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ユーモアとか

せっかくの自己紹介だったので、ユーモアとか置いてみた。今見ると全然滑ってるな、そのうち消す。でもユーモアって大事だろ、私はあなたを笑わせようとしているって姿勢自体が大事じゃない?いかに滑ってようとも。

「みやもとさん、根暗っすよね?僕もです!」
かつて一緒に働いていたNさんが、入ってきて1週間かそこらで言ってきた。私は完璧に陽気で適当な人を演じきっていたし、その場でそう言ったキャラクターを確立していた。ばれるハズもないと思っていたから少し驚いた。
「なんでわかったんっスか?」
肉の筋膜をはぎ取りながら、冗談に乗った風に聞いてみた。
「だって、目の奥真っ暗じゃないっすか」
灰汁を掬いながら笑って答えるNさん。続けて、「僕の姉貴がね…
と、ここで馬鹿女がカットイン
「根暗だとかなんだとか、みやもとさんとNさんがこの店で一番面白い人じゃないですか~」
じゃないですか~じゃねぇんだよ糞アマ。
でも、多分、お前が正しい。馬鹿女、お前は私たちの道化をそのまま受け取ってるんだ。だからお前が一番正しい。狂ってるのはNさんの方で、私の方だ。だからお前が正しいんだ。

馬鹿女がひとしきり喋って自分の仕事を始めた時に聞いた。
「で、お姉さんがどうしたんっすか?」
「あぁ、そうそう、姉貴、鬱病でよく自殺しようとするんですよね〜。だから何となくわかるんっすよー」
かなり重症でね、動けないんですよ、布団の中でションベンもうんこも漏らすんですよ?引きますよね。と笑いながら話す。大量の味噌を沸いた出し汁に溶かしながら。
魚を弄くり回していた56才のジジイは話題に耐えきれなくなったのか早々に「俺は今仕事に集中していてあなた方のお話なんて何も聞こえてません」と言うポーズをしていた。聞き耳を立てながら。バレバレなポーズもそれはそれでやっぱり正しい。ジジイ、お前は正しい。これは平日の朝、9時36分に話す話じゃなかった。
「マジで死ぬ気の奴って居ないんっすよ、大体、構ってほしいメンヘラ女ばっかりですよね。適当に優しくしたらタダでヤレるからまぁそれはそれでいいんですけど、嘘じゃないですか、布団の中で糞垂れてない癖に鬱だなんだ言って死にたいとか言われても。てか、何か嫌じゃないですか、俺だけ本気で死にたいのにファッションで死にたがられるとムカつくんですよね。」
続けて、
「僕はチンコ勃たなくなったら趣味なくなるんで死ぬ予定です。未練とか無いんで。セックスできないならマジで生きてる意味とか無いですよ。オススメの楽な死に方あります?」
と言った。清々しい顔をしていた。
「高い所が大丈夫なら飛び降りですし、ダメなら首吊りっすね。薬は失敗した時悲惨だからやめた方がいいっすよ」
流石詳しいですね〜とNさんはヘラヘラ返した。
150gずつに切り付けた肉を丁寧にラップで包む、今日は12個取れた。バットに整列させて冷蔵庫にぶち込む。今日は水曜日だから今夜も発注しといた方がいいな。
それから幾つもの死に方を二人で吟味して泣くほど笑った。どんなにトチ狂っても焼死だけは嫌ですね、とか、でも自分の大叔父は焼身自殺したんっスよとか。姉貴の失敗例とかを肴に素面で笑い倒した。
「あぁ、笑った笑った。やっぱりユーモアって大事ですね。」
私たちは昨日見たお笑い番組で盛り上がる中学生みたいに笑った。
そうだ、ユーモアって大事だよ。私とNさんが腹の中に何を飼ってようと、馬鹿女にもジジイにも店で1.2トップで面白い人と思われてるんだから。空元気でも緻密な取り繕いでもユーモアは大事だ。どうせ本当の事なんて誰も知りたくない。

「いらっしゃいませー」
10時きっかりのお客様ご来店。帰れ馬鹿、ここはそんなにいい店じゃ無い。

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