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ピックアップライブレポート GIGANOISE spinoff vol.2

※これまでPast Worksに掲載していたライブレポートをピックアップしてお届けします。

2019年2月15日 ギガノイズ・スピンオフ @ 秋葉原・グッドマン
出演:灰野敬二, 美川俊治, doravideo, Miya

灰野敬二さんのお誘いにより、
doravideo(一楽儀光)さんの「ギガノイズ・スピンオフ」に出演 。
重鎮・美川俊治さんを含む爆音トリオ、純米大吟醸の如きイイとこ取りに、
いきなりフルートのMiyaを投入するというワイルドカード。
演奏は全編、即興です。

灰野敬二 (エレキギター/ポリゴノーラetc)
美川俊治(モジュラー)
doravideo(モジュラーetc)
Miya(フルートetc)

モジュラーとはモジュラーシンセサイザーの略。
シンセサイザーには鍵盤楽器型、弦楽器型、
珍しいところで吹奏楽器型などがありますが、
とくに音階をフィーチャーしない場合、
従来の楽器らしい見た目ではなく、
卓上にエフェクタを沢山結合させたような見た目になります。
音の出るおもちゃを結合したり、光が出る演出があったり、
奏者によって演奏スタイルも見た目も様々で実に面白い楽器です。

特にdoravideoさんのモジュラーは、
レーザー光線とLEDが音に高度に同期する独自のもので、
それをコントロールするワイヤレスハンドセットを振り回すときの、
独特な動きも相俟って、それはそれはカッコいいものです。
しかし今回、doravideoさんは光を封印。
doravideoさんのブログも参照⬇
https://ameblo.jp/doravideo/entry-12440543564.html

今や様々なジャンルに持ち込まれているモジュラーですが、
特に爆音を奏でるモジュリスト各位とはMiyaは初顔合わせ。
この組み合わせは灰野さんの深謀遠慮があってのことですが、
「大丈夫なのか?」と心配する方や、無茶さ加減に半ば呆れる方など、
音楽仲間の中でも反応は様々(笑)。
とはいえ百戦錬磨のお三方。
Miyaは大船に乗ったつもりでお邪魔しました。

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生楽器の音は繊細である反面、無遠慮にマイクを通すと、
案外、攻撃的な音を発していたりします。
Miyaがメインで愛用しているビンテージのヘインズ、
ロバート・ディック謹製の飛道具「グリッサンド・ヘッドジョイント」、
そしてMiyaの新展開、能管も初登場。
いろいろ持ち込んで音を出してみたら、
使い慣れたヘインズの音がやっぱり一番凄味がある。
複雑な倍音を纏って飛び出す切れ味鋭い音には、
鬼気迫るものがあり、
ピークではちょっと耳に危険な感じがします。

しかし毒が薬になることもあるわけで、耳障りな音だって使いよう。
ピーク付近の鬼気迫る音をカットしすぎてしまうと、
倍音まで目減りして精気の無い音になってしまう。
そこは笑顔が爽やかで超絶優秀な秋葉原グッドマンのPAスタッフ氏が、
絶妙にバランスしてくれました。何て素晴らしい環境!!
これで全力で吹きまくることが出来る!

それにしても一楽さん、美川さん、灰野さんの音を聴くと、
「爆音=不快」ではないというのがわかります。
よく考えれば当たり前なことですが、
小さな音でも耳障りなものがあるように、
優れた爆音ミュージシャン各位の演奏からは、
聴覚にとって危険な音は殆ど聴こえてきません。
そういう方たちは小さな音で演奏しても当然素晴らしい。
リスナーはクリアな音で安心して爆音にのめり込めます。

Miyaはソロ、doravideoさんとのデュオ、
灰野さんとのデュオ、全員での演奏を披露。
クラブ初登場のMiyaのいきなりのソロは、
フロアの観衆に期待をもって迎えられ、
ふたつのデュオを経るごとに、
驚きと興奮に変わってゆきました。

doravideoさんはMiyaとのデュオでモジュラーに加えフロアタムを単独で使用。
生のドラムの響きが、モジュラーの作り出す幽玄な音に、
さらに広がりを与えます。
一音ごとゲシュタルトに皹が入り、
紺碧の宇宙に意識の断片が次々に引かれていく感覚。

美川さんとdoravideoさん、美川さんと灰野さん、
手練同士の演奏、やはり大迫力。
美川さんの音色やアイディアの豊かさにMiyaもホレボレ。
今度はぜひデュオでも共演したい!

灰野さんはMiyaとのデュオでスネアドラム(ブラシで)を単独で使用。
「背後に気配を感じて」と灰野さん。
黄金の如きその音色。
モジュラー決戦の合間のアコースティックデュオが、
地味なわけは勿論ありません。
こんな派手な気配を感じたら振り返らずにはいられない(笑)。
しかも笛まで繰り出した灰野さんでした!
やはり笛・太鼓は黄金のコンビですね。

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最後は全員で演奏。
そろそろ~と始まりましたが、
最後はやっぱり花火大会に!どっひゃー!たのしー!
モジュラー二台が、エレキギターが、爆音でほえるほえる!
PA氏もやっちまえとばかりにフルートの音量をガンガン上げる!
灰野さんのエレキギターは、エフェクタのどれかを踏むと、
神獣の咆哮の如き音を奏でます(天国が見えるやつね)。
2017年・サンヘドリン参加のときに灰野さんが、
「次は歪み解禁だね」と仰っていたのですが、
いきなりフルボリュームでの解禁と相成りました。
ドグアコォォォ―ンギュオモモモモモバチバチバチ
グアアアアアアアアーンヒュロロロロロ!
これだけの音のビッグバンの中でフルートが存在感を発揮できるのは、
ひとえに共演者各位、PAスタッフの、
ミュージシャンシップのお陰でもあります。
アンサンブルってこういうことだよな、という素朴な幸せを、
ドグアコォォォ―ンギュオモモモモモバチバチバチ
グアアアアアアアアーンヒュロロロロロ!
…の中に感じることが出来る、
気分爽快な新体験になりました。
オーディエンスからもやんやのコメント多数!

グッドマンのお客様は音楽を愛する人ばかりですが、
一応、Miyaにとっては、
クラブという大音量の環境への初挑戦でした。
これにはロンドンの仲間達との密な即興演奏経験と、
まもなく40回を数える喫茶茶会記での即興ソロシリーズ、
「南無観」の継続が大きな力になりました。
「南無観」では暗闇や呼吸法等で集中できる環境をつくり、
最大20分ほどのフルートソロ即興を数本聴いて頂いています。
絶対的音量は違えど、聴覚を開く以上、刺激の強さは同等。
そこで心地よく過ごしてもらうため、
4回の長いソロが全て新鮮なものであるよう、
様々な音づくり、場づくりに全神経を集中させています。

「ギガノイズ・スピンオフ」は「南無観」の成果が、
4人の最高のミュージシャンシップを通して、
爆音のステージにまで大きく実ったライブでした。
灰野さん、一楽さん、美川さん、有り難うございました。
ぜひまたご一緒させて下さい!!

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