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STORY Vol.3エッセイ

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エッセイを掲載します。
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僕らの働く理由

僕らの働く理由

話しは30年以上遡る。

僕は高校生のころバンドなんてものに明け暮れていて、進学やら就職やらとか、そんなことは全然考えずに来る日も来る日も楽器と戯れる毎日を過ごしていた。漠然と、大学に行ってもやることないなあ。。。何かモノを作る仕事とかしたいなあ。。。適当にバンドとかやっていたいなあ。。。などと、いま思えば本当だらしない学生生活だったのだ。

体たらくな僕は、勉強しないで入れる調理師学校(ミーハー

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雨の降らない場所

雨の降らない場所

高校野球が終わり、24時間TVが終わり、いよいよ二学期が目前に迫ってきた。

この時期「いじめ」がある学校には戻りたくない…行きたくない…そんな子どもたちがいるという。
中には思い詰めてしまい命を絶ってしまう子も…
哀しい現実である。

僕自身には「いじめ」のような体験がない。

もしかしたら鈍感すぎて気がついてなかったのかもしれないけれど、無視をされるとか危害を加えられるとか、そういった経験がな

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カーラヂオ

カーラヂオ

つけっぱなしのラヂオからタレント予報士のかわいい声が聞こえている。桜の開花宣言が一日早いとか遅いとか、でも外はそんなに暖かくなくって、クリーニングに出そうと思っていたコートをまた引っ張りだすという始末。「予感」とやらに僕は油断してしまったらしい。



今日は結婚式2次会のパーティー営業だった。

ひとりで40人分の料理を作り、そして提供する。アルバイトがお酒を提供してくれるのだが、料理はひとり

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会いたいのなら会いに行け

会いたいのなら会いに行け

JAZZの生演奏。
売れているには程遠い、けれどいっぱしの演奏は目を見張るものがある。JAZZの世界とはそういうもので、陽の目をみない割に卓越した演奏を奏でるミュージシャンというのはごまんといるものだ。

今日演奏したピアノトリオも然り。ご多分に洩れず指先から離れた美しい旋律は、およそ満員とはいえぬ客席を漂いながら、透明に消えゆく音符を零していった。

そんな明日を掴みきれていない孤高の音楽家に、

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出会った瞬間から別れのカウントダウンは始まっている

出会った瞬間から別れのカウントダウンは始まっている

看護師さんの送別会だった。

30名ほどの看護師さんが一堂に会し、酒を飲む。

辞めてゆく女性は語学留学のため渡米するようだ。同僚たちはそれぞれ声をかけ、笑いながら涙ぐんでいた。

7年間在籍したという。それはそれは積もる話もあっただろう。お店の計らいで(とはいってもピアニストにお願いした僕の計らいなのだが)ピアノの生演奏をプレゼントした。かなり酔っているのか気持ちよくなってしまったのか、看護師た

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「さよなら」と言った不思議な少年の話

「さよなら」と言った不思議な少年の話

幼稚園時代、僕は近所の子どもらが通う幼稚園ではなくて、キリスト系の幼稚園に通っていた。
いつも神様にお祈りしてからお弁当の時間だったので、不確かな記憶だけど、きっとそうに違いない…
僕はお祈りのとき必ず目を瞑ったフリをして、ちょっぴり薄目を開けたりして周りの様子を伺う小賢しいやつだったんだ。

そこは「はとり幼稚園」といって、忘れもしない…担任の先生の名前は「ほしのせんせい」といった。

先生は、

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Singer

Singer

昨日、うちの店(winebarLuz)にて解散LIVEがあった。

小出美里と松本翔平の二人組ユニット「Good By Gloomy」である。
奇しくも当店開店(2010年)と同じく8年の歳月を経てきた二人……。

小出が店にやってきたのは2年半前―― 知り合いのお客様に連れられてきたのが初めてだった。

ただ酒をいいことに小出は次々と高級ワインを飲み、「肉!肉!」と、ガツガツ食べる食べる……

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仁義なき催事場日記 最終回

仁義なき催事場日記 最終回

エピソード⑧ 最終回25日の最終日である。この日記も最終回だけれど、結果、取り立てて書くような特筆すべきことは何も起こらなかった。まさにノンフィクションでありやらせじゃないドキュメンタリーなのでそれは仕方ない。
ということで、ちょっと写真で振り返る程度にお茶を濁して終わりにしたい。

ちなみにやるべきことはやって惨敗なので、次!次は頑張ろう!と切り替えた。

ちなみにFacebookのグループペー

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仁義なき催事場日記④

仁義なき催事場日記④

エピソード⑦ 孤独との戦いさて、埼玉の店から誰も来なくなり、ポップ吉村もいなくなり、誰とも話さない時間が延々と続くこととなった。孤独との戦いだ。
ティラミスがバンバン売れればお客様と話す時間もあるのだろうけど、いかんせん1時間に2人~3人で(場合によっては3時間くらい誰も寄り付かないことも)そうなると、めちゃくちゃ眠くなってしまう。
もちろんそんな場合ではないので、いろいろアドバイスをもらったこと

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仁義なき催事場日記③

仁義なき催事場日記③

エピソード⑤ さよならポップ吉村

怒涛のオープニングセール3日間を終えた僕は、息つく間もなく月曜も9時過ぎにイオンへ到着した。
すると、ポップコーン屋はすでに片付けが終わっていて荷物を運び出すところだった。
「吉村さん……もう終わりですか?ウチの店は25日の日曜までやるんですけど……」
するとポップ吉村は、
「ウチは子ども商売だからねぇ……平日はあんまりやらないのよ、効率悪いし。今日は別の仕事が

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仁義なき催事場日記②

仁義なき催事場日記②

エピソード③ 喉から血ぃでるぅー16日、初日である。
今回は『マックスバリュ』というイオングループの食料品スーパーがリニューアルすることに伴ってイオンタウン株式会社からお声掛け頂いたのが始まりだった。大変気を遣ってもらったのか、僕らはスーパーの目の前に陣取らせていただけた。

気持ち的には学園祭の模擬店だ。
まだ9時を少し回ったばかりなのにスーパーは多くの人でごった返していて、こっちもすぐ臨戦態勢

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仁義なき催事場日記①

仁義なき催事場日記①

この話は、2020年10月16日から10月25日まで千葉県千葉市緑区おゆみ野にあるイオンタウンで行われた催事場での出来事。やたら脚色してるけど、基本ノンフィクションなドキュメンタリーであることをここに記しておく。

エピソード・ゼロ 始まりある日社長からこう告げられた……
「10月になったら催事でティラミスを売ってくれないか?」

◇◇◇

僕がようやく雇ってもらった店舗は、想像通りコロナ禍の影響

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ダイレクトメール

ダイレクトメール

ダイレクトメールとは、企業から個人(家族)や法人(職場)宛てに直接送られる、商品やキャンペーンに関する広告のことである。
それは営業や宣伝を目的としたダイレクトマーケティングの施策の一つといえる。

お客様に店舗評価アンケートをお願いして、そこからお名前、住所、誕生日(記念日)を取得…誕生日や結婚記念日などに合わせてダイレクトメールでコース料理のご案内を送り来店動機を促す。そんなお店をやっていた。

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アオハル──

アオハル──

予選会当日の朝は早い。

早朝5時過ぎにPAなど音響機材が搬入され、マイクチェックなどを行なう。6時から出演するバンドのリハーサルが20分ずつくらい。
この年の予餞会は僕らを含め合計5~6バンドの有志演奏が行われた。
軽音楽部の後輩グループ数組と別の同級生グループ(彼らは浜田省吾を歌う硬派バンド)そして僕ら「喜楽スペシャル」のサザンである。

「うぃーっす」

と僕らは口々に声をかけ、ハイタッ

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