日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(20) 3章 「著作権裁判」の落とし穴 4

 すべては10年前、奨学金問題対策全国会議にかかわったときから問題ははじまった。これほど「嫌われ者」になってしまうとは、当時は予想もしなかった。

 いろんなことが思い出されてくる。古いメールを探すと、執筆当時の企画書が出てきた。私の知らないところであけび書房が作ったものだ。執筆予定者とテーマが書かれている。

第1章 総論  50頁ほど(図表込みで5~6万字)
  教育における格差と貧困―奨学金問題から考える 大内裕和
第2章 ルポルタージュ  30頁ほど(図表込みで3~4万字)
  奨学金地獄―学生の悲鳴と貧困ビジネスとしての奨学金の実相 三宅勝久

 あけび書房の事務所で打ち合わせをしたときの光景が脳裏によみがえった。2013年の夏だった。「売れる本にしたい」というのが版元と全国会議の意向だった。私も作るなら自信をもって売れる本にしたかった。そこで、念のために印税のことを尋ねたところ、事務局長のA弁護士が言った。
「印税は会のほうに入れるということにしたい」
 私は驚き、強く反対した。
「労力をかけて原稿を書くのだからそれぞれの著者に印税を払うべきだ。また著作権も各著者に帰属すると明確にしたほうがいい」
 印税の件を確認したのは、原稿を頼んでくる以上、印税の金額や条件を確かめておくのは当たり前だと思ったからだ。

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