズです。
現在34歳のイギリス人。
本作では口述筆記者のリタを演じています。
お父上は数々のヒットをとばした著名なミュージシャンのフィル・コリンズです。

(注)『若草物語』(1949)で眠るときに「鼻が高くなりますように」と洗濯ばさみで鼻をはさんで寝るかわゆいエイミーちゃんを演じた頃のテイラーさん(17歳)ですのでお間違いのないように。

23.05.08 (20)☆☆☆☆☆『ハッピーエンドが書けるまで』ジョシュ・ブーン監督 2012年アメリカ AbemaTV
本作でのコリンズは男はセックスの相手だとしか考えず恋なんて幻想なのよと奥手の弟をけしかける突っ張った姉貴の役ですが彼女の眩い美しさには見とれてしまいます。

*構想30年。
本作はデヴィッド・フィンチャー監督の父親でライフ誌の記者だったジャック・フィンチャーの遺稿をデヴィッド・フィンチャーが2020年にNetflixとの4年間独占契約した時の第一弾として映画化した作品です。アカデミー賞ノミネート作品になりました。
父親がこの物語を構想してから30年がたっていました。

*『市民ケーン』へのオマージュ的撮影。
オーソン・ウエルズのデビュー作『市民ケーン』には多くの監督たちがリスペクトしています。
なにしろ映画史上最高の映画なのですから。
どの撮影方法が凄いかということを述べると長くなるので割愛します。
映画を愛している人であれば誰もが唖然とする作品です。
ぜひ『市民ケーン』をご覧下さい。

*オーソン・ウェルズとの揉め事。
マンキーウィッツとオーソン・ウェルズは最後までどちらがシナリオ・ライターとしてクレジットされるべきかで争いました。

*バラのつぼみ。
映画的にはケーンが子どもの頃に遊んでいた雪ぞりに書かれていた「ローズバッド(バラのつぼみ)」をケーンが孤独死する間際に思い出してフラッシュバックされたのだという解釈でした。
っが、
「ローズバッド(バラのつぼみ)」とは本作のモデルとなったランドルフ・ハーストの愛人マリオン・デイヴィスの美しい秘部のことです。
オーソン・ウエルズが「ローズバッド(バラのつぼみ)」をめぐる物語にしたことがハーストの逆鱗に触れたのです。

【5 star rating】
☆☆☆☆

(☆印の意味)
☆☆☆☆☆:超お勧めです。
☆☆☆☆:お勧めです。
☆☆☆:楽しめます。
☆☆:駄目でした。
☆:途中下車しました。

【reputation】
Filmarks:☆☆☆★(3.7)

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こうなるとやっぱり次回は『市民ケーン』かな。


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