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小さな介護施設に「正社員」が1人増えました。

”私のやりたい「介護」をしたいです!”
”送迎業務やっぱりやりたくないです…”
”私はミヤケさんみたいにはなれないです。”

都内にある弊社介護施設。

2020年4月1日。

設立6年1ヶ月で初めて、あるメンバーの「契約社員」から「正社員」へと雇用形態の転換を行いました。

新型コロナウイルスの渦中にあって、正直に言えば”勇気のいる決断”でした。
経営の見通しが立たなくなり、正社員になって数ヶ月で倒産・・・なんてことも可能性としてゼロではありません。

なぜ、こんな状況にあって「正社員登用」を決めたのか、少しだけ書きたいと思います。

成長と貢献に「報いたい」

今回正社員になったメンバーが契約社員として入社してきたのは約三年前。

2017年5月、GW明けに施設に一通のFAXが届きました。

【転職希望者、女性、20代】

その他にもいくつか情報がありましたが、なんとも殺風景なチラシでした。

大手企業に新卒で入社し、1ヶ月で退社し面接にやってきた彼女は、まだあどけなさが残る表情でこう言いました。

”私のやりたい「介護」がやりたいです!”

彼女の希望した条件を下回る条件しか提示できませんでしたが、面接での彼女の「目」を信じ、入社してほしい旨を伝えました。

ありがたいことに彼女は弊社を選んでくれました。

もちろん弊社に入社することでの「デメリット」も伝えました。
彼女が入社した頃のチームは、人手不足はもちろんコンプライアンスでも綱渡り状態でした。

そんな中でも、理念と考え方に共感して入社を決めてくれた彼女。
僕は当時の人事と役員にこう伝えました。

「もしも彼女がネガティブにウチを辞めることがあれば、僕は介護業界から足を洗います。彼女はそれくらいの人材だしポテンシャルがあります。」

それから彼女は、とてつもないスピードで業務をキャッチアップするだけでなく、「採算管理」を学んでくれたり「メンバーの相談役」になってくれるなど、愚直に成長してくれました。
今では恐ろしくて他のメンバーに実施はしていませんが、彼女が入社した頃、僕と彼女は週に何度も夕方に1時間や2時間にわたる面談やミーティングを行っていました。ハラスメントスレスレです。

そんな彼女も、「しっかりした職員さん」という枠に収まらず、新しい事業の立ち上げに参加してくれるなど、施設の発展にとってかけがえのない存在になっていました。

正社員登用を考え始めたのは1年前。
これまでの彼女の頑張りに報いる方法がいくつかあった中で、誠意を示すのに一番いい方法だと思いました。
介護事業は給料を二倍三倍にすることは難しいし、ボーナスを何百万円も出せない事業です。できるだけ高い金額で、という誠意の示し方も検討し一部実施していました。
しかし、
今後の事業部の未来を考えた時に、彼女の存在が不可欠であることを、お金を超えた形として示すのは、やはり「正社員」への転換であると思いました。

考え始めたとき、彼女に聞いてみました。

僕「ウチ、辞めたい?」

「は?w何言ってるんですかw辞めないですよw」
「居させてもらえるなら、ずっと・・もちろん例えば出産とかで途中勤務できないこともあるかもしれませんけど、できることなら居たいです。」

そんなことを言われれば、全力で動くだけです。

「たかが制度」で不安にさせたくない

彼女の正社員登用を加速させたのには、もう一つ理由がありました。

契約社員(有期労働契約)については法律で定めがあり、原則として3年を超える契約期間を設定できないとされています。ただ、同じ条件での更新、いわゆる契約更新は可能です。
また、同じ会社での契約期間が通算で5年を超える場合、労働者が無期雇用への転換を希望すれば、会社はそれを了承しなければならないことも法律で定められています。

ざっくりまとめると、こんなルールがあります。

つまり、彼女個人にとっては「先が見えない状況」を作り出してしまっているのでした。

僕たちのチームが目指していること(メンバーも利用者さんも関係者みんなが幸せになること)や、彼女自身の豊かな人生のために、こんな制度で時間を止めてしまうわけにはいきません。

しかしながら、「たかが制度」でも「されど制度」です。

ルールを遵守しながら彼女を守り、共に成長していくためには制度に向き合いながら最善の策を探っていく必要がありました。

チームは次のステージへ

何年にもわたって同じメンバー・同じ布陣でチーム編成をしていると、やがて発生するのが「既得権益」です。

”勤続年数が長い〇〇さんには逆らえない”
”正社員の〇〇さんが言うことが正しい”

そう思うこと自体は、ただの「思考停止」状態なのでそれ自体が悪いということはありません。

しかし「既得権益」層が生まれることによって、
・これまでのルールから逸脱したこと
・事業の目的からずれた立ち居振る舞いをしてしまうこと
・倫理、法律から外れたこと・・・(考えたくないけど)

のようなことが起きます。
世の中の「不祥事」と言われるもののほとんどは「既得権益」によって生まれるといってもおかしくありません。

これまで僕のチームでは、ある種の「既得権益」が蔓延りやすい環境が整っていました。
僕と管理者は社内において多くの裁量権を委譲してもらい、本社オフィスとも離れた場所にあります。
正社員は僕と管理者の2人のみ。
僕も管理者も既得権を持とうなんて思っていなくても、なんとなくチーム内では、「ミヤケさんが言ったことだから」「管理者が言ったことだから」という見えない雰囲気を感じていました。

僕と管理者が全ての言動に関して100%正しい答えを持っていればそれでもいいかもしれません。
でも現実にはそんなものを持っているはずもなく(そんな人間はいません)・・・という状況でした。

見る人が見れば「ギリギリ」の状態。
そこから一歩、もう一歩成長するために、今回の「正社員登用」は大きな意味を持つと思っています。

具体的には、
・現場と意思決定のスピード強化
・裁量権の分割
・得意分野での成長

・現場と意思決定のスピード強化

現場により近いメンバーが意思決定権を持つようになれば現場での不具合をよりスピーディーに対応することができます。
さらに彼女には入社以来施設の経営会議やミーティングにも出てもらっていて、採算についても一緒に考えてもらっているので、「ただ備品を購入すればいい」なんていう無思考な意思決定がされる可能性が低いです。

・裁量権の分割

これまで僕と管理者が多くを有していた「裁量権」を彼女に持ってもらうことで、三者が互いに責任を持ち合うことで誰か1人に偏ることなく健全なチームを作れます。

・得意分野での成長

それぞれが責任を持って業務にあたる際、苦手なことを悶々をやり続けるよりも、得意な領域の業務をやりながら成長していくことができます。今回の新体制により、より自分の得意なことができる環境を作りやすくなります。



世界から見れば小さなことかもしれませんが、僕たちのチームは確かに大きな一歩を踏み出すことができました。

社会が混沌としている中、
「チームメンバー、利用者様、ご家族・関係者の方の幸せ」に寄り添っていきたいと思います。



<終わり>


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