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3つの好きな映画

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国もジャンルも年代も関係なく、手当たり次第気になる映画を見るスタイル https://filmarks.com/users/miumichimia
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3つの好きな映画|階段の情景 癖と個性が滲み出す[ジョーカー パラサイト 千と千尋]

癖 と 個性 同じようで、全然ちがう。無意識に滲み出る現象という点は同じなんだけど、その過程は正反対。癖は無意識の積み重ねでカタチづくられ、個性は意識的な心がけ。癖も個性も、愛すべき人間の魅力ではあるけれど。。 無意識の結果の癖 心がけの結果の個性 そんな癖と個性は階段に如実にあらわれる。颯爽と駆け上がる人、息を切らしてうつむきながら歩く人、無造作に座る人、スケボーで滑り降りる人、踊る人。階段を舞台に人びとが行き交えば、そこにドラマが生まれる。 姿勢、足取り、立ち振る

3つの好きな映画|未来の記憶を掘り起こす[マッドマックス ガタカ ブレードランナー 時計仕掛けのオレンジ]

見えない未来を どう描いていくか レオナルド・ダ・ヴィンチは、数多くの発明を後世に伝えた。戦車、ヘリコプター、エンジン、水圧ポンプなどなど、膨大なアイデアを美しく描かれたスケッチで残している。 ダ・ヴィンチだけでなく、ミケランジェロ、ラファエロなど、ルネサンス時代の優れたエンジニアや建築家の多くは画家だったという。 その類まれなるスケッチで未来を描き、人々を魅了する。時代の権力者から職人まで、言葉を超えたコミュニケーションを可視化の力で成し遂げた。 可視化は 未来を

3つの好きな映画|神秘のコーカサスに誘われて[ジョージア、アゼルバイジャン、アルメニア]

ジョージア、アルメニア、アゼルバイジャン__ そこはどこ? 国の名前は聞いたことがあっても、どこにあるかピンとこない人は多いはず。そこには理由があって、この地はロシア、ヨーロッパ、アジアの交差点として、さまざまな文化や歴史が折り重なっている複雑な場所なので。 地図を見れば一目瞭然、ロシア、トルコ、イランという巨大な国に囲まれて、大コーカサス山脈の南側で、カスピ海と黒海にはさまれた豊かな自然地形を擁するところ。 その上、ワイン発祥の地であり、世界初のキリスト教国であり、ユ

3つの好きな映画|ゴジラ、ゲゲゲ、トットちゃん[新しい戦前の今、先の戦争に思いを馳せる]

大きな桃が川から流れてくる音は? 答えはそう、どんぶらこ。 日本人なら誰でも答えることができる簡単な問題。日本人の隅から隅まで浸透している桃太郎ってほんとすごい。 川の流れのように、ゆるやかに、 いくつも時代は過ぎて、季節は移ろう タモリが『徹子の部屋』で「来年はどんな年?」と訊かれて「新しい戦前」と答える。戦後78年ではなく“戦前”。一言発しただけなのでとても印象に残る言葉。 ということで、先の戦争を生き抜いた人の物語3選。いずれも今まさに公開中の邦画で、物語の原点

3つの好きな映画|「A24」の独創的な映像世界 心に残る家族の物語[アフターヤン、アフターサン、カモンカモン]

「ねぇ、パパ」はよくて「ねぇ、子供」はダメ? 「お兄ちゃんー」はよくて「妹ー」はおかしい? 普段何気なく使っている日本語だけど、よくよく考えるとちょっといやだなぁと思うこと。「パパ」「兄」は上で、「子供」「妹」は下。そんな上下関係を、無意識に瞬時に感じ取って使っている日本の言葉。 「おーい、先生〜」といっても「おーい、生徒〜」とは言わないし、「先輩〜」といっても「後輩〜」とは言わない。常に上下関係を意識して、自分の立ち位置を理解した上で発する言葉。 わたし、ぼく、うち、

3つの好きな映画|颯爽と夢に舞う、少年の名作映画[遠い空の向こうに、リトルダンサー、グランド・ジャーニー]

明日やろう は 馬鹿野郎 やりたいことはある。でも、今はまだ取りかかる時じゃない。落ち着いたらやろう。そう思ったが最後、もうやることはない。。。 思い立ったら、ひとまずはじめる やっていけば色々問題も出てくるかもしれない。そんなことは、始めてみて困ってから考えたらいい。それよりも、「今やりたい」というワクワクを大切に、最初の一歩を踏み出したい。 飛ぶ 跳ぶ 翔ぶ日本語には同じ発音で違う意味の言葉がたくさんある。例えば、「風」と「風邪」。発音が同じ「かぜ」でも、意味はま

3つの好きな映画|イヌとヒトの深い繋がり[ドッグマン、アモーレスペロス、レザボアドッグス]

ネコ目イヌ科|イヌはネコ? 生物分類の話なので「目」はメではなくモク。分類は上から「界」「門」「綱」「目」「科」「属」「種」。なので、イヌは「動物界・脊索動物門・哺乳綱・ネコ目・イヌ科・ イヌ属・ タイリクオオカミ種・ イエイヌ亜種」なんだって。覚えれるわけないけど、、 ちなみに、ネコ目の幅はとても広く、ハイエナ、クマ、レッサーパンダ、アシカ、アザラシもすべてネコ目。もう全部ネコでいいんじゃない?というほど幅が広い。なんでもネコ。 イヌもクマもアシカもアザラシも、全部ネ

3つの好きな映画|数理と詩情が共鳴する美しき世界[インターステラー、インセプション、テネット]

「月が綺麗ですね」 夏から秋になると気温が下がり空気の対流が減少し、舞い散るチリがすくなるなる。また乾燥した空気は、含まれる水蒸気も雲も少なく、澄んだ空になる。なので、月が綺麗に見えますね。 という返答は間違っていないけど大失敗。愛の告白を感じ取る文系脳か、理屈っぽい理系脳か。ここが大きな分かれ道… 「Hの意味を教えてください」 ここはスマートに水素と答える。決して卑猥な意味で捉えることなく。文系脳で墓穴を掘らず。ただ、建築設計を生業としている身としては、「H=高さ」

3つの好きな映画|ひとり、アートな気分でヴェネチアの金獅子を[あのこと、ノマドランド、ジョーカー]

トラベル、トリップ、ジャーニー、ツアー “旅”を意味する単語は多種多様。「トラベル」が一番一般的な旅行を表す。「トリップ」になると、少し小さな旅で、場所も1ヶ所かなぁと想像できる。 「ツアー」は各地を巡ることを想起させる。ぐるっとまわって元の場所に戻ってくるイメージ。反対に、「ジャーニー」と聞くと、少し冒険心をそそられる。目的地を目指して、一方向の矢印のイメージ。 Cruiseになると海の旅で、Flightになると空の旅。Voyageなら宇宙の旅にも使えるし、pilgr

3つの好きな映画|三部作という魅惑的で芳醇な味わい[1970、1980、1990、2000]

世界は “3” でできている? なぜ3なのか。2でもなく、4でもない。『3部作』というこの響きに、魅惑的で芳醇な味わいを感じてしまう。 論文なら序論・本論・結論の三段構成になるし、演劇なら設定・対立・解決の三幕構成となり、雅楽なら序破急の3つの楽章で楽曲がつくられる。 物語の構成だけでなく、三権分立により国の根幹を成し、三審制で裁判は行われ、非核三原則は言わずもがな。 数学や物理の世界に目を向けると、円周率πは約3で、ネイピア数eも約3で、3次元で空間はつくられる。光

3つの好きな映画|夏の夜、ミッドナイトが紡ぐ物語[パリ、東京、メキシコシティ]

「あと」と「さき」 後先(あとさき)考えずに〜、というと、「物事の順序や前後を考えずに」ということなので、「あと」は「後」で過去のこと、「さき」は「前」で未来のこと。 と、一瞬思ってしまうけど、そう簡単なものでもない。 「後回し」と言えば、未来へ先延ばしにすることなので「あと」は過去ではなく未来。「先の戦争」と言えば、過去のことで、未来のことではない。 「後々のことを考えて」と「先々のことを考えて」はどちらも将来のことで、「後をたどる」と「先日を振り返る」は、どちらも

3つの好きな映画|プレゼントのような日々を慈しむ[いまを生きる、LIFE IN A DAY、Life Is Beautiful]

産声を“あげる”なんて、プレゼントみたい noteで出会ったとても印象的な言葉。“あげる”という言葉は、“発声する”という意味以上に、生まれてくることを心待ちにしていた方々への“プレゼント”だよね、と。ほんとその通り。産声は贈り物。 ということで、生まれてから人生を終えるまで、プレゼントのような日々を慈しむ映画を3選。一瞬も、一生も、心満たす贈り物のような映画でもどうでしょう、という話。 「PRESENT」の意味は、 “贈り物”であり“現在”こちらもnoteで出会った気

3つの好きな映画|梅雨の季節に、美しい雨を[少年の君、いま会い、ショーシャンク]

ぽつぽつ < ぱらぱら < しとしと < ざあざあ ChatGPTに手伝ってもらって、雨のオノマトペで文章をつくる。誰に教わったわけでもないのに、オノマトペを聞けば、しっかり雨の様相が想像できて、おもしろい。 ということで、梅雨明けが待ち遠しいこの季節に、印象的な雨のシーンを観て気分を晴らす。憂鬱な梅雨に、美しい雨でもどうでしょう、という話。 noteのインフォグラフィック、どう?外出の少ないこの季節、だらだら家で過ごしてももったいない。晴耕雨読を体現して、noteのイ

3つの好きな映画|坂本龍一 シンプルで、複雑で、深い[怪物、怒り、アフター・ヤン]

「体力的に全曲の書き下ろしはできないので、  何曲かイメージしているものを形にしますから  聞いてください」 映画『怪物』を手がける是枝監督のオファーに対する、坂本龍一の手紙での返答。しばらくして、2曲が書き下ろされ、これが最後に手がけた映画音楽となる。 音も言葉も、シンプルで、複雑で、深い。 完成後、映画『怪物』に対する坂本龍一のコメントが、もうすべて。「怪物を探してもうまくいかない、救いは子供、正解はない」 音も言葉も、シンプルで、それでいて複雑。多くを語らず、とて