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ライターへの愛とエールが詰まった書籍 #書く仕事がしたい はバイブルの1冊

ライター関連の本はもうお腹いっぱい。

そう思いながら、この本は読まなければ。いや読んでみたい。最初は興味本位から自分を突き動かす何かがあって、この書籍を手に取った。

何気なく読み始めた「書く仕事がしたい」は、ヘアライターでもある佐藤友美さんの著書。読み進めていくうちに、本にかぶりつくように「早く続きが読みたい」が加速する。なんだろう?この不思議な感覚は。吸い込まれるように一気に読み、あっという間に読了。ラストに差し掛かると、熱を帯びた感動が全身に降り注いでいた。

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沖縄移住後、ライターになり、現在はライター歴8年目。ときどきライター講座を開催している名目で、文章術やライティングの書籍を20冊ほど読んだ経験から、ここ最近は文章術の本から遠ざかっていた。正直な話、全然頭に入ってこないというか、固い文章を敬遠している自分がいたのだろう。

先月「三行で撃つ」を読み終えて、これで当分、ライター関連の本は打ち止めだな。そう一度は思ったものの、どこから湧いてきたのか、この本は読まなければいけない(気がする)。いや、なぜか読みたい。そんな衝動に駆られて速攻ポチっていた。


「書く仕事がしたい」という本が届いた日。

正体不明の期待と興奮を感じて、その夜からすぐに読み始める。あれよあれよと150ページほど進んで、読まされてる感がなく、義務感や焦燥感からでもなく、自ら進んで”わくわく”を浴びに行くような感覚だった。純粋に"楽しい”と思える好奇心が、自分を突き動かす。その理由を考えたところ、いくつか、これだ!と思える仕掛けが浮上して、どうやらこの書籍は単なるノウハウ本ではなく、佐藤友美さんのライター人生、ライターとしての生き様が描かれた物語…… なのだと悟ることになる。

この書籍の核を探りたくて、もう一度読み返す。2回目の読破。なんなら疑似体験もしようかと。だから今、このレビューを書いている。



理解しやすい構成と共感する「ライターあるある」

佐藤友美さんの経験を過去から現在まで描きつつ、第5章にわかれたタイトルは手順書のような構成だった。各章を要約すると ❶ライターという職業 ❷準備編 ❸実践編 ❹マインド編 ❺これからのこと。書籍の順番どおりに実践すれば、書ける&いいライターになれる(気がする)し、特に「CHARTER4」のマインド編は、逆引きとして利用すると良さそう。


<書籍の各章のタイトル>
CHAPTER1「書く仕事を知りたい」
CHAPTER2「デビューするまでのこと」
CHAPTER3「書く仕事に必要な技術」
CHAPTER4「書く仕事に必要なマインド」
CHAPTER5「とどまらずに伸びていくこと」

気になる部分と名言に付箋を貼ったら、絞りに絞って軽く80枚。いろんな立場からご自身の経験を綴られていて、ライターの立場やフリーランスの立場とか、業務であれば ❶ヘアライター ❷ブックライター ❸インタビューなど。でも、すべての話が「ライターという仕事」に通じていて、見えない糸でしっかり繋がっている。


具体的なノウハウが語られたと思えば、過去の体験談が飛び出し、ライターあるあるの面白さが木霊する。各章の始まりに書かれた「コラム」がまた面白く、その光景が映像として浮かび、思わず笑い、そして身が引き締まる。

突如、思いがけない場所からボールを放り投げられて、驚く間もなく「まずは疑似体験しなさい」と空からお告げが降ってきた。ライターとして活動するために必要なこと。再現性が高く、疑似体験しやすく、未来に不安を抱く若手ライターへのエールになる1冊だと思う。


読む人によっては、痛い…痛い…心が痛い。なんて心境になり得るけれど、佐藤友美さんの文章(語り口)が優しくオブラートに包み込んでいく。

本書に何度も出てくる「あくまでも私の体験」「これが答えじゃない」「誰にでも合うわけじゃない」といったニュアンスの言葉に、この書籍をすべて鵜呑みにしないでほしいという著者の思いを含みつつ、この本をヒントに「自分で考えて、行動してほしい」そんな願いを受け取った気がした。


大成も失敗も赤裸々に語られ、好奇心が倍増する

この書籍には、嘘がない。と思うほど、著者の活動とその背景、考え抜いた戦術や実体験がリアルに赤裸々に語られて、途中、驚きがジャブジャブと湧き出して、次は何が飛び出す? とドキドキしながら読んでいた。

ライター仲間の体験談や師匠の名言も飛び出して、多くの人の経験値が混ざり合う多角的な思考が視野を広げてくれる。笑いも悲鳴も、苦悩も安らぎも、そして情熱も……。いろんな感情の自分に出会えてオロオロ……わくわく……。ライター経験者が読んだら痛快だと思う。既視感があったり、驚きの視点が参考になったり、とにかく頷ける。

ありのままを素直に語ったリアルな話が、こんなに心に浸透するとは思わず、文章で何かを伝えるライターにとって、大切な視点だと気づかされた。こんな軽快なライター向けの本が過去にあっただろうか。著者の思考や話術(文章)に引き込まれ、いつの間にか物語の住人になっている。


そして、失敗談からの気づき。

ベテランでも失敗するんだ…!? を前提に考えると、自分なんて失敗して当たり前だなと思えてくる。若手や経験が浅いライターなら失敗を恐れるよりも行動して経験値を高めるほうが、未来の自分にどれだけ親切だろう。

失敗するのは当たり前。だって人間だもの。

迷路から抜け出して、新たな道を切り拓く。背中を押してくれる。そんな「ライターの指南書」であることは間違いないでしょう。


ライターなら真似したくなる「佐藤友美流の営業と企画」

人一倍深く思考した痕跡と、失敗から身についた論理的思考。佐藤友美さんの営業方法、企画の考え方や持ち込み方も赤裸々に語られて、驚愕とリスペクトが混在した深いため息が出た。

そんな活動をしてるんだ。そんなやり方があるんだ。いろんな感想が膨らんで本から一瞬だけ目線を逸らす。泥臭く緻密に行動した先に、自分のやりたいことを実現できる未来があるのだと、改めて初心に立ち返る。

徹底したリサーチにも度肝を抜くような努力が滲み出ていて、これらの行動は誰でも真似できることではない。けれども、その1つの方法を知識として得たことは、今後視野を広げるキッカケになり得る。


佐藤友美さんがライター講座で毎回行う内容も新鮮だった。最初と最後に受講生に必ず質問すること、課題で行うこと。どれも思考深めに取り組む内容で、論理的に大正解!と頷く一方で、真摯に文章と向き合い、ライターとして働く意志や意欲が強くなければ、レベル高く時間を要するこの勉強法は継続するのが難しい。だから、受講生もすごいなと感心したり。お気に入りの雑誌を買って、さっそく自分も真似したい。


そして、究極の変化球が放り込まれた

フリーで活動するなら「仕事を失い続けるのが、ライター人生」だと。これには参った。納得しすぎたからだ。フリーランスであれば、自分で仕事を見つける嗅覚も必要だったりする。そしていつか案件が終了する時期が来る。

仕事は年々入れ替わるのが当たり前。

これを前提に考えると、営業なり、自分で仕事をつくるなり、行動を起こすことが当たり前だと飲み込める。必ずいつかは失客する。だから新規の仕事をゲットする。タイミングよく循環させるには、常に【種まき】が必要だという。過去の失敗が今に生きて、過去の行動が1年後の自分をつくる。そんな根本的なことに否が応でも気づくでしょう。


最後にデメリットを語るなら、ひとつだけ。

この本は、ライターにとって「時間泥棒な書籍」だということ。それは、何度も読みたくなるから。疑似体験して、また読んで。悩んだら再び読み返す。まさに、この時間泥棒め(褒めている)。特に、CHAPTER5のラストが熱かった。一気に畳み掛けてくるエンディングに躍動感がこみあげ、映画鑑賞後の余韻に包まれる、あの感覚に似ていた。たぶんそれは、この書籍が著者・佐藤友美さんの心情、生き様が憑依した「ライターとしての物語」だと感じたから。

真摯に文章と向き合い、真剣に仕事に取り組んでいるライターたちへの愛とエールが詰まった書籍。読んで肩の荷が降りる人、逆に身につまされる人。考え方や環境によって捉え方は変わるけれど、ライターにとってバイブルになる1冊だと思う。


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