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【解剖学講座】肩の重要性を再確認する3つの話【肩関節を極める】

肩関節は全5種類あると言われ、「肩関節複合体」と表現することもあります。具体的には、胸鎖関節、肩鎖関節、肩甲上腕関節、肩峰下関節、肩甲胸郭関節です。競技やトレーニングのパフォーマンスを高める上で、肩関節の可動性・安定性を高めることが重要だというのは、もはや周知の事実でしょう。それでも、やはり肩関節の重要性がちゃんと伝わっていないなと思うシーンが少なくありません。

今回は、そんな肩のお話をたっぷりしたいなと思います。

①肩甲胸郭関節とベンチプレスの大切な関係

肩甲胸郭関節は、肩甲骨と肋骨体(肋骨結節よりも前外側方の残りの長い骨部)の滑走する部分に位置します。位置で言うと、肩関節の“中枢部”にあるともいえる存在です。肩関節の安定性を担う存在として、回旋筋腱板(ローテーターカフ)がよく知られていますが、肩甲胸郭関節はこれらの腱板の「基盤」ともいえる関節です。

そのため、肩甲胸郭関節の安定性が、肩関節や上腕の動き、筋出力に超大きく影響しています。また、肩甲胸郭関節はこうした肩関節の安定性向上に加え、上腕と肩甲骨の連動性にも関係します。トレーニー側の視点で考えると、「肩甲胸郭関節はプッシュアップやベンチプレスの可動域に影響する」とお伝えすれば、その重要性がかなり伝わるのではないでしょうか。

このnoteでもたびたび紹介している、肩関節のインピンジメント症候群をはじめとした肩関節痛があるという人に対しても、肩甲胸郭関節の可動性がよくなるだけで、インピンジメントや肩関節痛の症状が改善されることがあります。

インピンジメント症候群というのは、上腕骨が通常よりも挙上しており、上腕骨と肩峰の間にある腱板や潤滑包などが挟み込まれてしまうという刺激によって、炎症や出血を起こした結果痛みにつながるというものです。なぜそんな状況が起こってしまうかというと、肩甲骨周りの関節の動きが悪くなっているから。周辺の関節の動きが悪い分、上腕骨が過剰に動こうとする代償が起こることで、インピンジメント症候群や肩関節痛につながってしまうわけです。

となれば、正常な可動域を発揮できていない部分に適切なアプローチを図ることで、可動域が過剰に発揮されている上腕骨の負担が軽減され、結果として痛みもなくなっていくということになります。

トレーニング指導の現場においても、「肩が痛い」「五十肩(四十肩)です」という人は意外と多いです。そんなクライアントの、肩周辺の不安を解消できるようなアプローチができるよう、ぜひ今回のお話を参考にしてみてください。

肩甲胸郭関節は「解剖学的関節ではない」

一般に、「肩甲胸郭関節は機能的・生物学的関節であって解剖学的関節ではない」と言われています。なんのこっちゃな話ですが、簡単に説明していくと、解剖学的関節とは「関節包、関節軟骨が存在し、その中に滑液が含まれている」といった、解剖学的に「これは関節である」という定義を満たした関節のことです。この定義で見ていくと、肩甲胸郭関節は解剖学的関節の条件を満たしていないということになります。

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