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水の空の物語 第4章 第16話

「水蒸気の粒はすごく小さいから、光っていても見えないの。でも、絶対光ってるはずなの」

「……だとしたら、雲は光であふれているね。見えたら、どんなにいいだろうね」

「青い空がね、水蒸気の粒で輝いて、海みたいにまぶしい空になるね」

 きっと、夏澄くんみたいに……。

 風花はずっと、空を見つめていた。夏澄も同じだった。

 光を秘めているはずの雲が、風に乗っていく。薄く薄く流れていく。 やがて、オレンジ色の夕日が差してきた。

「ねえ、夏澄くん。巻層雲の次の日は、よく雨が降るんだよ」

「そうだよね。明日は雨だといいな」

「雨は好き?」

「もちろんっ。雨は俺たちにとっては浄らかなものだよ。もし、雨が降ったら、また、風花に逢いに来るよ」

 夏澄の瞳がきらめく。

 ……逢いに来るよ。

 風花は心の中で、彼の言葉を何度も繰り返す。 目を細め、ひざに顔を埋めた。



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