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A Piece of City 1 【選ばれし軒先】

都市の中に潜む違和感を見つけて考察するシリーズ。

第一弾は、先週高円寺に行った時に見つけた、アパートの軒先にあったこの看板。

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石材に油彩マーカーで「6さい〜59才 すわらないで!(タバコを吸うなんてもってのほか。)」と書かれている。

大家さんは、誰かにここに座られて嫌な思いをしたのだろうか。ヤンキーがタバコ吸いながらたむろしたり、ホームレスが寝転んだりしていたのだろうか。

ここで面白いのは、着席を全面禁止するのではなく、"座れる世代もいる"というところだ。テキストもよく見ると、裏を返せば「子供老人はどうぞ、疲れたら座ってください。」と言われているようで、大家さんのツンデレな優しさも垣間見えるところが愛くるしい。

コミュニティは誰にでも開かれているとかえって誰のものでもなくなってしまう。適度なグルーブ感を生みつつも、新規の人に門戸が開かれていなくてはならない。そういった意味でいうとこの看板は、比較的パブリックなこの空間に、絶妙な温度感で不思議なグルーブを生んでいるのではないか。私が仮に5歳の頃からここの存在を知っていて、6歳の誕生日を迎えてしまった時、きっともう戻れない、得もいえぬ寂しい感覚に陥るような気がする。そして、60歳まで生きて、ここにもう一度座るんだという決意が少なからず生まれるような気がする。

何の変哲のない軒先も、この看板ひとつで物語を色々考えてしまうのだから面白い。

・・・


おわり

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