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#9:『響け!ユーフォニアム感想』京アニの覚悟が響く日本アニメ史に残る傑作

本エントリーはいつもと違い考察でも抽象思考でもなく、ただのヲタク語りです。作品は響け!ユーフォニアム』シリーズ。原作は武田綾乃の小説、アニメは京都アニ制作で2015年に第1期が開始、9年経ち今年(一旦)完結しました。

スピンオフ作品『リズと青い鳥』にどハマり、リズをもっと理解する目的で1期を見て見事沼りました。数週間で第1期~3期+総集編含む映画4作品を全て見てスピンオフ小説も買いました。草。こういう時にヲタク気質ってやつは便利、本当に。

"感想:とにかく最高!傑作!唯一無二!!何回泣いたか分からない"

ユーフォ作品の記事は別で三本ほど書くつもり(多)ですが、凄まじいユーフォロス消化のため今回はつらつら感想書きます。要所でネタバレ含む内容触れるのでご注意をば。

画像引用元:ORICON NEWS(この画像エモい)

シリーズ全体を通じ感じた魅力

本当に生きてるかの様なキャラの作り込み

この作品は面白い特徴が3つあると思います。

  1. キャラが多い。吹部の群像劇なのでざっと100人近く存在

  2. 主要キャラは少ない。ストーリーだけなら10人前後追えばOK

  3. なのに全キャラ個性が深く全ての言動に一貫性がある

どんなキャラでも、この人が苦手だからこのシーンでこの表情をする、など作り込みが半端じゃない。例えば第1期にて、部内の神格化が進む滝 昇を好意的に思わない数少ない部員=釜屋つばめが、秒しか映らない場面でそれを察せれる表情・言動をするシーンなど(ちなみに1期のすずめは台詞もほぼ無いモブキャラで、上記描写も無くてもストーリー本筋に全く影響はないです)

この「高校時代の部活」という繊細な空間を生々しく描く上で、こうした細かい表現の積み重ねが、視聴者に潜在的に与える感情移入は違いなくある

引用元:『響け!ユーフォニアム3』公式HP

野菜・脂・青春マシマシ

高校時代の青春がこれでもか!と詰まってる。
全国大会を目指す夢・努力・友情など王道は当然、軋轢・抗争・しがらみもマシマシ、人間関係のリアルは力が入ってます。只のドロドロではなく傘木  希美&鎧塚 みぞれのような表面上⇔深い所のすれ違い描写などもお上手。学生時代あったわ~こういう関係性。ていう矢印が多い。

また、部活動だけでなく久美子(主人公)と姉(麻美子)など部活に閉じない関係の掘り下げが丁寧なのも嬉しい。恋愛要素は少な目ですが、個人的にそこは大して求めてないので、話数が限られてる中ではむしろポジ。

いや~連続アニメ久っしぶりにちゃんと見ましたが「青春の3年間を追体験できる」このカタルシスは映画では絶ッ対得られない。物理的時間を彼女らと共にしたが故の、感情移入は間違いなくあります。(別記事で「映画はユーザーが一番頑張らなくていいエンタメ」と言いましたが、そういう意味ではアニメは相当頑張らないといけないエンタメでしょう。スポーツと同じで頑張ったが故に、より涙できるエンタメなんでしょう)

嫌なやつが只の一人もいない!!!

ここ、個人的超重要なポイント悪意を持つ人物が作中にいない!!!人物同士の衝突は多い。けど嫌がらせ・イジメなど他者を貶める悪意はなく価値観の違いや不器用さ故のすれ違いしかない。
例えば夏紀⇔奏の衝突は実力主義への向き合い方の信念の違い、みぞれ⇔希美のすれ違いは互いへの愛情表現の違い、久美子⇔真由の嫌悪感は大事にする物の違い。勧善懲悪的な構図は一切無く、一人一人が自分の信条に心が従ってるだけ。前述のキャラの作り込みも相まってだからこそ面白い。姑息で卑劣な人間はこの北宇治にはいません。まあユーフォのスポ根作風がそうさせてるってのが大きいですが。

これは個人的意見ですが・・・最近リアリティショージャンル等で相手を出し抜く事がエンタメ的に面白くするために強調演出されることに疲弊してます。目的のために卑屈な行動をすることが、例えその方が盛り上がったとしても、大量生産され消化されるべきなのか?と疑問に思います。多少綺麗事でも人の真っ直ぐで誠実な思いに触れる方が、私は好みです。

ちなみに一番好きなキャラはみんな大好き中川 夏紀先輩です。『飛び立つ君の背を見上げる』も先日読了しまして、夏紀先輩を掘り下げた記事も今度書くつもりです。

画像引用元:WEB ザテレビジョン

第3期がこの作品を非凡なものにした

優等生ちゃんから唯一無二な作品へ

私は原作小説をまだ読んでません。その上で第3期の終盤ストーリーが改変され賛否ある事は知ってます。賛成意見の中には、完結編ゆえ肯定すべきというバイアスもあるはずで、正当評価は難しいと思います。
それでも私は映画も含め全作品で第3期が一番好きと断言します。第3期がユーフォを最高な作品から「唯一無二な作品」に昇華させたと感じます。

個人的な印象で第1~2期は優等生な作品。「青春群像劇」をたっぷり感じる事ができる。第1期は入学〜関西大会出場までをクールフルで描き、1話1話の構成も完璧。「これが吹部の青春だ!」と強く主張したロールモデル。
第2期は構成的には駆け足(原作未読からすると南中カルテットをもっと観たかった。『リズと青い鳥』あるからいいけど)、ですが久美子&あすかを中心にキャラが感情を出すシーンが増え「こいつらは本気なんだ!」と訴えそして最終回であすかが久美子に「響け! ユーフォニアム」の楽譜という名のバトンを渡して終わるという、出来すぎな大団円。一部にはここでユーフォシリーズが終わるのが一番綺麗だったと思う人もいるようですね。

第3期はそんな超優等生作品が、更なる高みを目指した挑戦的作品です。普通にやれば確実に90点は取れるのに、減点のリスクを取って120点を目指した作品。それこそ久美子達が全国金の為に「何かを変えないといけない」としたように。もうそれだけで作品としての覚悟を感じます。
その証拠に前半(7話辺りまで)は疑問に思う構成が多かった。登場の少ない3年の掘り下げも無く、府大会・関西大会の演奏シーンを描かず、全体的に駆け足感が強い。一方で黒江真由との絡みは冗長さを感じる。雰囲気的にも痛快さが弱く、いつものユーフォらしさが無い。橋本先生も「大丈夫?」と思わず言ってしまう前半でした。
が、全部見終わってしまえばこれが正解だったと心の底から思えた。きっと第12話から逆算した結果、こうした構成・演出になったんだろうなあと思います。

この方針は「長編アニメとして望まれている映像を作ることより、作品として向き合うべきテーマ性を優先した」という事と自分は解釈してます。個人的にこの感覚は『ダンガンロンパv3』に似てる(ダンロンシリーズもv3が一番好き)。その結果が「最高な作品」ではなく「唯一無二の作品」になったのだとして、制作陣の覚悟に鳥肌が立ちます。

引用元:『響け!ユーフォニアム3』公式HP

アニメ史に残る第12話『さいごのソリスト』

前述の通り第3期はこの12話を軸に制作されたのではないかと思います。この話は本当に凄かった。凄すぎます。厳密には第10話からの流れが凄まじいのですがこの12話はちょっととんでもなさすぎます。実際は違うと思いますが、第1~2期+全映画の全てがこの20分の為にあったと思わされる、そう言われても信じてしまうような1話でした。

OP/ED全カット、導入のオーディション対決提示に無駄な時間をかけず、シーズンを通じた久美子vs真由の答え合わせとオーディションにたっぷり時間を使うエモすぎる構成。そして、視聴者も没入し参加できるオーディション。からの原作をひっくり返す展開。とんでもない仕掛けです。
個人的にしてやられたのがオーディションが全部で3回あった事。黒江真由が1話で登場した時点で、正直久美子のユーフォの立場が揺らぐ展開は誰もが予想できたでしょう。その後オーディションが3回、1回目は久美子が勝った事で「次は真由が勝ち、努力した久美子が最後に勝つ」展開を大半の人は想像したのではないでしょうか?まんまと踊らされました。また、最終回直前の12話で原作をひっくり返す展開を差し込んだことで「最終回で全国金が獲れない可能性もあるのでは?」と注目を高めた効果も計り知れません。この辺り、やはり12話を軸に全体を構成したと思えてしまいます。まさに伝説の1話。

余談ですが、オーディションの演奏シーンは両者で表現がかなり違うみたいでしてこういった作り込みも凄い。以下の解説動画が非常に分り易かったので引用をさせて頂きます。

過去の経験から自己より他者を優先し続けた結果、トランペットを引き立てるコンクール向けの演奏をした真由。麗奈と肩を並べようと駆け抜けてきた結果、自我の色が強い演奏をした久美子。「コンクールで金賞」を優先した結果、真由が選ばれるという残酷さが、特異性を際立たせます。

最後に視聴者の感情をグチャグチャにした上で最後の大吉山のシーン。こんなん全シーズン見てて泣かない人絶対にいないやろ。個人的に大吉山で久美子が言った、

きっと負けない。麗奈は最後まで貫いんたんだよ。
私はそれが何より嬉しい。それを誇らしいって思える自分に胸を張りたい。

出典元:響け!ユーフォニアム3 『さいごのソリスト』

この表現に胸が打たれました。どうしたらこんな台詞思いつくんだ。「そんな自分を褒めてあげたい」とか「胸を張ってそう言いたい」よりも絶対に心に響く。一言一句でこれ以外ないと思わせる、素晴らしい台詞です。

長々と語りましたが、改変を加えたこの1話から制作の覚悟を感じました。誰よりもこの作品に向き合ってきた制作陣が、きっと誰よりも美しい形で作品を終えたいと思ってたはずです。約10年作り続けてきたんですよ?その感情を捨て「正しい作品作り」に向き合った気概を感じます。

大袈裟かもしれませんが、この作品を人に薦める時にはこの1話を観るために全シーズンを観るべきだ、と言うかもしれません。それくらいこの作品を唯一無二の作品に引き上げた1話だったと思います。

画像引用元:響け! ユーフォニアム3 NHK公式サイト

黒江 真由という異質な存在

ネットを見るとどうやらあまり人気の無いキャラのようですが、第3期は黒江真由なくしてあり得ない。久美子の鏡でありながら対極の存在として描かれたこのキャラを、私は大好きになりました。
なんだろう。『ペルソナ5』の明智とか『シャーマンキング』のリゼルグみたいな、中盤仲間になって初期メンの黄金比率が崩れるんだけど、強いから使わざるを得ないみたいなあの感じが私は好きなのかもしれないです。

前述した第12話が、黒江真由を単なる舞台装置ではなく血の通った北宇治の一員にする役割を持っていたのも粋です。このキャラクターに関しては色々と考察が捗りすぎてるので、また別の考察記事で触れていきたいと思っています。

終わりに

今、ただひたすらユーフォ語りがしたかっただけの記事でした。いや本当に最高のアニメ。この作品に出合えて良かった。敷居が高すぎて身の回りに一緒に語れる人がいないのだけが欠点ですw
観る度に発見がある本当に作り込まれた作品なので、自分の性格的に原作小説もなんだかんだ全部読んでしまうのだと思います。

京都アニメーションの皆様、素敵な作品を作ってくれて有難うございました。

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