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低酸素の知識と実践

本記事は2008年2月2日に日経新聞夕刊に掲載されたものを修正加筆したものです。

最近、高所トレッキングを楽しむ中高年が増えてきている。これは2003年に三浦雄一郎がエベレストに登ったこと、そして中高年の登山人気が高まって、これまで一部の登山家だけが目指すようなマニアックな高所登山が増えてきた。しかし同時に事故も増えた。昨年の遠征時に出会った在ネパール日本大使館付の医師によると、6000㍍以上のトレッキングピークへ出かける登山者の中で日本人の事故が一番多いとのことだ。この背景には今の日本の中高年の登山ブームと、そして日本国内では高山が無い環境が原因といわれているが、僕は知識と体験が少ないせいではないかと思う。

2003年の登頂後、一番多く聞かれた質問は「酸素がないというのはどんな感じなの?」というものだ。高所経験の無い人たちが、高度順化をせずに8848㍍のエベレスト山頂へ直接行ったら2分後に気を失いそのまま命を失ってしまうだろうとか、血中酸素飽和度が50%を下回る(ちなみに通常、血中酸素飽和度が90%以下になると集中治療室に入れられてしまう)と言ってもなかなか想像してもらうのは難しい。一番いいのは実際に体験してみることだ。しかし、いきなりヒマラヤ山脈やアンデス山脈などに行くと高所での対処が分からず、高い確率で高山病になってしまう。高山病になると頭が痛くなり食欲も無く、ひどい風邪を引いたような状態となり、最悪の場合脳浮腫や肺水腫を引き起こして死に至る場合もある。

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