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初めて「先生」をすることになった私が『Nizi Project』のJ.Y.Parkから学んだこと

このオーディションはある特定の目的にあわせて
そこに合う人を探すだけで
皆さんが特別かどうかとは全く関係ありません
1人1人が特別でなかったら
生まれて来なかったはずです

オーディションプロジェクト『Nizi Project』で、圧倒的な言葉の力で多くの人の心を動かした、プロデューサーのJ.Y.Park。

「人は生まれながらにしてみな特別である」というメッセージは、Nizi Projectで繰り返し伝えられた言葉のひとつである。

そして、Part2のミッション3でユナ・ミイヒ・アカリ・マヤによって披露された、TWICE『Feel Special』(わたしはこれがNizi Projectの中でのベストパフォーマンスだと思っていて、たぶんこれだけでnoteが一本書ける)。この曲もタイトルに「Special(特別)」という言葉が入っているが、この「特別」という言葉そのものが、J.Y.Parkにとって、それこそ特別なものなのではないかと思っている。

セルフカバーのパフォーマンスを見れば、彼にとって『Feel Special』がどれだけ大切な曲であるかが痛いほど伝わってくる。

わたしもNizi Projectを通してJ.Y.Parkの言葉に大きく心を動かされた一人であるが、わたしにとって彼の言葉は、ただの視聴者としてではない、少し特別な意味を持った。

なぜなら、ちょうど人生のターニングポイントになるような出来事と重なったからだ。

先日、オンライン学習サービスのSchooで『心を動かすUXライティング』という授業を担当させていただいた。

初めてたくさんの人の前で、先生として登壇することになったのだ。

その準備を必死で頑張っている時に、偶然にもわたしが見始めたのが、Nizi Projectだった。

世の中のあらゆるコンテンツは、自身の置かれている状況によって、その捉え方は全く異なる。コンテンツを見るということは、コンテンツを通して、自分を見るということだ。わたしがNizi Projectを見たのは、申し分ないぐらい最高のタイミングだった。

オンラインの講座で先生をする、ということが、世の中的にどれほど大きなことなのかはわからないのだけれど、少なくとも、わたしにとっては、とても、とても大きな意味を持っていた。

わたしがコピーライターに憧れてまず初めに通ったのが、宣伝会議のコピーライター養成講座だ。そこでは毎週現役で活躍しているコピーライターが、先生としてわたしたちにたくさんのことを教えてくれた。

その後も、わたしはこうした講座やセミナーに通うのがとても好きだった。新しいことを学ぶことが好きだし、自分の知らない話を聞くことも好きだった。基本的にミーハーな性格なので、それこそ芸能人を見に行くような感覚で、興味があればどんどん参加するようにしていた。ありがたいことに、海外で行われた広告祭にも参加させていただいた。

そうして10年ほど講座やセミナーに参加すると、当然ある想いが生まれる。

自分もいつか、教える側に立てるだろうか。

生徒や参加者として椅子に座っているのではなく、ステージのある”向こう側”に行きたい。

それがずっと憧れていたことであり、自分のキャリアの中で「いつかできたらいいな」と思っていたことのひとつだった。

そして、その夢が、ついに叶う時がきたのだ。

それはわたしにとって本当にうれしい出来事だったが、その反面、プレッシャーや不安もどんどん大きくなっていった。コロナの影響もあり、他の娯楽(例えばアイドル)などに意識を分散できなかったのも大きい。

そんな時に偶然見たのが、Nizi Projectだった。

そしてわたしは、J.Y.Parkの言葉に救われた。

初めて「先生」として人前に立つことになったわたしが、J.Y.Parkから学んだこと。

それは、本番で最高のパフォーマンスをする方法

そしてもうひとつ、選ばれなかった人に寄り添うことの大切さ

この2つだった。

本番で最高のパフォーマンスをする方法

僕がアドバイスしたことは、パフォーマンスする時だけはすべて忘れて、思い切り楽しんでください。

これは、J.Y.Parkが参加者たちに繰り返し伝えていた言葉のひとつであり、今回わたしが授業の準備をする上で、大きな支えになった言葉のひとつである。

この言葉を最も象徴していた場面が、冒頭でも紹介したTWICE『Feel Special』のパフォーマンスを終えた後のミイヒの言葉だ。

オーディション開始時から圧倒的な才能でトップを走り続けてきた彼女が、初めてスランプを経験する。パフォーマンスを終えた後、J.Y.Parkに理由を問われて彼女はこう答える。

ミイヒ「今日のステージもちょっと、指摘されたこととか、いろいろ考えすぎてしまったと思うし、心から楽しめなかったんじゃないかと思います」

まさに「アドバイス忘れて楽しむ」の真逆の状態であったことを自覚していて、彼の言葉がミイヒの中で正確に捉えられていることがよくわかる。

わたしはJ.Y.Parkのこの言葉を、どれだけ準備をしっかりとできているか、が本番で最高のパフォーマンスをする方法なのだと解釈した。納得のいくまで努力し準備をしっかりと重ねれば、あとは自信をもってすべてを忘れて楽しめるのではないかと思ったのだ。

それは自分の授業に置き換えると、何も考えなくても、スライドを見ればすらすら言葉が出てくる状態までもっていく、ということだった。

そこでわたしがやったのがこれだ。

第1回の授業のまとめとして公開したこのnote。

実は、第1回の授業を行う前に書いたものだったのだ。

就活や転職時の面接、広告代理店時代の大きいプレゼンなど、自分が話をするときに必ずやっていたのが、まず自分の話すことを書き起こすことだった。これの効果は抜群で、たった一度書くだけで、本当にすらすら話せるようになるのだ。

その経験があったので、わたしは授業においても、自分の話したいことをまずテキストにすることにした。そしてどうせなら後で公開できるようにと、noteの下書きに書くことにしたのだ。

この作業は、自分の不安やプレッシャーを打ち消すには十分過ぎる効果があった。J.Y.Parkの言葉の通り、本番ではすべてを忘れて楽しむことができたのだ。

彼の言葉のおかげで、わたしは第1回の授業で自分の力をすべて発揮することができたのだった。

選ばれなかった人に寄り添うことの大切さ

Nizi Projectには数えきれない程の名シーンがあるが、その中でも絶対に譲れないのが、最終メンバーが発表された時のJ.Y.Parkの行動だ。

12人の候補者から、最終メンバーの9人が発表された直後。

まずJ.Y.Parkが駆け寄ったのは、選ばれた9人ではなく、選ばれなかったユナ・リリア・アカリの3人のところだった。

わたしはこの行動に本当に感銘をうけ、この一瞬に彼のすべてが詰まっているとさえ思った。

その行動も、まさに彼の言葉を体現したものであった。冒頭で紹介したこの言葉だ。

このオーディションはある特定の目的にあわせて
そこに合う人を探すだけで
皆さんが特別かどうかとは全く関係ありません

選ばれなかったあなたたちも特別である。そのことを彼女たちに伝えるには、十分すぎる行動だった。

そしてこの言葉も、今回わたしが授業を考える上で、大きな気付きを与えてくれた言葉のひとつだった。

授業の中で、受講生の皆さんに課題を提出してもらったからだ。

ありがたいことに、とても多くの人に課題を提出していただいた。しかし、授業の時間の関係もあり、どうしても選ばれる人と選ばれない人が出てくるのだ。

このことについては、自分の体験としても強い想いがあった。

新卒で入った広告代理店に、わたしは営業として入社した。その時に受けた新入社員研修で、クリエイティブの課題があったのだ。学生時代にコピーライター養成講座に通っていたこともあり、自信もあったのだが、その自信はもろくも崩れ去ることになる。選ばれたのが、他の同期の作品だったからだ。その時、研修を担当してくれた先輩が、その同期に対してこう言った。

「うちは異動でコピーライターにもなれるから、あなたはそういう道もあるかもしれない」

先輩は本当に深い意味もなく、何気なくこの言葉を言っただけだと思うのだが、自分以外の誰かにこの言葉が向けられたことに、わたしは10年以上だった今でも覚えているぐらい落ち込んだのだった(その後なんとかコピーライターになれたのだけど)。

この件に限らず、コピーライターになる、ということは、選ばれないこととの戦いだったと思う。コピーライター養成講座でも、自分のコピーが選ばれないことばかりだった。ただ、その悔しさで成長できたことも事実であり、そういうものだと受け入れていた。

しかし、J.Y.Parkではそうではなかった。

選ばれなかった側にも、しっかりと寄り添っていたのだ。

あそこでJ.Y.Parkがユナ・リリア・アカリの3人に駆け寄ったことで、彼女たち3人の未来は大きく変わったのではないかと、わたしは思っている。

わたしはこのことを、自分の授業でもなんとか言葉にしたいと思ったのだ。

せっかくわたしの授業を受けてUXライティングに興味をもってくれたのに、課題が選ばれなかったからという理由で、UXライティングへの興味を失ってもらいたくなかったのだ。

そんな想いでつくったのがこのスライドだ。

たいへんよくできました

誰に強制されたわけでもなく、自発的に課題を提出するというのは、本当に価値のあることだ。J.Y.Parkも「その人がどれだけ成長したか」を常に評価基準としていたが、その基準で見ても、出さなかった人よりも、出した人のほうが、確実に成長しているのは間違いない。今回の「わたし」が選んだ作品も、あくまで「わたし」の評価基準であり、まさにその人が特別かどうかとは全く無関係なのである。

ということを授業で伝えたかったのだが、正直どこまで伝えられたかはわからない。ただ、そのことにわたし自身が気付けただけでも、J.Y.Parkの言葉を知ることができてよかったと思うのだ。

自分が特別だと信じて、特別だというのを"世界に証明してみせる"

最後に。Nizi Projectで語られたJ.Y.Parkの言葉の中で、わたしが最も好きな言葉を紹介したい。

ミイヒがソロで『Nobody』を披露した際、あまりに凄すぎて笑うしかなったJ.Y.Parkだが、彼女のパフォーマンスを見る前にこう言っている。

自分が特別だと信じて、特別だというのを"世界に証明してみせる"。こういう心構えが必要です。ミイヒさんにその心が見えました。

何かを書く。誰かに伝える。わたしが「先生」として話している内容も、きっと誰かが「自分が特別だと世界に証明する」ための手段のひとつなのではないかと思う。

そのお手伝いが少しでもできるように、また誰かに話す機会があれば、全力を尽くしたい。

それが、わたしがJ.Y.Park、そしてNizi Projectに参加したすべての少女たちから学んだことだから。

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