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前十字靭帯損傷の要因(1)

前十字靭帯損傷の危険因子は、さまざまな研究が報告されている。それらを大きく分類すると、次の4点である。

①下肢関節の不整合
②下肢筋肉郡の機能低下
④固有受容器の機能低下
⑤性差

1)下肢関節の不整合

下肢関節の不整合およびそれに伴う関節の運動障害により直接的・間接的にも膝関節には影響が及ぶ。ランニング、ジャンプ、カッティングといった動作により、地面から足部に伝えら れたエネルギーは足関節から膝関節、股関節と上方へ伝達。

関与する関節の機能が正常であれば、伝達されたエネルギーは筋肉や靭帯、関節包など軟部組織・関節で衝撃が吸収される。しかし関節不整合が原因でその機能が低下している場 合、代償で一部組織に大きな負荷が加わる。

四肢関節の不整合(あるいは骨格の歪み)により、各関節の運動が効率的に行わ れなくなり、局所的・機械的な負荷の増加が発生。筋骨格神経系の疾患の危険を高め、傷害の原因となる。

過剰な負荷が加わっている間や、急激な負荷のベクトルの変化などにより、関節を保護している構造(特に靭帯)には顕微鏡レベルの損傷「微細外傷」が反復して発生。加えて神経知覚機能の変化(機械受容器の損傷に伴う機能低下のこと)が起こり、関節の 不安定性へと発展する。

骨格姿勢のゆがみがある場合、関節周辺にある靭帯には既に過剰な負荷が加 わっていると推測できる。そのため、臨床的にわずかな外的負荷が加わるだけで損傷が起こると考えられる。クライアントの関節、周辺構造の機能的問題を理解するのとは別に、姿勢の歪みといったより広い視点でのアセスメントも重要だ。

体幹前屈位において次の傾向が見られると、前十字靭帯の損傷が発生する報告されている。

・股関節内転位
・大腿骨内旋位
・膝関節20〜30°屈曲位
・脛骨外旋位

またサッカー、フットボール、スキーの選手らにおける前十字靭帯損傷は、脛骨外旋位や膝関節外反位で発生していることが多いとも報告されている。一方バスケットボー ルの選手では、脛骨内旋位における膝関節の過剰伸展が前十字靭帯損傷の原因として多いなど、スポーツの種類によって発生のメカニズムにも差がある。

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