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エンドロールの多幸感

 えっ、エンドロールで席を立つって?なんてもったいない。映画のもっとも多幸感を感じる瞬間、それがエンドロールではないか。

 どっぷりと映画の世界にひたりきった2時間弱。喜怒哀楽がジェットコースターばりに急転直下。ああ感情が忙しすぎる。現実には起こり得ない状況に身を置き、スリルとサスペンス、ロマンスとセンチメンタルを味わい尽くす。これが現実なら身がもたんな。でも現実忘れたいからこれでいいのだ。

 じわっと目頭を熱くし、涙なんか潤ませちゃう。ああ、これでよかったのか、うん、いい人生だったなどと、人ごとを我がことのように振り返り咀嚼し直す。もぐもぐ。しっとりと落ち着いた音楽に身を委ね、白文字と黒背景のスクリーンの流れるのを見るともなく視界に映す。これぞエンドロールの多幸感。

 エンドロールはまた、現実と非現実をつなぐトンネルでもある。おっちゃん、じわっと涙を潤ませて明るい現実に戻りたくない。人様に見られたらそれこそ、なんやこのおっちゃん、である。エンドロールの間に少しずつ少しずつ遠くに見えるトンネルの出口の明るさに慣れておかなければならない。いきなり現実はキツすぎるもんね。

 どんな気持ちでエンドロールの時間を過ごせるか。それが良い映画だったか、そうでなかったかの判断基準でもあるよね。






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