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少年野球と高校野球をセンスメイキング理論で考えてみた

大西みつる

経営学のホットな理論に「センスメイキング」という理論があります。人がある経験や起きている現象に対して、能動的に意味を与える思考プロセスを意味しています。この概念自体は、1970年代に組織心理学者のカール・ワイクという人が提唱したものです。日本語に直訳すると「意味づけ・納得」と言う事ができ、経営学の分野で注目されています。

社会変革、イノベーションを起こしていくためには、センスメイキングを活用し、物事の意味づけを変えていく事から始めていく、次に行動を起こすリーダーシップ行動として活用されています。「Sense」という言葉は、英語では「良い判断をすること(coming to senses)」や「理解すること(sense of humour)」といった意味でも使われています。

過去の歴史の中で培われてきた社会システムがコロナウイルス、少子高齢化、地球温暖化など、外部環境の変化から、社会的な課題が多く、過去から伝統的に行われてきたやり方、「正しいと思われてきた答え」では、「今」から「未来」に向けて上手くいかない・・・。変化、変革が社会に求められています。

センスメイキング理論を活用しながら、少年野球や高校野球の変革課題を考えてみました。

課題テーマ①:試合形式をトーナメントからリーグ戦にセンスメイキング

現行方式は、高校野球の公式戦は、トーナメント形式で行われています。春と夏の甲子園を頂点に都道府県で地区大会を行い、勝ち抜いたチーム、成績優秀と認められたチームが代表として甲子園に出場します。これは、過去より行われてきた一つのシステムです。では、センスメイキング理論で意味づけをかえてみると、新方式として、高校野球の公式戦を「リーグ戦で行うこととする。」にその意味を変えてみる。もちろん、賛否両論が出てくると思います。利害関係が発生することは事実です。でも、問題視されている勝利至上主義からの脱却、酷暑の中での連戦という健康リスクの軽減、選手の発育段階での故障を未然に防げる、など、リーグ戦構想というのは、考える余地が充分にあります。すでにこの動きが徐々に始まっていますね。でも、春と夏の甲子園大会というイベントとの関係性もあり、変革が難しいテーマですが、今のままは良くないと誰もが心の中で思っていますが、変え方がわからない・・・。いったん、決まったシステムを変えることは大変なことです。まずは、センスメイキングで意味づけを見直すことから始めなくてはなりませんし、未来に向けて行動しなくては何も変わらないので、私たち大人のリーダーシップが試されています。

課題テーマ②:野球は厳しいものだ、から楽しいものだにセンスメイキング

野球競技のレベルは、少年野球から段階的に高校野球、大学野球、社会人野球、プロ野球とステージごとに「勝つこと」と「プレーの質」が高まることは事実です。すべての野球を「楽しんで」という意味にするということではありません。育成段階の少年野球は、勝つこと以上にプレイフル・ベースボールで、野球は楽しいものだという意識に意味づけを変える。好きこそ、ものの上手なれの諺どおり、「好き・楽しい」ということが野球に対する動機を高めてくれます。少年野球は「面白ろ、おかしく!」という意味付けを理念において活動していくことで、好きな野球においてベストを尽くして、野球体験から様々なことを学ぶ事ができると考えます。

課題テーマ③:指導者ファーストからプレーヤーズファーストにセンスメイキング

日本のスポーツ界では、時として、プレーヤーよりも監督が有名になることがしばしば見受けられます。長嶋巨人、原ジャイアンツなど、プロ野球においては、マスコミが監督人気にあやかって、監督の名前をチーム名に入れ込み表現しています。また、勝利をおさめたチームの監督のリーダーシップ本や自己啓発本が売れたりします。プロスポーツはビジネスでもありますので、理解できる部分も多々あります。売上と利益を求められるエンターテイメントビジネスです。しかし、アマチュアスポーツはその目的は違うのではないでしょうか。プロスポーツの世界から眺めると、アスリートファーストという文化は根付きにくい特性があります。どうしても選手よりも選手とチームをマネジメントする監督やコーチの立場が優位になります。大学野球、高校野球においては、監督やコーチが教員でプレーヤーは生徒という「上下関係」に意識しなくてもナチュラルになってしまいます。監督やコーチが「野球指導の専門職」として選手と対等もしくは選手の陰に回るような、契約的関係性にあるわけではありませんので、ついつい上下関係が強くなり、選手が監督、コーチに意見が言いにくい雰囲気になってしまいます。監督、コーチは何をする人なのかの意味づけ、センスメイキングをしっかり行うことが必要です。「名選手、名監督にあらず」。監督、コーチは、チームのマネジメントを実行する人としてのセンスメイキングが大切です。

自分の果たせなかった実績を、メンバーと一緒に果たしてくれて、一緒に喜べる。監督、コーチと選手は共創関係にあります。監督、コーチはチームにおける役割にしかすぎません。上下関係以上に縦と横の人間関係作りにセンスメイキングして、チームメイトの活躍と貢献、そして成長を引き出せる人としてチームメンバーに認知される必要があります。

意味を変えることから、イノベーションは起こり始めます。しかし、何かを変えようとする時、必ず、反対勢力という変えたくない人たちも現れてきます。周囲を納得させるストーリーを語る事で、次の行動を起こす推進力につなげるプロセス、そのものがセンスメイキングであり、リーダーシップの発揮といえます。社会変革の一方策として、活用していくことが出来れば、今から未来に向けて、より良き野球界がデザインできると考えます。

参考:ゼロから考えるリーダーシップ (高橋 潔:東洋経済新報社)

参考:雪山で遭難した軍隊はなぜ生還できたのか (ダイヤモンドオンライン記事より:https://diamond.jp/articles/-/224729 )

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