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多様な登山 異なるリスク

2013年11月30日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 先日、ミウラ・ドルフィンズBCで国際山岳医の研修会が行われた。国際山岳医制度は国際山岳連盟(UIAA)、国際山岳救助協議会(ICAR)、国際登山医学会(ISMM)が共同で会議を行い、医師自身が実践的に山岳活動を行いながら、世界各地の山岳環境で医療提供できることを目的に発足した。日本では2010年からこの制度がある。
 すなわち山岳の知識、レスキューの知識、医学の知識が兼ね備わっていないと山岳医にはなれない。今回行われた山岳医研修会は、現在の日本や海外の登山実態を把握すること、そして多様化された登山スタイルに山岳医がどのように対応するかということを中心に講義とディスカッションが行われた。
 僕に声をかけてくれたのは日本で最初に国際山岳医資格を得た大城和恵先生だ。大城先生は今年の三浦雄一郎エベレスト登山にも同行してくれ、的確な医療アドバイスで隊をサポートしてくれた。

 いろいろなスタイルで登山をする登山家が集まった。僕は三浦雄一郎80歳登頂の副隊長という立場でマネジメントのことを話した。また遠征のロジスティックを担当してもらった遠征マネジメント会社会長である貫田宗男氏は、遠征隊を組織するプロの立場からリスクマネジメントについて話した。
 アルパインツアーサービスの代表、黒川恵氏からは一般的なツアー登山が直面するリスクについて、今回三浦隊のベースキャンプに取材に来てくれた朝日新聞の近藤幸夫氏は、一般個人手配のトレッカーのリスクと最近の山岳地帯での事故の形態の変化を話してくれた。そして世界の優れた登山家に贈られる「ピオレドール賞」(金のピッケル賞)を女性で初めて受賞した谷口けいさんからは、アルパインスタイル(小規模登山)についての見識を聞いた。

 スタイルによって直面する健康リスクに違いがあり、大規模な遠征やツアーの場合は複数の症状と処置が考えられる。谷口さんのような極地での医療的なサポートを受けられない場合は、病気やけがに対する医学的知識を身につけ、リスクを自身で把握しながら登山を行わなければいけない。
 現在の登山は多くの価値観を持つ人が入り混じり、登山スタイルもさまざまである。それぞれのスタイルの優劣を競うのではなく、直面するリスクの違いをしっかりと見極め、リスクを認識することが重要だ。

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