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トランペット

私、トランペットと間違えられたことあるんですよ


当時、お笑いをやりながら居酒屋バイトしててそこにいたベーシストに

『良かったら僕が出るライブでネタやりませんか?』

と誘われたので安請け合いすることに

所属事務所では1分しかネタが出来なかったので持ち時間8分は魅力的だった

当日、ガチガチの音楽をやる箱
ライブハウス
地下で、黒くて、暗い


入り口で主催者のラッパーに挨拶される

『芸人さん、マジリスペクトっす!
打ち上げで"すべらない話"やりましょう』

私はイヤな予感がした

演者パスをズボンの太ももに貼る

なぜ太ももに貼ったのか

空気に飲まれていたのかもしれない


ネタを披露する直前の舞台袖
なぜか主催のラッパーが
私より先に客の前へ


ラッパー『オラ!お前ら盛り上がってるか〜!!』

観衆たち『ウォィ!ヨイショー!!』

・・ん?

『今日はオレがリスペクトしてる芸人さん呼んでっから!オラ!後ろで見てるヤツら!
もっと前に来いよ!アゲてけ、アゲてけ!』


観衆たち『ザワザワザワ』

め、めちゃくちゃ煽ってるやん・・

これ、偏差値低い男子校の文化祭か

『オラ!もっと声出せよ!今から芸人出てくんだぞ!舐められるぞ!ウォィ!』

観衆たち『うぉぉぉぉぉ!!!!』

袖に戻ってくるラッパー

『バッチリっす♪』

・・・何が??

私は恐る恐る舞台に出て行くと
大歓声が上がる
観衆たちは音楽のライブハウスにある
舞台に上がれないようにするデカいホチキスの針みたいな柵に腕を乗せて
こっちを見る

目がキラキラしている

これは少年の目だ

まるで黒人少年が欲しい楽器をガラスケース越しに眺めるような

うわ、これ私トランペットだと思われてる
・・

用意したネタは
同期の芸人も首を傾げる
シュールなフリップネタだった

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