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日本政策金融公庫「新型コロナウイルス感染症特別貸付」の申し込み手順と留意点【7/10更新】

先日、日本政策金融公庫が現在実施している「新型コロナウイルス感染症特別貸付」の申し込みが完了しました(7月10日追記:申し込みから約3ヶ月で融資の借入が完了しました)

以前、日本政策金融公庫から融資を受けていたこともあって、NPO関係者やスタートアップ経営者より個別に相談をいただいており、私自身今回の申し込みで気になったことも含めて、申し込み手続きにかかる各種情報をまとめましたので記事にします。

少しでも参考になれば本当に嬉しいです。

補足:私は融資の専門家ではなく、これから書くことは、日本政策金融公庫のWEBサイトから引用した情報、公庫ご担当者からヒアリングした内容、そして私自身の実体験になる点、どうかご了承ください。もし情報が不十分であったり、説明が分かりくいと感じた方は、noteのコメントやTwitterでメッセージをいただければ嬉しいです。1人でも多くの方に、本当に必要な情報をお届けできるよう、更新履歴を残しながら随時加筆修正してまいります。
(7月10日追記:申し込みが完了してから融資借入が完了するまでの流れを追記しました)

0.「新型コロナウイルス感染症特別貸付」の要点まとめ

本融資プログラムの申請を検討する上で、特に押さえておくべき7点をまとめます。

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① 最大8,000万円の超低金利融資(4,000万円までなら実質無利子)
② 15年返済(5年以内なら据え置きも可)の無担保融資
③ 1回目の融資申請でも「経営者保証免除特例制度」が利用可能
④ 申し込みに必要な資料は1〜2日程度で用意可能
⑤ 融資交渉の追加資料は原則不要(過去の決算資料から機械的に判断)
⑥ 申し込みから融資交渉まで全て非接触(郵送&電話)で実施可能
⑦ 申し込みから貸付までに2ヶ月〜3ヶ月程度かかる

1.「新型コロナウイルス感染症特別貸付」とは

新型コロナウイルス感染症の影響により、一時的に業況悪化を来している個人・法人(NPO法人を含む)を対象とした融資プログラムです。最近1ヶ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少している事業者を対象にしており、最大8000万円の融資を低金利(4000万円なら実質無利子)で、15年返済(5年以内なら据え置きも可)、無担保で融資を受けることができます。詳細は以下WEBサイトをご確認ください。

和2年度第2次補正予算を受け、令和2年7月1日から、小規模事業者向けの融資限度額が6,000 万円から8,000 万円に拡充されました。また、低減利率の限度額も3,000 万円から 4,000 万円に拡充されました。

2.「新型コロナウイルス感染症特別貸付」申し込みに必要な提出書類

こちらの申し込み手続き(PDFデータ)に書かれている通り、はじめて日本政策金融公庫で取引されている事業者であれば、以下6種類の書類が必要になりますが、1〜2日程度で用意可能な書類になります。また、以下の資料はあくまで申し込み時に必要な資料であり、申し込み後の面談時には資金の使い道や事業の進捗状況を説明する補足資料が必要になりますが、後述の通り申し込み件数が日に日に増えている状況を踏まえると、早めに申し込み手続きを進めることをお勧めします。

【申し込みに必要な書類6点】
借入申込書(記入例はこちら
新型コロナウイルス感染症の影響による売上減少の申告書(記入例はこちら
③ 最近2期分の確定申告書・決算書の写し(NPOであれば毎年都庁へ提出している活動計算書など決算状況のわかる資料の写しで問題なし)
④ 法人の履歴事項全部証明書または登記簿謄本
⑤ ご商売の概要(会社・団体の紹介冊子や年次報告書で代替可能)
⑥ 創業計画書(NPOであれば定款が該当)
【NPO向け追加提出資料】
NPOは、融資申請する際に理事会および総会承認(詳細は自団体の定款を参照ください)が必要となるので、融資交渉では理事会および総会の議事録を追加提出する必要があります。申し込み時点では本議事録の提出は不要ですが、事前に開催および議事録作成しておくことをお勧めします。

3.申し込みに必要な書類を提出するまでの流れ(体験談)

今回は当団体にとって二度目の融資となり、以前取引のあった新宿支店へ伺いました。公庫の営業開始時間である9時よりも10分早く到着しましたが、その時点で20〜30名ほどの行列が出来ており、区役所のように整理券を受領する形式で呼ばれるまで店舗内で待機しました(マスクは持参された方が良いです)。

既に取引のある事業者と、そうでない事業者で窓口が分かれており、私の場合は30分程度の待ち時間で対応いただけましたが、新規申し込みの場合は1〜2時間程度待つこともあるそうです。

実際の申し込みでは、事前に用意した書類をその場で確認いただき、修正すべき点があればその場で修正し、提出することができます。そのためにも代表印または団体印(どちらでも良いそうです)と、予備の申し込み用紙を持参していくことをお勧めします。

以上、必要な書類を完全に提出するまで1時間半の時間がかかりました。新規申し込みの場合、そして時間帯によっては更に時間がかかるそうですが、昼前に伺えば(現状)その日のうちにご対応いただけると説明いただきました。

4.申し込み完了から融資借入完了までの流れ(体験談)

申し込み完了から融資借入完了までの流れを時系列順に紹介します。

◆ 3月31日:融資申し込み完了
◆ 4月20日:担当者が確定したという連絡をいただく
◆ 5月11日:融資補足説明資料を担当者へメールで送付
◆ 5月26日:公庫ご担当者と融資交渉(電話)
◆ 6月16日:追加資料をメールで提出
◆ 6月26日:融資借入完了

以上、ゴールデンウィークと重なったことや当団体の決算時期と重なったことで、申し込みから借入までに約3ヶ月かかりました。以下、それぞれのタイミングで心がけたことや反省点を中心に、詳細をご説明します。

◆ 4月20日:(私から電話したところ)担当者が確定した連絡をもらう
→申し込みから3週間経過した時点で進捗確認の電話をしましたが、こちらから電話して正解でした。後述する通り、基本的にメールではなく電話でのやりとりとなるため、担当者とのコミュニケーション手段をつくる意味でも、3週間たって連絡がない場合は一度電話することをおすすめします。

◆ 5月11日:融資補足説明資料を担当者へメールで送付
→融資に関する補足説明資料(コロナの影響を踏まえた今期収支予測など)をメールでご担当者へお送りしましたが、融資交渉までメールのお返事はありませんでした(※)
※借入が完了した時に教えていただいたのですが、公庫ご担当者のメールアドレスは受信専用であるそうです。また、公庫の方々は現在多忙な状況が続いていることから、スムーズな融資交渉のために、①不明点があれば電話で質問する、②メールを送ったら一報入れる、③しばらく連絡がなければこちらから電話する、を心がけるべきだと思いました。

◆ 5月26日:公庫ご担当者と融資交渉(電話)
→融資交渉にかかる電話面談は10分程度で終わりました。当団体にとって2回目の融資だったことが短時間で済んだ大きな要因だったそうですが、電話面談の結果、「申請額の約8割の金額であれば融資が可能」という連絡をいただきました。融資金額は申請額に満たなかったものの、融資返済期間については配慮いただき、7年返済(2年据置)を10年返済(3年据置)に変更していただきました。
なお、はじめての融資申請であっても決算資料などの提出資料が整っており、低減利率の限度額以下(=4,000万円以下)の申請であれば、当団体のように非常に短い時間の面談で申請額通りの融資が決まるケースが大半だと公庫ご担当者から教えていただきました。

◆ 6月16日:追加資料をメールで提出
→当団体が3月締め決算で、5月末に決算完了であったことから、2019年度分の決算資料を提出するまでに時間を要しました。決算期が重ならなければ、もう少し提出までの期間を短縮できました。また、決算資料の他に、NPOであれば、融資申請をする旨の書かれた理事会および(または)総会の議事録の提出が求められ、できれば申し込み時点で、最低でも融資交渉までに、各会での議事録作成を済ませる必要があります。

◆ 6月26日:借入完了
→融資交渉の最後に「6月中に振り込みできそうです」と教えていただきましたが、入金日の前後で特に連絡はありませんでした。ご担当者へ着金お礼の電話を差し上げたところ、「本来であればこちらからお電話差し上げるのですが、コロナの緊急対応でお電話することもできず、すいません」と返しの言葉をいただきました。融資交渉期間中、連絡がなくて不安になることもありましたが、公庫ご担当者も非常に忙しく、申請側である私たちもその点を十分理解した上で、心地よいコミュニケーションを心がけるべきだと思いました。

5.申し込み時に気になったこと・留意点

今回「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を申し込むにあたり、気になったこと・留意点について公庫ご担当者より回答いただけたので、皆様にも共有いたします(7月10日追記:以下の回答は4月執筆時点の情報であり、7月時点での制度変更や追加情報をいただいた項目については、注釈をつけて追記しました。)

《特に気になったこと》
① 公庫の融資予算がショートすることはあり得るのか?
回答:今後申し込み件数が更に急増しても融資予算がショートすることはない想定であるものの、申し込み件数が増えることで融資貸付までにかかる期間が長くなる可能性は高く、早めの申し込みを勧めている。

② 融資貸付までに一般的にどれくらい時間がかかるか?
回答:申し込み後、担当者が決まるまでに一週間程度時間がかかり、担当者との面談は申し込み後10日後〜2週間後を目処に実施されている。面談内容を踏まえた審査にも2〜3週間ほどの時間を要しており、(4月時点で)1ヶ月〜1ヶ月半後を目処に融資貸付を実施している。ただし、今後申し込み件数が増えることで融資貸付までの期間が長くなる可能性がある。
【著者追記→現在申請数の増加によって、さらに貸付までに時間がかかっており、(7月時点で)2ヶ月〜3ヶ月を目処に融資貸付を実施しているそうです。特に、はじめて公庫と取引をする場合はさらに融資審査に時間を要することから、早めの申請を強くおすすめします】

③ (都から外出禁止自粛要請を受けた場合の)面談形式について
回答:基本的には申込先の公庫支店で直接面談するが、電話などによる遠隔面談も既に実施しており、面談が受けられないことはないので安心して欲しい。
《その他申し込み時に気になったこと》
④ 最も確実な申し込み方法は?
回答:直接最寄りの支店へ行き、事前に記入した必要書類を提出する方法が一番確実。電話による事前相談窓口もあるが、特に最近繋がりにくく、WEBサイトを確認して可能な限り書類を用意した状態で直接訪問する方が良い。また、郵送による提出も可能であるが、書類不備の場合再度申し込みが必要になり、その連絡までに時間がかかることからも、なるべく支店へ直接行くことを勧めている。

⑤ 6000万円以上の融資を受けたい場合「中小企業事業(上限3億円)」の枠で申し込むことができるか?
回答:「中小企業事業」は売上10億円以上(最低5億円〜)の企業が一般的であり、NPOの大半は6000万円上限の「国民生活事業」で申し込みを頂いている。
【著者追記→上述の通り、7月1日に融資限度額の上方修正がありました。小規模事業者であれば、融資限度額が6,000 万円から8,000 万円(低減利率の限度額も3,000 万円から 4,000 万円)に拡充され、中小企業事業者であれば、融資限度額が3億円から6億円(低減利率の限度額も1億円から 2億円)に拡充されました。詳細は公庫WEBサイトをご確認ください。】

⑥ 保証人は代表者個人の保証になるか?
回答:借入申込書の担保・保証条件にもある通り、不動産等の担保提供を希望しない場合であり、税務申告を2期以上行っている事業者の場合は、代表者個人の保証になる。
※筆者補足:「経営者保証免除特例制度」を活用することで代表者保証を不要とする制度はあるものの、提供される利率が変わることや融資審査が厳しくなることから、前回融資を受けたときも代表者個人の保証で貸付を実施し、今回も同様の条件で申し込みしました。
【著者追記→融資交渉の結果、今回「経営者保証免除特例制度」を活用できることになりました。当団体は2回目の融資であることから適用可能と判断されましたが、特別融資である事情から、1回目の申請でも「経営者保証免除特例制度」を活用できるそうです。ただし、活用希望の場合は審査に追加で時間を要する可能性がある他、過去の決算状況などによっては審査が通らないこともありうるそうです。】

⑦ 妥当な融資申請金額は?【7月に追記した新規質問&回答になります】
回答:4,000万円以下であれば審査に要する時間も短く、低減利率の限度額未満であることからも、はじめての取引先には4,000万円以下の融資を勧めている。
他方、はじめての取引先であり、さらに4,000万円以上の申請になると、融資交渉の際には、今期の収支予測や詳細説明資料などが必要となり、審査に追加で時間を要する点は留意いただきたい。

6.最後に(お願い:批判よりも貢献を)

私の尊敬する友人であり、『ファクトフルネス』の共訳者である上杉くんが、以前ブログに書いていた「ディスる前に貢献する姿勢」の大切さを、今すごく感じています。

コロナウイルスの影響で苦しい毎日が続き、国や自治体、そして誰かを批判したい気持ちは痛いほど分かります...が、貢献できる方法を一緒に探していきませんか?

負の感情を言葉にするよりも、誰かから熱のこもった「ありがとう」をもらった方が心は軽くなるし、明日も頑張ろうという気持ちになれます。

もし、この記事を読んで少しでも参考になったという方は、ぜひこの記事を必要としている人へシェアしてもらえたら本当に嬉しいです。

【以下7月10日追記】
この記事を4月に公開した直後、こんなメッセージをいただきました。

はじめてのメッセージ失礼します。私の友人XXXから三輪さんの記事をシェアしてもらい、融資の申請をすることができました。今回が初めての融資で分からないことだらけだったのですが、三輪さんの記事を読んで不明な点がクリアになりました。貴重な情報、本当にありがとうございます!

記事が参考になったことも嬉しかったですが、私の友人の「シェア」がまだ出会ったことのない起業家・経営者の役に立ったということが凄く嬉しかったです。

「経営者は孤独」という言葉をよく耳にしますが、コロナの影響で一層孤独は強くなり、非常に苦しい局面を迎えていても、周りに打ち明けることができず、融資の相談も怖くてできない...というケースは決して珍しくありません。かつての私もそうでした。

だからこそ、この記事が一人でも多くの起業家・経営者へ届いて欲しく、TwitterやFacebookなどでの拡散をお願いしたいです。良かったらぜひご協力よろしくお願いします!

7.参考情報(助成金や給付金など)

今回は、あくまで融資を検討されている方向けに書いた記事になりますが、返済のない助成金や給付金もあります。以下3つの助成金および給付金は、いずれも融資と併用可能であり、当団体が申請済み、もしくは申請検討中のものになりますので、もしご存じなかった方は合わせてチェックしてみてください。

【コロナウイルス感染症の影響を踏まえて活用できる他制度】
・都内企業のテレワーク環境整備を支援する「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」
・アルバイト・パートも含めた企業の雇用を守るための「雇用調整助成金」
・雇用の維持と事業の継続を目的とした「持続化給付金(※NPOも適用対象になる見込み)」

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