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コロナな日々に希望が見え始めた冬の終わり、戦争が始まった。

ロシアがウクライナの侵攻を始めてから頭はそれでいっぱいで、他のことがうまく考えられない。毎日テレビとスマホに釘付けになって、ウクライナのことばかり考えてしまう。

そういえば今からちょうど2年前、イタリアは欧米で最初にロックダウンが始まり、毎日毎日1000人近くもの人がバタバタ亡くなっていた。一日中ニュースを見て、読んで、頭はそれでいっぱいになっていた。目は霞んで画面が読めなくなったりしていたっけ。

2年も続いたそんな日々が、ようやく終わりそうな気配を見せ始めた冬の終わりに、今度は戦争が始まった。



イタリアではテレビの報道番組もスマホのニュースアラートもウクライナ一色だ。コロナのことはすっかり吹き飛んでいる。


世界のあちこちで、シリアで、アフガニスタンで、ミャンマーで、戦争は続いているのに、ウクライナは同じヨーロッパ人だからと大きく扱い、アジアやアフリカのことは知らん顔するのか。そんな批判的な意見も多い。確かにその通りかもしれない。でもヨーロッパの人たちが、地続きのすぐ近くで起きている戦争を、他人事とは思えないのは心情として仕方がないんじゃないかという気もする。もしも、もしも、狂人プーチンが核のボタンを押したら、ヨーロッパ全体が危ないと言われているから、落ち着いてはいられないのだ。イタリアに暮らす私もその1人で、ちょっと浅はかかなと思いながらも、放射能にヨーロッパ中が汚染された場合に備えてヨウ素タブレットなんか買ってみたり。

と書いていたら、昨夜のニュースでは、国連総長が核戦争の可能性もありかもと言ったという。あり得る、とか言っていないでなんとかしてください!と切に切に思う。


ヨーロッパの穀倉地帯と言われるウクライナと、同じぐらい大きな農業国であるロシアの戦争だから、小麦、とうもろこし、サンフラワーオイルあたりが壊滅的に足りなくなるだろう、それに伴って値段も上がり、買い占めも起きるだろう、というニュースがあった。それで、戦争が始まってすぐの土曜日に買いに行ってみたら、案の定、小麦粉類やパスタの棚がスカスカだった。パスタ、ピッツァ、パンと、小麦粉ベースの食がメインのイタリアにとって小麦の高騰は深刻な問題なのだ。日本で、ホットケーキが食べられないわ、と嘆くのとは次元が違う。

いつも行くIPER COOPの小麦粉コーナーも
パスタのコーナーも。やっぱり買い占めは始まっていた。

買い占めはいけないよね、と後ろめたく思いつつ、パンやお菓子を日常的に作る私もいつもより多めに買いおくことにする。

発酵生地の神様マウロさんからわけてもらった100年ものの天然酵母は、定期的に粉を継ぎ足していかないと死んでしまうから、それ専用の粉やパンに使う全粒粉などなどを10袋、そしてパスタを4袋。その他、電池などいくつかの日用品をカートに入れ、50ユーロぐらいのイメージでレジに行ったらなんと80ユーロ! 全体的にかなり値上がりしている感じだ。

イタリアは天然ガスの輸入の40%をロシアに頼っているし、戦争が起こる前から供給不安定で光熱費がかなり値上がっていた。それがいろいろなところに響いているし、便乗値上げもあるだろう。

ガソリンの値上げも半端なくて、イタリアでは今1リットル2ユーロ50セント前後まで行っている。

そういう値上げが、食べ物でも製造過程や輸送過程で響いてくるから、どんどん値段があがるというわけらしい。

もちろん小麦粉が多少値上がったからって、ガス料金が高くなったから暖房をケチって寒くても、彼らのことを思ったら、大したことではないには違いなんだけど。

うちの近所のガソリンスタンドにて。SELFはセルフサービス、SERVは係の人が給油してくれる場合の値段。

雪の降る中で、暖房も水道も食べ物もなく、恐怖と絶望の中で過ごすウクライナの人たち。

戦争が始まって以来、ウクライナの一般市民の犠牲者はウクライナ側の発表では2000人を超えたとか、マリウポルという南部でひどい攻撃を受けているところだけで1800人だとか、情報が混乱している感じ。

一方、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の統計では、2月24日から3月7日までの間に474人が亡くなり、そのうち12人が子供とか。全然数字が違うなあ、と思って読み進むと、その他に性別不明の遺体が311体あると書いてある。怪我人も性別不明という数字が多くて、どれだけ悲惨な状態なのか想像がつく。そしてこの数字も、戦地からの情報は遅れ、漏れの可能性が高いので、実際はもっと多いかもしれないということだ。

https://www.fanpage.it/esteri/quanti-civili-sono-morti-dallinizio-della-guerra-in-ucraina/

戦争をする理由はいろいろあるのだろう。イタリアでも、日本でも、政治家、軍事評論家、その他、物知り顔の人たちがいろいろなことを言っている。でも、普通の、たった3週間前までは私たちと同じように、暖かい家でネトフリを見て過ごしたりしていた普通の人々を、無差別に殺戮したり、家族と引き離したり、こんなに辛い目に合わせていいい理由はどこにもない。

お母さんが爆撃で亡くなった小さな女の子が、人生の最後をたった1人で過ごし、脱水症状で亡くなったとか。

ロシア軍は小児病院や学校まで砲撃して、爆撃を受けたけれど救出された妊婦さんが、数日後、胎児と共に亡くなってしまったとか。

防空壕がわりとして解放されている地下鉄の駅の中で、地面に毛布を敷いて寝泊まりしている人たち。その側には自動改札機が並んでいることとか。

ウクライナの避難民を運んでいたイタリアのバスが事故を起こし、死亡者が1人でてしまったこととか。せっかく戦火から逃れてきたのに。逃げることができたのに。

ポーランドへ向かう列車に乗るために行列している人たちの長い列とか。
祖国を守りロシア軍と戦うために、ウクライナでは18歳から60歳の成人男性は国を離れることが禁じられたから、避難するのは女性と子供、高齢者だけ。国を離れる妻を、子供を、親を、駅で見送る男性たちは何を想っているのだろう。そんな彼らの中には、勇猛果敢な人ばかりではないだろう。

生まれたばかりの息子を抱きしめる悲痛な表情の若い父親。

年とったお母さんの胸に顔を埋めて泣いている青年。

小さな子供を守るために、夫を戦場に残して出発するしかない若い母親たち。

そして何も知らずに見送りのパパに手を振る小さな子供たち。


そんな人々の姿が目に焼き付いて離れない。





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