ももいろクローバーZは最強のライブアイドルだ

 私が初めてももクロのライブに行ったのは、そして人生で初めて音楽のライブをみに行ったのは、2013年春の5TH DIMENSIONリリースツアーの、大阪城ホール公演だった。あの日、ももクロへの熱が冷めかけていた私に薪をくべて火をつけたのも彼女たちのライブだった。音源だけでは知り得ない少女たちのリアルがそこにはあって、立見で小さくしか見えない彼女たちの大きな動きと表現に鳥肌が立った。そこで彼女たちに惚れ直したことは今でも私がももクロを語る上で大事な一幕だ。

 思えば、あれから沢山のことがあった。私個人のことに関しても、ももクロのメンバーや活動に関しても。ももクロはずっと走り続けて、紅白出場、国立競技場でのライブという2つの大きな夢を若くして叶えた。そこから時を経てメンバーの卒業があり、グループは4人体制になった。

 私は高校を卒業して、就職して、その会社を1年半で辞めた。別の職場に2年勤めて、今はまた別の仕事をしている。その間に実家から出て上京だってした。色々な人のライブを観に行ったし、色々な音楽を聴いた。ももクロは必ずしも毎日私の生活のなかにいた訳ではないけど、いつも頼れる存在で、会いに行くと必ず熱と元気を分けてくれた。

 今までに行ったライブはどのライブも夢みたいな時間で、そのことについてはここでは到底語り尽くせそうもない。だから昨夜のももクリの参戦レポートのような何かを、ここに置いておこうと思う。

 ももクロのライブではお決まりの、オープニング映像からショーは幕を開けた。いつも通りの豪華過ぎる待ち時間からもう、モノノフたちの高揚は始まっている。今回のライブのテーマは、昔のエンターテイメントと今のエンターテイメントの融合。昭和の時代の歌謡曲・ショーというカルチャーを、平成生まれの彼女たちが、彼女たちなりの方法で次の世代に伝える。あーりん世代の私の解釈としてはこれで合っているだろうが、モノノフにはその親世代も多くいることを考えると、プロデューサーの絶妙な策略が窺える。

 ライブは、人間には出し得ないような音を口から出す、ヒューマンビートボックスの演奏から始まった。今年のももクリも何が起こるか未知数でワクワクが止まらない。

 そこからメンバーが現れて披露したのは、新旧では旧にあたる楽曲、'' オレンジノート ''。場内からは喜びの歓声が上がる。このライブの趣旨は、故きを温ねて新しきを創るということ。それは時代的な枠組みに限ったことではなく、彼女たちももクロという分野においてもそういったライブなのではないか。そう考えている隙に時間は進み、最新アルバムの収録曲である' 'ロードショー ''が始まった。「これから皆様はこの Show の一部になります」という歌詞に踊らされるように、私たちは彼女たちのショーに囚われていった。そこからまた聴き慣れた楽曲である、'' 猛烈~ ''に戻る。新旧織り交ぜたセットリスト、というとももクロのライブに於いて特筆すべきではないように思えるが、このライブはそれにも大きな意味があったのかもしれない。

 そして5曲目に歌った、'' GOUUN ''も印象的だった。国立競技場で聴いた曲という思い入れもあるのだが、あの曲はなかなか強烈な楽曲だ。アイドルの歌う仏教や輪廻転生。楽曲完成当時それに驚いたのは、リスナーだけではなく、ももクロのメンバーも同じだっただろう。しかしそれが、無宗教であり多宗教にも似た仏教徒が大半を占める、という日本文化の中で受け容れられたのは、彼女たちの表現とその力による。アイドルなのに死生観や人生観を多くの曲で歌ってのける。いや、彼女たちはアイドルだからこそ、ももクロであるからこそ何にでも挑戦していける。そんな強さの一端を担ったであろうこの曲が、綺麗過ぎるメインステージのミラーボールと華美な照明に彩られる。寒空の下で光るどんなイルミネーションにも、大袈裟過ぎるほどキラキラ輝くステージ演出にも負けない、ももクロの4人の美しさが堪らない。ライブはまだ始まったばかりだった。

 そしてここで本日初のMC。ももクロのライブの必須項目でもあるメンバーの自己紹介では、照明演出と共にモノノフたちの持つペンライトもやはり、4色それぞれの色で会場を染めた。ももクロはメンバーカラーがアイデンティティでもある。だが最近の雑誌の取材やライブでの衣装は、黒や白を基調としたものや、それぞれの担当色を抑えめに入れたものも多かった。それは彼女たちがシックに着こなせるようになったからだったり、色を強調しなくても、女性・女子・ももクロとして胸を張れるほどに成長したからだったりするのだろう。しかし今回は衣装もステージ演出も4色を強調したものが多かった。それによりももクロを推してきた年月とその尊さを愛おしく思った。彼女たちが彼女たちであることを思い知った。そして何より、今宵はももクロと過ごす最高のクリスマスパーティーになるんだ!と、心臓が鼓膜の横で弾けた。

 そこからもライブは止まらない。8曲目、'' デモンストレーション ''に入り、トロッコに乗り込むメンバーたち。モノノフに会いに行く、沢山のファンと少しでも近い距離で触れ合う。それは下積み時代、路上ライブを行っていたあの頃から未だ変わらない、彼女たちの活動方針の軸であり、ももクロの信念である。今日も彼女たちはいつも通り、伝えるとかそういう使命よりももっと大前提として'' 笑顔を届ける ''ために、私たちのより近くに会いに来てくれた。

 9曲目、'' Sweet Wanderer ''は20代女性である等身大の彼女たちを歌ったような楽曲。多くの同世代はきっと、この曲に救われているのではないだろうか。ドラマ仕立てのミュージックビデオも大好きだ。彼女たちが如何に普通の女の子なのかとか、そうである前にももクロという枠に入ったことの意味とか、それによって生じた迷いとか、そんなものが少しだけ垣間見える。それはただ強さだけを歌うのではなく、弱さを認める強さを歌ってきた彼女たちだからこそ持つ強さとなって、今、さいたまスーパーアリーナに輝いている。当たり前のように彼女たちを照らす4色の無数の光は、ももクロ4人の真の強さを世界に見せつけているかのようだった。

 いやはや、ここまで触れて来なかったが、中山秀征の昭和歌謡ショーを模したホストも、豪華且つ最高だった。そしてオーケストラによる演奏も、ライブの特典と言うには余りにも贅沢な、圧巻のライブであり、このShowの一部で、重要な役割をしっかり果たしてくれていた。

 さて、そこから、'' The Diamond Four ''。ただでさえ難しい、リズムで歌うこの曲を、ヒューマンビートボックスのみで歌ってきのだからそれはもう驚いた。ももクロもヒューマンビートボックスの方々も大変で、誰が得をするんだ?と思うほど、相当なテクニックを要する場面だった。でもそれをみて彼女たちの歌唱力・表現力の伸びや、音楽の可能性を感じられたのだから、私たちモノノフは確実に得をさせてもらったことになる。間発入れずに'' 怪盗少女 ''。ヒューマンビートボックスから始まり、また、場内にオーケストラの音色が響き渡った。この曲をライブで聴くことの安心感は底が知れない。いつもやっていても毎回盛り上がる曲というのは多くのアーティストに存在するが、この楽曲には盛り上がること以上に大事な意味がある。「笑顔と歌声で世界を照らしだせ」必然の4人で歌うこのフレーズは、歌うごとに言葉の力を強くする。言葉には魂が宿ると聞くが、アイドルは曲に魂を込めるプロフェッショナルだ。与えられた曲で大人たちに踊らされていた。かつて女優志望だったメンバーたちは年を重ねて本当のアイドルになった。それはももクロがどんなときでも全力少女だったからだ。彼女たちが今歌っているすべての曲に言えるのは、その曲たちが彼女たちを必要として呼んだということだ。曲に呼ばれて、それを形にして、エンターテイメントショーを完成させる。相変わらずももクロはカッコいいアーティストだ。

 そこからもライブは駆け抜ける。ドラムの刻む忙しないビートと含みのあるボーカルが印象的な新曲、'' stay gold ''。ダンスには大人の女性になった彼女たちだからこそ出せる魅力が詰まっていた。

 続くはももクリ鉄板ソング、''サンタさん''。-ZZ ver.-を聴くのは初めてで、原曲と変わった箇所を見つけるのも楽しかった。そして毎年恒例、「れにちゃんのもっといいとこ」では、本人が怪しい箱に入るというまさかの展開に。今年もマジックは大成功を収めたが、果たして結局、凄いのは誰なのだろう(笑)

 中山秀征による曲紹介を受けて披露したのは、今回のももクリのテーマソングである'' HOLIDAY ''。平成生まれの私たちにも何故か染みついている、昭和特有のあのノリが、ももいろのクリスマスを更に明るく塗り尽くした。次いで始まったのは、'' SECRET LOVE STORY ''。トロッコに乗っての歌唱。氣志團から分けてもらったこの楽曲も、4色のカバーをかけた途端にももクロになってしまうのだから不思議である。

 '' 走れ! ''、'' 白い風 ''、'' 僕等のセンチュリー ''と、ももクリらしいセットリスト展開でライブは進み、「ばいばーい!」とメンバーは袖へ。相変わらず濃ゆいももクリの本編はモノノフを充分に満足させたが、まだまだ彼女たちがみたい!その一心でアンコールの声は響く。

 アンコールに応えて、ステージに現れたのは中山秀征。今宵の司会を務めてくれた彼の語りを経てのover ture。メンバーとヒューマンビートボックスの方々がステージに上がる。「ある日歌が聞こえたんだ」夏菜子の透き通る歌声から始まるももクロの冬曲、'' JUMP!!!!! ''。この夏菜子のパートを聴いたときに、ミュージカルの舞台を踏んで拍車のかかったその表現力に感服した。

 演奏メンバーの紹介を挟み、次に歌われたのは、「きみとの約束の時」のフレーズから始まる名曲、'' 今宵、ライブの下で ''だ。この楽曲をライブで聴く私に、高まる以外の感情の選択肢はもう残されていなかった。この曲は、彼女たちの可愛らしさと、ももクロらしさが存分に味わえる曲だと思う。「今宵、ライブの下で待ち合わせた」ここに居る、そしてこのライブの完成に関わったすべての人。そこを笑顔と歌声で繋いだのは、今私の視線の先にいるももクロ張本人なのだ。

 そして最後、ソファーに腰をかけ風船を持った4人が歌ったのは、'' The Show ''。今までに死生観や人生観を考え、歌に乗せてきた彼女たちももクロの歌う、「人生というショー」という言葉には感慨深いものがある。様々を経験して、時には後ろを振り返ったかもしれない。でもそれでも、自分のなかに進む理由を見つけて、足を止めなかった4人。ももクロという人生を、自らの意思で選び続けてきた彼女たちによる今宵のThe Showも、随分と気の良い時間だった。

 最後はこのショーの世界観のなかに華麗に去っていき、エンディング映像が流れた。直後、挨拶とオーケストラメンバーイジりに現れたメンバーたち。楽しそうに話し終えて、大箱ライブ最終日特有の真剣なMC。

 「まだまだ見せたい景色、一緒に見たい景色が沢山あります」と、新国立競技場でのライブという次なる夢を語ったももいろクローバーZの4人。新たなる4人の夢の叶う瞬間と、それを見届けるいう私の夢。そしてなによりも、ももクロが今日も、ももクロとして生きていてくれたという希望に、精一杯のありがとうを込めて。

「会いに来てね、会いにいくよ。いつだって、味方だから!」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?