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三宅陽一郎 短編小説集

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2015年2月の記事一覧

小説「最果ての森」

月が出ている。高く明るい月だ。私は月明かりの照らす真っ白な道を森の中へ運ばれる。ふさふさとした二本の手が私の体を抱いている。暖かい、不安がない、風が気持ち良い。白い毛が揺れては私に触れる。ずんぐりとした足で歩いている。長いひげと、湿った鼻と、体を包む白い毛並が歩くたびに揺れて、見ているだけで私の胸をワクワクさせる。目は赤く大きく砕けた水晶のように深い。でも言葉は太く優しい。「大丈夫だよ。」ウサギは

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