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ガザ攻撃に「最大限の配慮」 ―米議会でのネタニヤフ首相の「大ウソ」

 イスラエルのネタニヤフ首相が米議会でスピーチを行い、ハマスの壊滅と人質全員の解放まで戦闘を続ける姿勢を改めて示し、停戦について言及することもなかった。今回の議会でのスピーチは共和党の有力議員が主導して行われたもので、民主党議員の間には反発は強く、ナンシー・ペロシ元下院議長やバーニー・サンダース議員などの有力議員をはじめ上院や下院のおよそ半数の議員が欠席した。民主党の大統領候補として有力視されるカマラ・ハリス副大統領も日程上の理由で出席しなかったが、彼女はガザでの民間人の犠牲の多さと、食料など人道支援物資がガザ市民に十分に届いていないことに疑問の声を上げてきた。また出席した議員の中でもパレスチナ系のラシダ・タリーブ議員のように、「戦争犯罪人」と書かれたボードを手にして抗議の意思を表す人もいた。さらに、議会の周辺では数千人の人々がネタニヤフ首相への抗議の声を上げた。

忘れない、許さない https://x.com/sahouraxo


 ネタニヤフ氏の発言はウソが多く、誠実とはかけ離れたウソの多い発言を常態的に繰り返してきた。議会での演説でも民間人の犠牲や人道支援物資の搬入については「最大限の配慮」を行ってきたことを強調し、イスラエルはガザの民間人を守ってきたとも発言した。「最大限の配慮」を行っているにも関わらず、ガザでは実際に数えることができるだけでも3万9000人の人々が亡くなり、飢餓がガザ地区全体を覆い、国連の表現によれば、子どもが飢えや栄養失調で次々と命を落とす事態になっている。とても「最大限の配慮」を行っているようには見えない。7月16日にもイスラエル軍はガザ南部や中部の学校など攻撃し、57人が死亡した。言うまでもなく学校を攻撃するのは戦争犯罪に相当するものだ。

ラシダ・タリーブ議員 米議会で。ネタニヤフのスピーチ中。「ジェノサイドで有罪」 https://x.com/AkimotoThn


 さらに、ネタニヤフ氏の演説は第二次世界大戦後の日本にも言及し、「非軍事化と脱過激化という考えは第2次世界大戦後、日本とドイツに適用された。その結果、平和と繁栄と安全が続くことになった。イスラエルの勝利を受けて地域のパートナーの支援とともにガザ地区の非軍事化と脱過激化をすれば、同じように安全と繁栄と平和をもたらすだろう。」とも語った。イスラエルは2007年以来、ガザ地区を封鎖して、ガザの復興や成長を一貫して妨害してきた。建物の再建に必要なセメントや鉄材などの物資はハマスが孫ネルの掘削など軍事目的に使用される恐れがあるという理由でガザへの搬入を拒み、またガザ住民たちの必要なインフラを破壊してきた。さらに、農業などガザの産業をことごとく破壊してきた。イスラエルのガザへの攻撃は非軍事化や脱過激化どころか、人々が反発や憤懣から武力に訴え、過激化することになってきた。ハマスとの停戦にまったく前向きではないネタニヤフ氏がどうやってガザの非軍事化や脱過激化を実現するというのだろうか?

パレスチナ国家を承認している国(緑) 日本も承認しましょう


 完全に勝利するまでハマスとの戦闘を継続する考えを示し、イランに対抗するためにイスラエルと米国はともに起ちあがらなければならないと述べ、イランと、イランの支援を受けるハマスを「野蛮」と形容し、イスラエルや米国は野蛮と敵対して文明の最前線に立っていると述べた。ガザで多数の市民を殺害し、破壊の限りを尽くすイスラエルや、同様にイラクで多数の市民の犠牲者をもたらした米国のほうがよほど野蛮に見える。また、米国の大学などで、イスラエルのガザ攻撃を非難する運動を「イランが資金面で後ろ盾」になっているとまったく根拠を示すことなく決めつけた。

スーザン・サランドン 「ネタニヤフを逮捕せよ」 https://www.billoreilly.com/video/video-of-the-day?vid=314862664925398804


 ヨルダン川西岸や東エルサレムへのイスラエルの占領を終わらせることを要求する国際司法裁判所(ICJ)の勧告的意見によって、ハーグの国際刑事裁判所(ICC)の判事たちはネタニヤフ首相やガラント国防相に対する国際的逮捕状の発行に躊躇しなくなるだろうとも考えられるようになったが、米議会でガザの殺戮や破壊についてまったく自省する姿勢や発言もなく、虚偽の主張を繰り返したネタニヤフ氏には戦争犯罪で逮捕、訴追という措置がまったくふさわしいように思える。

ネタニヤフ、世界中から指名手配 ワシントンで  https://nymag.com/intelligencer/article/rashida-tlaib-holds-war-criminal-sign-as-netanyahu-speaks.html


ガザ問題に関するネタニヤフ首相の最大の関心事は、イスラエル国会(クネセト)で多数派を維持することであり、そのために14議席をもつ極右の「宗教シオニズム」や「ユダヤの力」の主張を聞き入れなくてはならない。これらの政党は、ガザ占領を維持し、イスラエルの入植地をガザに再建することを考えているが、ネタニヤフ首相は人質の家族の訴えやエジプトなどの停戦案よりも、これらの政党の願望を満たすことを最優先させている。

表紙の画像は米議会を訪問するネタニヤフ首相


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