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編集者の仕事は「コンテンツの価値を最大化」:明治大学の講義で話したこと

今年も明治大学で講義をしてきました。

アンケートで9割が高評価、「とても良かった」が過半数、と嬉しい反応でした。
開始前は半数以下だった「編集者の仕事への興味」が約8割まで上がったのも嬉しかったです。

「編集者」の仕事内容はもちろん、求められる能力、その定義さえも変わっていくけれど、ますます面白い仕事になっていく、
ということを少しは伝えられたように感じられました。

一口に「編集者」といっても、その仕事は多岐に渡り、
かつ、世の中の変化と共に、大きく変貌している、というところを中心に話をしてみました。

せっかくなので、自分自身の振り返りも兼ねて、
当日の内容をざっくりと記してみたいと思います。

>>> こちらの記事が想定していたよりも多くの方に読んでもらえたため、「出版コンテンツの価値を最大化」について、より考察を深めた記事を書きました。よろしければ、
「コンテンツの価値を最大化」視点から「出版社ビジネスモデルの変遷」を図解してみる も読んでいただけると幸いです。

■これまでの編集者の役割と、これからの編集者の役割

これまでの編集者の役割と、これからの編集者の役割が、どれほど変わっていくのか、図にしたのがこちらです。
(2020/10/01 図を更新しました)

スライド1

紙の本にコンテンツを落とし込むことで十分な収益をあげられていた時代は、
読者に目を向けながら、クリエイターと共に、いかにコンテンツの質を高めていくか、のみを考えていれば十分でした。

(ウェブメディアや電子書籍が出てきても、基本は大きく変わりません)

スライド2

(2020/10/01 図を更新しました)

しかし、コンテンツを紙やウェブで展開すればOK、な時代は終わりました。

イベントや店舗、等々、どこで展開すれば最も効果的なのか、を考えながらコンテンツを磨き上げていく能力が大事になってきます。

これまでのように「プロモーション目的」だけではないので、「どーんとお金かけて、どーんと盛り上がる」だけではない判断基準も大事になってきます。

最小限のコスト・労力で、最もレバレッジが効くのは、どの手段か?
といった視点も必要になってきます。

■編集者の仕事は「コンテンツの価値を最大化」すること

編集者の仕事って何?
本を作ること? じゃあウェブは?
いい作品を作るサポート? 収益は考えなくていいの?

…等々、考えれば考えるほど、編集者の仕事の定義は難しいと感じていました。

実際、講義開始時にとったアンケートでは、
「作家に原稿の催促をする仕事」「文章に間違いがないかチェックする仕事」といったイメージが並んでいました。

最近は、編集者の仕事は「コンテンツの価値を最大化」すること、と説明するようになり、自分の中ですごくすっきりしました。

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価値を最大化するためには、より良い作品になるよう、作家をサポートすることは当然、必要です。

さらには、どのように展開すれば収益がより大きくなるのかも考える必要があります。

明治大学の講義で使ったスライドとは別ですが、下記の図の右にあるように、「これまでにない新たな収益源」を作ることを主眼に置きながら、コンテンツを磨き上げていくことができる人材が求められます。

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■編集者の仕事は無くならないけれど、その雇用形態は大きく変わっていく

「10年後、編集者の仕事はどんなふうに変わっていると思いますか?」
という質問をもらいました。

それに対して私は以下のように答えました。

「出版社に属する編集者が、クリエイターを選別する」形が主流の時代は間もなく終わり、
「クリエイターが、自分のスタイルに合わせて編集者を雇う」形が目立ってくる。


5年後かもしれないし、20年後かもしれませんが、この変化は確実に訪れます。

アメリカでは一般的な出版エージェントを思い浮かべるかもしれませんが、その形態すらも、時代遅れになるでしょう。
(その理由については、またいつかしっかりまとめたいと思います)

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その将来において、編集者に必要な資質はやはり、「コンテンツの価値を最大化できる」ということになってくると思います。


ざざっと概要をさらっただけですが、こんな感じのことを学生さんの前で話してきました。
(さらには、ここから「あなたというコンテンツの価値を最大化する」という切り口で、就活にも話を広げたのですが、そのあたりは、また機会があれば別途noteにまとめたいと思っています)


ここのところ毎年、明治大学から依頼してもらえる一年に一度の講義が、「自分自身が、この一年間、どんなことに取り組み、どんなふうに進歩できたか」を振り返る、ちょうどいい機会になっています。

今年一年は、次から次へと大事なプロジェクトが続く慌ただしい日々でしたが、
着実に望む方向に進めていて、能力も高められていると実感でき、ひとまずホッとしました。


上に記した「編集者の仕事の将来像」において、
自分はどのようにコンテンツと関わっていたいか、
そのビジョンに向けて、今、そして、これから、どう動いていくべきか、
年末年始にでも改めてしっかり考えたいと思っています。

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