見出し画像

【奈良県三宅町町長の声をレポート#2】 夢が、日本で一番、叶えられるまちへ。住民・民間・行政がそれぞれの役割を果たして進めるまちづくり。

三宅町役場庁舎前にて、今年3月末にオープン予定の、複合施設MiiMo(みぃも)。「三宅町の将来を育むまちの拠点」をコンセプトとして、公民館や図書室、学童保育などの機能を兼ね合わせた複合施設です。MiiMoを通じて目指す、三宅町の未来像とは?森田町長にお話を伺いました。

※2020年12月から始まった「奈良県三宅町複業プロジェクト」。株式会社Another works(@works_another)と奈良県三宅町が、複業人材を登用した官民連携での地方創生のロールモデルとなることを目指し、3月末までプロジェクトを遂行します。

本記事は、複業プロジェクトのプロジェクトマネージャーが、森田町長へインタビューを行なった内容です。

▼左:三宅町町長 森田浩司(@miyake_cho_cho)、右:プロジェクトマネージャー 佐野創太(@taishokugaku

画像3

町長となる決め手にもなった、MiiMoの構想

―MiiMoは、どのような経緯で建設が始まったのでしょうか?目指す先は子どもも大人も、多世代が交流することで「三宅町の将来を育むまちの拠点」とお伺いしています。

森田(町長):始まりは、私が町会議員だった2015年12月の出来事です。突然、学童保育で利用していた建物が、耐震不足で閉鎖しまって。小学校に無理を言って教室を空けてもらい、二部屋で80人の子どもたちの学童保育を行なうことになったんです。

行政に関わる者が誰も耐震不足について把握しておらず、一部の関係者だけが、建物が急遽閉鎖すること、学童保育が次にどこで行われるかということを知っている状態で。利用者である住民を無視する行為だと思い、憤りを感じましたね。

―住民の方が置き去りになってしまっていたんですね。

森田(町長):その後、2016年3月に新しい施設を建設するための費用として、1億規模の予算が組まれました。予算を通すためには議会での審査が必要となります。しかし、どういった目的で、どのような建物が建てられるのか、という質問に「答えられない」と言われ。そんな状態だったので、当時町会議員だった私をはじめ、議会が予算を修正し建設の話が一旦止まりました。

5月末には町会議員を辞職し、7月の町長選挙に立候補することにしました。当然、学童施設の問題も争点になっていたんですよね。私は、「子育てに力を入れるため、質の高い学童保育を提供したい」「ゼロベースで見直そう」と掲げ当選させていただきました。

―学童施設の問題が、町長選挙の争点にもなっていたんですね。では、森田町長が「子育てに力を入れたい」と考える理由を教えてください。

森田(町長):町長に当選した当時、「地方創生」が世間で注目され始めた頃でした。少子高齢化や消滅都市といった言葉が日本各地の地方自治体で問題視されていて。三宅町も例外ではない、少子化対策に手を打たなければならない、と危機感を持っていました。

また、三宅町を含む関西地域において、児童虐待による事件が耳に入ってくるようになっていたんですよね。子どもたちの命と人権を守りたい、子どもたちが安心して暮らし成長できる社会をつくりたい、と思うようになりました。

―「子ども」が町づくりの基礎にあったんですね。

森田(町長):そうですね。さらに児童虐待について調べる中で、親も虐待をやりたくてやっているわけではない、親も苦しんでいる、ということに気づいたんです。子育て施策は、子どもへの支援だけではなく、親も助けられる支援が必要だと思いました。


住民一人ひとりの「点」が「線」となり、「面」となって行なうまちづくり

―子どもたちが安心して暮らせる社会の実現のためには、子どもと親、両方への支援が大切だと考えられたんですね。そこから、子ども向けの施設だけでなく公民館などの機能も兼ね合わせた「複合施設」を建てることになったのはなぜでしょう?

森田(町長):学童施設の新設の話が上がったとき、もう一つの問題が浮上してきました。役場庁舎の向かい側に、築50年ほどの公民館があり、バリアフリー対応が全くできておらず問題になっていたんです。町のイベントで利用されるにも関わらず、誰でも利用できる施設にはなっていませんでした。階段しかないので高齢者が2階まで上がれない、お手洗いには段差があり車いすの方は使用できないなど、問題は山積みでした。

いずれ公民館も建て替えなければならないのだから、学童施設と公民館の機能を兼ね合わせ、子どもも大人も、高齢者も、多世代が交流できる施設にしたらどうか。二つの施設を一つにした複合施設を建てようと、プロジェクトがスタートしました。

―「多世代交流」というキーワードはどこから生まれたものなのでしょうか?

森田(町長):公民館の現状を調査していくと、想像以上に利用者が多く、予約を取りづらいという状況にありました。また、利用者の多くは高齢者で。三宅町には元気な高齢者が多い、ということも分かりましたね。

しかし、イベントなどで公民館を利用する高齢者たちは、口を揃えて「自分たちのあとに続けていく人がいない、仲間が増えない」と漏らしていました。おそらく原因は、何かイベントを開催しても、仲間うちで完結しまっており、活動が外に見えていないこと。素晴らしい取り組みをしているのだから、誰にでも見えるようにしていこう、と思いました。

三宅町の一人ひとりは、良い「点」なんです。でもそれがバラバラで、「線」になっていない。大人も子どもも、多世代が繋がり「線」となって、広がり「面」となれば、元気なまちをつくることができる。小さい町だからこそ、みんなの顔が見えるようにしたい、と思いました。

多世代間で交流が生まれ、子どもたちを三宅町全体で育てていく。子どもたちが安心して暮らせる社会の実現にも繋げていきたいですね。

MiiMo(みぃも)イメージ図
公民館、図書室、学童保育、子育て支援施設など複数の施設の機能を兼ね合わせた「複合施設」

画像2


住民、民間、行政が一体となってつくるMiiMo

―多世代交流を実現するために、どういった機能を計画していますか?

森田(町長):いろいろな世代がMiiMoに訪れ、相互理解が促進され、新たな交流が生まれるような機能を考えています。

例えば、販売用キッチンの役割をもったシェアキッチンやフリーキッチンを設置することにしました。「食」を通した体験や交流の場となり、新たな賑わいをつくり出したい、と考えています。三宅町は飲食店が少なく、人が集まる場所がない、という問題がありました。飲食業の方だけではなく、飲食で起業を考えている人や自分の手料理を誰かに食べてもらいたいと考えている人に、ぜひ利用してほしいですね。

施設は建てて終わり、というわけではなく、どう運営していくか、が最も大切。MiiMoは、ルール作りから住民に入ってもらって、行政と一体となり進めています。公共施設の運営を行政が主体で行なうと、ルールはどうしても堅苦しく使い勝手が悪いものになってしまい、使われなくなりがちなんですよね。

―行政は守りに強い部分がありますよね。

森田(町長):私自身も自由に意見を述べています。「17時以降はアルコール飲料の持ち込み可にしてほしい」「夏にはビアガーデンを開いてほしい」「図書室には漫画を置いてほしい」などですね(笑)。

―町長、とても自由ですね(笑)。MiiMoの運営は今後どのように進めていくイメージをお持ちなのでしょうか?MiiMoのコミュニティマネージャー募集の採用プロジェクトを、複業メンバーと一緒に推進している、と聞きました。

森田(町長):まちづくりの会社をつくりたい、と思っているんです。MiiMoの運営を担う会社ですね。そして住民と行政と連携することによって、新たなサービスの提供ができるのではないか、と考えています。

行政は稼ぐことが苦手。例えば、空き家の管理はできても、それを活用し流通させ、ビジネスとしてお金を稼ぐことはできません。持続可能なビジネスとして、課題解決を行なえるのは、民間の得意分野だと思っています。官民連携で、新たなサービスを生み出したい。MiiMoの運営を担う会社が、三宅町の「民」のプレイヤーとなり、行政と一緒に町の諸課題の解決に取り組んでいけることを期待しています。

将来的には、住民を雇う、ということにもなるはずです。まちづくりに関わる人が増え、三宅町を好きな人が増える。町にとても良い循環もつくります。

MiiMo(みぃも)の運営方針案
公民館、図書室、学童保育、子育て支援施設など複数の施設の機能を兼ね合わせた「複合施設」

画像1


住民の「やりたい」が、日本一、叶う三宅町へ

―とても面白いアイデアですね!では、町長自身は、三宅町をどんなまちにしていきたいと考えていますか?

森田(町長):町長選の選挙公約にも掲げたのですが、「日本一幸せ度が高い町」にしていきたいですね。

幸せの定義は人それぞれですが、人は、自分のやりたいことが叶ったときに嬉しい、と感じられると思います。なので行政は、住民の「やりたい」を応援して併走する存在になりたいですね。

―夢を持った人が全国から集まるかもしれませんね。

森田(町長):夢を実現させるためのきっかけとしてMiiMoを使ってほしいと思います。三宅町の住民の夢が叶っていけば、「三宅町は夢を叶えられるまちである」と、町外のファンもできるのではないか。三宅町を、日本一、夢を叶えられる場所にしていきたいです。

住民、民間、行政それぞれがそれぞれの力を発揮する。MiiMoが、住民、民間、行政を繋ぐ「ハブ」のような存在になればいいな、と思っています。

―ありがとうございました!「住民の夢が、日本一叶う場所」の実現に向け、MiiMoがその第一歩目を担うことになるんですね。複業プロジェクトメンバーは、住民や行政の皆さんと連携し、三宅町のビジョンをともに追いかけていきたいと思います。

森田(町長):現在、複業プロジェクトに取り組んでいるのも、民間と連携することでまちがどう変化していくのかを感じてみたい、と考えたからでもあります。三宅町のビジョンと、今の行政。そして複業プロジェクト。三つが繋がった感覚です。「実証実験」という形で、皆さんと一緒に進んでいけるのはとても楽しみです。

これまでとは違った発想で課題に立ち向かい、前例にとらわれがちな町政の刷新にも繋げていきたいと考えています。


編集後記
町長自身のまちへの思いの強さを感じることができたインタビューでした!Mimmoが、三宅の人たちの夢を育て実現できる場所になる未来がとても楽しみです。

【話し手=森田浩司(奈良県三宅町町長)・佐野創太(プロジェクトマネージャー・顧問編集者)/執筆=宮武由佳(うどん県出身のライター)/編集=佐野創太/監修=三宅町複業メンバー一同】

【お問い合わせ先】
●三宅町 https://www.town.miyake.lg.jp/
●森田町長Twitter @miyake_cho_cho

【複業メンバー一同】
人事・採用戦略アドバイザー:3名
佐野創太氏(プロジェクトマネージャー) @taishokugaku
ひと・物・組織・新規事業の編集者/退職学の研究者。株式会社オーネットのオウンドメディア『おうね。』編集長、株式会社TRUSTDOCKの採用広報、yup株式会社のサービス編集長、桑原木材株式会社の端材を活用した新商品開発、複業をテーマとした電子書籍の編集長を務めている。退職学の研究者として「セルフ終身雇用」をAbema Primeなどで発表。1児の父であり、Covid19と出産をきっかけに妻の実家の長野と東京の二拠点生活中。

勝村泰久氏 @katsumura1123
音声Techのスタートアップにて、VPoHRとして総務人事領域を管掌しつつ、アライアンスや事業開発も担当。並行して東証一部で人事顧問、HRTechスタートアップでCCO、就活サービスベンチャーで戦略顧問、学校で講師、オンラインサロンを主催など7社で副業中で、パラレルキャリアにチャレンジしている。

安田翔氏 Facebook:https://www.facebook.com/sho.yasuda.98
大手人材会社で法人営業に従事。東京本社で採用・人事に5年間従事したのち、今年4月、大阪の法人営業部への異動をきっかけに奈良へ移住。副業で、奈良の企業と共に地域の人材育成事業の立ち上げにも携わっている。

DXアドバイザー:2名
安倍直希氏 Facebook:https://www.facebook.com/naoki.abe.0128
ベンチャー企業にて事業企画・営業企画・地方創生などの幅広い分野に携わりながら、DXプロジェクトなどにも従事。副業でDXプランナーとして活動中。様々な業界の課題に対して、データサイエンスを使ったDX企画立案を行なっている。

河上泰之氏 Facebook:https://www.facebook.com/yasuyuki.kawakami.5
トヨタ自動車様などの企業のDX支援や、東京商工会議所でDXなどの講師を務める。日本IBM、デロイトなどを経て独立。 IBMではデザイン思考チームの立上げに専門家として従事し、社内講師として数百名を育成。

広報戦略アドバイザー:2名
小林慎一郎氏 Facebook:https://www.facebook.com/shinichiro.kobayashi.378
プロデュースハウスSync Japan代表。渋谷駅街区再開発のマーケティング、NTTグループのコンテンツサービス事業、大手外食チェーンなどのアドバイザーなどに携わる。朝日放送にてテレビ編成から番組制作、新規事業に従事した後、独立。山梨県北杜市と渋谷区との二拠点で活動中。

宮武由佳氏 @udon_miyatake
地方、中小企業向けにデジタルマーケティング支援を展開する企業で、Web広告の運用コンサルティングや、自社採用サイトの編集を兼務。東京本社で、広報PRに1年半ほど従事。副業で、瀬戸内地域の雑誌『せとうちスタイル』やWebメディア『another life.』でインタビューやライティングを行なう。

【メディア掲載】(Webメディアのみ)
・読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/local/nara/news/20201215-OYTNT50028/
・日経ビジネス
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00215/121500008/
・夕刊フジ
https://www.zakzak.co.jp/eco/news/201225/ecn2012250004-n1.html


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?