真谷優の大学留学記8「ビデオ通話」

今日は全休だし響に電話でもするか。昼の1時だから向こうは朝の6時か。モーニングコールにはちょうどいいな。響の番号にビデオ通話をかけた。
しばらくして響が通話に出た。「もしもし……?」画面に写った響は眠そうな顔をしていた。寝起きの顔も可愛いとか最強かよ。そう思ったが心の底に留めた。 「響、おはよう。 よく眠れた?」「あ、優おはよう。 そっちは今何時?今は朝の6時だよ」「ということは7時間も時差があるのね」「そう言うことになるね」「大学はどう?楽しめてる?」「うん、 結構楽しいよ。 だけど何故か最近女子たちが僕に興味を示してくるようになったんよ」「ふふっ」「何がおかしいのさ」「優は向こうでも人気があるのね。」「優は東洋人にしては顔立ちと目鼻立ちがくっきりしているから人気があるのかもね」「そうかな?」僕自身がイケメンとかそういう自覚ないけどな。「まぁでもリング付けてるから何とか自衛できてるよ」
「響は最近変わったこととかあった?」
「私ですか?」あ、素が出た。「うん」「私は最近、卓球を始めましてついこの間試合でのラリーが続くようになったんです」やはり響の敬語はいいな。なんというか安心感がある。「おーすごいじゃん」卓球かー。父さんが昔卓球やってたからちょこちょこ教わってたけどラリーができるようになったとはすごいな。「優は最近新しく始めたこととかないですか?」「んー特にはないかな〜」「そうなんですね」「響が元気そうでよかったよ」「私も優の声と顔が見れて嬉しいです」
「あ、そうそう」「どうしました?」「もしかしたら夏休みに一時帰国する予定だから迎えに来てね」「はい!もちろんです」「それじゃまた日本で会おうね」「はい、楽しみにしてます」ビデオ通話を終わらせベッドに横たわると自室のドアが開く音がした。《ユウ、誰と話してたの?》げげー知りたがり星人のアグネスとヴェルナーだ。《教えなーい》《えーなんで?教えて教えて》《あーはいはいわーったから1回黙ろうね?》そういうと落ち着いた。《それで、誰と話してたの?》《それはね僕の……さ》そういうとアグネスは黄色い悲鳴をあげ、ヴェルナーは雄叫びをあげながら床に倒れた。正直耳がいてぇ。そんなに驚くことかな?《何年くらい?》《んー2年半くらいかな》《意外と長いんだ》《どうやって知り合ったの?》《高校の時のクラスメイトだったのさ》《へぇ〜》《んで一緒に委員会の手伝いとかするうちに恋に落ちたのさ》《おぉ〜》いや、ミ○オンかよ。反応がおもろいな。《どのくらいで恋人同士って気づいたの?》あーそうか。ヨーロッパじゃ告白という文化があんまりないのか。《いや、日本では好きな相手に告白をするのが礼儀なのさ》《へぇ〜それでどんな告白のセリフを言ったの?》んーあのまま言ってもいいけどちょっとつまらんな。
《アヤセさん。私はあなたの事をこの地球上の誰よりも愛しています。だから僕と付き合ってください!って言ったのさ》すると今度は2人とも顔を真っ赤にしていた。アグネスは年頃ということもあって顔を覆っていた。チビスケのヴェルナーには強烈すぎたのか口をパクパクさせている。まぁいいや。
するとスマホから声がした。「あのーゆ、優?」「ん?どした?」「通話切れてなかったみたいで、翻訳かけながら聞いてたんですが……」
すると響が拙いドイツ語で「りっひりーべでぃっし何とかってのと、り、りーぴりんぐ?……ってどういう意味なんですか?あまり聞き取れなくて翻訳できなかったんですが……」「ん?あぁ」「Ich liebe dich mehr als jeden anderen auf dieser Erde.とLiebling.のこと?」「そうですそうです」「私はこの地球上の誰よりもあなたを愛してます。っていう意味と」ヴェルナーたちに聞こえないくらい小さいな声で「愛しい人って意味さ」と教えた。すると顔を赤くして「もう!どうして優はなんでそんな!そんなことさらりと言えるんですか!私、嬉しさと恥ずかしさが混じって爆発しそうなんですよ!」「ごめんごめん!でも弁明させてよ」「なんですか?」「えー……そのー……まぁ……なんと言いますか、そのまま言ってもなんだか受け悪そうと思いましてですね……ちょっとあの有名な小学生探偵の映画のセリフを借りましてですね……えぇ」するとさらに顔を赤くして「日本に帰ったら覚悟しててよね!」とキレられた。「ごめんて機嫌直し……」直してくれよと言いかけたところで通話が切れた。
あー機嫌損ねちまったな。僕としたことがやってもうたな。帰国する時は土産持って機嫌直させんとな。何を持っていったら喜ぶかな?今のうちに熟考しとこうかな。というか覚えてなさいねって一体何をされるんだろうか……しばかれるのだけは勘弁して欲しいな。響のことだし、しばくのはなさそうだけど覚悟しとこう。
《ということでだ。女子の機嫌を直す方法を教えてくれないか?アグネス?》ベッドから床へ素早く降りつつ、土下座をして頼んだ。アグネスは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに《わかったわ》と承諾してくれた。それから夕方までみっちり女子の扱い方や、機嫌の直し方等をレクチャーされた。

アグネスからレクチャーされたことは、結構ためになった。あ、そうだ一時帰国する時のお土産も考えんと。響は何が似合うかな……? アクセサリーならピアス以外のものを選ぼうかな。
ピアスだったら傷をつけることになるし。イヤリングとかも似合いそうだなぁ。あーでもイヤリングは耳朶に付けるからダメだな。
別にアクセじゃなくてもいいか。バウムクーヘンとかそういう系にしようかな。まぁ帰国する日が近づいてからまた考え直すとしよう。

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