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会いたいのさ!

散歩をしていたら 見たことのない知っている街

向こうから響く 電車の音

なめらかに囁く 川の水面

誰もいない道 歩くぼくと

一軒家の外に金魚の水槽

子どものぼくは思う

大人になるのが早すぎた きっともっと

家屋の隙間の赤い空に 君を想う

一人でいるのは 一緒にいたいから

街を歩くのは 君に会うのとよく似ている

懐かしい匂いに包まれて両手で風をきるとやがて

世界が変わったみたいに 大通り


散歩をしていたら 海が見えてきた

水平線を追いかけて 水平線を追いかけて

踊るみたいにぼくは泳いだ

まるで魚になって さらさらと

鳥になって びゅんびゅんと

麦わら帽子もかばんも洋服もスニーカーもそのまま

ラムネを二つ買ったあと

ぽつねんと浜辺に立っている だけれども

踊るみたいにぼくは泳いだ

魚になって さらさらと

鳥になって びゅんびゅんと

不器用に仕舞われた靴下と 留守番スニーカー

熱過ぎた砂浜 寄せる波との温度差

耳キーンってなる

午後の渚 穏やかな冷たさ

大胆に笑う入道雲 波はしっとりと話をする

寂しいのは 嬉しいのとおんなじだ

空になった瓶に小さな手紙を詰めて

ラブレターを送るわけじゃなく

伝えたい言葉が海に流されてゆく

空になった瓶にこの海を少し閉じ込めて

ぼくの家まで大切に持ち帰る

拾った貝殻にはちょっぴり可愛い名前をつけて

潮騒がぼくを連れてゆく 白昼夢の中へ落ちてゆく

海を見るのは 君に会うのとよく似ている

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