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キャラクタービジネス3.0 3つの階層で予見する2020年代の展望

’80〜’90年代+2000年代は、テレビ、出版、ゲームのプラットフォーム発のキャラクターが大勢を占めていた30年でした。

しかし、2010年代、SNSとソシャゲ、YouTube発のキャラクターが続出するようになり、勢力図は大きく変わりました。

いよいよ始まった2020年代、VR、5Gなど、キャラクターと相性のいいテクノロジーが世の中で大きな存在感を示していくと予想されます。

また、感染症の広がりは、生身の人間ではないキャラクターの価値を高める、という予想もあります。


キャラクタービジネス(キャラビズ)がどう変わっていくか、
そして、どのようなタイプが勝者となるのか、
これまでの流れを踏まえつつ、見通していきたいと思います。

■3つの階層で考えるキャラビズ

まず、考察・分析のベースとなる、3つの階層を紹介します。

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上から
コンテンツ
パッケージ
流通

です。


多くのキャラビズ分析では、コンテンツに焦点を当てています。

しかし、参入障壁が極めて低いキャラビズにおいては、
どのような流通において、
どのようなパッケージで展開するか

が非常に重要です。

もちろん、卓越したクリエイティブ能力、デザイン、優れた企画力などの要素も大切です。

しかし、コンテンツを軸にしたキャラビズ分析は再現性は乏しく、結果論に陥りがちです。

したがって、本稿では下の2階層「パッケージ」「流通」に焦点を当てて進めていきます。

■【キャラビズ1.0】 ’80〜’90年代+’00年代は テレビ・出版・ゲームの30年

80〜90年代、さらに00年代は、テレビ、出版、ゲームのプラットフォーム発のキャラクターが多くを占めていました。

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地上波、書店流通、ゲームプラットフォーム、という「チャネル」を寡占し、
参入障壁を築いたうえで、R&Dを繰り返せたことが最大の強みでした。

キャラクターのビジュアルだけでなく、
物語や世界観をセットで展開できた点も、繁栄を後押ししたと思われます。

「映像の世紀」の終盤とその名残が続く30年間、時代の王者・テレビと相性のいい流通・パッケージが大きな存在感を示しました。

例)
テレビ:アンパンマン
出版:ドラえもん、キン肉マン、ドラゴンボール、ONE PIECE
ゲームプラットフォーム:マリオ、ポケモン

■サンリオは小売店流通で独自性を作り上げた

同時期、独自性を保っていたのが、サンリオです。

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サンリオは小売店流通でキャラクターをR&Dしていく仕組みを作りました。

グッズや雑貨というパッケージでの展開は、
ほぼビジュアルのみの勝負となります。

これは弱みになる場合もありますが、
キャラビズに限定して考えると、大きな強みでもあるのです。


メディア、ゲームのプラットフォーム発のキャラクターに付随する「物語」は、時にキャラビズの足かせとなります。

「作品のファンだけど、キャラクターに消費するつもりはない人」を選別できないからです。
(たとえば、私は『SLAM DUNK』が大好きですが、SLAM DUNKグッズは別に欲しくありません)

結果、作品はヒットしたけど、グッズ展開してみたら、あまり売れなかった、
というケースがかなりの割合で発生します。

キャラビズのR&Dとしては欠点とも言えます。


それに対し、
初めからグッズ上のビジュアルのみでコンテンツを展開していく場合、
購入者はかなりの割合で、そのキャラクターを気に入っています。
キャラビズR&Dとしては非常に効率的なのです。

■ベネッセは通信添削流通でキャラを浸透

この時期のもうひとつの特殊例がベネッセです。(この項は2020年9月に追記しました)

通信添削という「定期的に届くもの」で、子どもたちに「しまじろう」というキャラクターを刷り込むことに成功しました。

ベネッセにどこまでの狙いがあったのかは定かではありませんが、自社が独占する「メディア」でキャラの大量露出をはかり、浸透させる、というのはキャラクタービジネスとして大正解です。

その流通網においては、ライバルとなるキャラがほぼ存在せず、自社ですべてコントロールできるのですから、仮に「しまじろう」でない他のキャラだったとしても成功していたと考えられます。


テレビ・出版・ゲームのプラットフォームが席巻した30年間において、サンリオとベネッセは特殊です。

その特殊性ゆえに、キャラビズにおける「流通」「パッケージ」の重要性を理解するには最適なので紹介させてもらいました。

それではいよいよ、キャラビズの勢力図が書き換わり始める2010年代に移ります。

■【キャラビズ2.0】 2010年代:SNS、ソシャゲ、YouTubeが勢力図を塗り替える

30年ほど続いたキャラビズにおける
「テレビと、出版、ゲームのプラットフォームが最強」の勢力図を変えたのは、2010年代を席巻した
SNSとソシャゲ、YouTubeです。

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テレビ、出版(漫画)も、まだある程度、メディアパワーを維持していたので、
「SNS、ソシャゲ、YouTubeでヒット
→テレビが取り上げ、より話題となる。
→出版(漫画)化」
が代表的な流れでもありました。

例)
コウペンちゃん、うさまる、モンスト、キズナアイ

■【キャラビズ3.0】 2020年代:テクノロジーが牽引していく

2020年代もしばらくは2010年代の傾向が続くはずです。

テレビ、出版のメディアパワーはさらに減退していくので、
SNS、ソシャゲ、YouTubeの存在感は、より増してくると考えられます。

さらに、Netflixやamazonプライムといったサブスクリプション型の動画配信サービスからも新たなキャラクターが輩出されてくるはずです。


一方で、ブロックチェーン、AI、5G、VR・AR、フィンテックなど、
新たなテクノロジーの勃興に合わせたキャラクターR&Dの座組も生まれてくるでしょう。

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SNS、ソシャゲ、YouTubeは、それらの座組とも親和性が高いので、
2020年代も引き続き、その3つをどう活用するかは非常に重要と考えられます。

■2020年代のキャラビズの勝者を3タイプに分類する

上記のような状況下、80、90年代はもちろん、2010年代にも見られなかった、まったく新しいタイプの会社(もしくは個人やチーム)が、キャラビズ界で存在感を示していくと予想されます。

それはどのようなタイプなのか、
3つに分けて予想してみます。

(ディズニーのような超巨大資本の会社、
ポケモン、ドラえもん、キティのように、既に国内外で膨大なファン層を抱えているキャラの主たる権利を持つ会社
は引き続き存在感を示していくと思いますが、別格なので省きます)

1.最新テクノロジーをベースに生み出される新サービスを巧みに使いこなして、コンテンツを展開していくタイプ

2.卓越したテクノロジー構築力を持ちながら、クリエイティブ能力を兼ね備えたタイプ

そして、

3.ウェブ・テクノロジーの外側に、ニッチながら強固な参入障壁を築き、
その中で独自のコンテンツを磨き上げていくタイプ

以上、3タイプです。


1番めのタイプは、
2010年代にSNSやYouTube上で漫画やアニメを展開して話題を集めたタイプの進化形、というイメージでしょうか。

2番めのタイプは、
ブロックチェーン技術を使ったキャラクター育成ゲーム「CryptoKitties(クリプトキティーズ)」を開発したダッパー・ラボ(Dapper Labs)
が好例かもしれません。


3番めに挙げたタイプについて、以下、少し詳しく解説していきます。

外側で「参入障壁のある流通」を寡占する

情報流通の寡占が崩れ、「だれでもメディア」な時代、
SNSやYouTubeなどの外側に、
「参入障壁のあるメディア+コンテンツ流通」
をいかに構築するか、
がキャラビズに限らず、肝になっていると思います。

その重要性は、2020年代、ますます増していくはずです。

各自が持つ強みやネットワークをフル活用できる場を選定し、
SNSやYouTubeなどを活用しつつ、
「規模は小さくとも、強いニーズがあるマーケット」を
自分たちの寡占状態に
持っていくことです。


その場は、「SNS、YouTube等で強いプレーヤー」や「テクノロジー企業」は目を向けにくく、かつ、市場が大きくないので後発で参入する気を起こさせず、
参入障壁を保持できます。

その場で強い立場を築ければ、テクノロジー企業などが「組みたい」と思う存在・コンテンツになりえます。


「小さい市場ながらも、自身が圧倒的な力を発揮できる場」を構築し、
参入障壁を保持しつつ、
そこで育成したコンテンツを、
適切なアライアンス相手と組んで、大きな市場へと展開していく
ことが可能となるのです。


最新テクノロジーをベースに生み出される新サービスを主戦場にキャラを育成する」のは
参入障壁がほぼない分、超レッドオーシャンです。

「卓越したテクノロジー構築力を持ちながら、クリエイティブ能力を兼ね備えてキャラを育成していく」のは
相当な資金力と優れたチーム組成が必要で、かつ、膨大な手間と時間がかかります。キャラビズを主軸にビジネスモデルを組み立てるのは無理があります。

第三の手法が、一見、遠回りに見えて、実はかなり着実な方法なのではないかと考えています。

ただし、その路線においても、SNSやYouTubeを最大限に活用すること、最先端のテクノロジーに絶えず目を配り、いつでも組める状態にしておくことは必須です。
アナログな世界に閉じこもっているのとは全く違います。


波乱の幕開けとなった2020年、
事業のピボットが効きやすいキャラクタービジネスのパワーを
改めて強く実感しています。

2010年代とは比べものにならないほど
テクノロジーの進化が加速していく2020年代、
キャラクタービジネスも大きな転換期を迎えるはずです。

そのメインステージに立ち続けることは、ますます過酷になっていくと予想されますが、挑む価値は十分にあると考えています。


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