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インターン、そして|三浦自伝⑪

(写真:充実したインターンが終わりテンションが上がって山手線一周を歩いた時の写真)

群言堂にインターン希望の手紙を出して間もなく電話で連絡が来た。

電話の主は現在の上司にあたる人物で、当時、群言堂が運営する東京・高尾のIchigendoというカフェの店長だった。

そこで高尾でインターンしてみるのはどうかという提案を受けたが、すっかり大森町に惹かれていた三浦は「いや、大森町に行きたいんです」と強く気持ちを伝えた。

今、その電話相手が直属の上司になって「あの時は生意気な学生だなと思ったよ(笑)」と時々チクリと言われるが、とにかくそのずうずうしさが幸いして大森でのインターンが決まった。

恥ずかしいことに、三浦は島根が日本のどこにあるのかさえちゃんと知らなかった。

大学最後の夏休み、帰省先の名古屋から電車を乗り継いで島根にたどり着いた。最寄りの大田市駅まで当時の専務が迎えに来てくださって、大森まで15分の道のりを車に乗って走った。

市街地からだんだんと山の中へ入り、2回ほど道を曲がれば大森の町並みが見えてくる。突然違う世界にワープしたかのような感覚を覚える。

そこでの一ヶ月間は三浦の人生観を変えた。社員寮を借りて始まった大森暮らしは、とにかく刺激的で楽しいものだった。日中は本店カフェの手伝い、楫パパの木工仕事、本社で登美さんの名刺整理などをした。夜は松場家で、阿部家で、いろんな方と話をしながら飲んだ。

会社関係だけでなく、近所の方にもお世話になった。毎日顔を合わせれば挨拶を交わし、食事に呼ばれたり、海や温泉に連れて行ってもらえたり、見ず知らずの学生にたくさん近所付き合いをしてくれた。

東京のアパートで隣人さえ知らない暮らしをしていた三浦はそれが何より嬉しかった。

一ヶ月のインターンを終えて得たものは、暮らしを中心に仕事を考えるという視点だった。町での暮らしを体験して、この地で暮らしながら働けたらどんなに幸せだろうと思えたのだ。

東京に帰ってすぐ、今度は就職を希望する手紙をしたためた。

<つづく>

※三浦編集長 Vol.11(2016年10月)