矢野利裕『学校するからだ』

演出について考えるとき、演劇関連の本よりも、スポーツマネジメントや教育に関する本を読む方が刺激をもらうことが多い。
監督と選手、教師と生徒の関係を安易に演出家と俳優に置き換えるのは危険だとおもうけれど、明確な権力勾配があるなかでのコミュニケーションについてヒントをもらえる。

批評家であり現役の中学高校教員である著者が、「正論と現場のあいだに存在している」学校現場のマジカルな感触を、ときにポップカルチャーや文学の言葉を引用しながら綴った体験的ノンフィクション。
「教壇は舞台である」と題された章もあるので、読みながら演劇脳もフル回転しました。

提出物が苦手な生徒と教師のやりとりについて書かれた箇所は、自分自身の学生時代のいろんな記憶が蘇って「ああ!」と声をあげてしまった。
他にもコリアンルーツの教員との交流や、沖縄修学旅行での体験などなど、どのエピソードにも規範と自由の二項対立に陥らない現場の声が存在していた。

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