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Stones alive complex (Libyan Desert Glass)

モアイじみた大きな彫像が、こちらへ向かってゆっくりと歩いてくる。瓦礫化したビル群を、もっと瓦礫らしくなるように、ガシガシ踏み潰しながら。

「いったい。あれはなんですか・・・?」

あれの足元が噴き上げる土煙の風が、呪文字を造型し商いする男が顔を向けた、歴史を創る歴史学者の髪をそよがせる。あれとこことは、まだ距離があるが、地面の振動は激しい。

風避けの手を振り回して呪商男の注意をひくと、歴史学者は、地面に落ちている焦げた本やら砕けたメモリースティックやらを指し示した。

「・・・こういうのと同じやつだな!
文明を回収しとるんだよ!」

興味しんしんに唇を曲げ、ニンマリした。

その初老の学者の風貌は、寄る年波にすっかりしなびていた。しかし、キリッとこちらに向ける眼光はNDSwitchを貰った子供のように輝く。あれを目撃できたのは、3600年前の縄文人だけだ、もっとも縄文種族を我々と同族のジンと呼んでいいものかは疑問だが、YAP遺伝子の原盤を護ってる記録媒体という意味ならば親戚なのかもな!激しくなってゆく風のあいだから、早口で脈絡なさげな説明をしてくれた。
さらに、先程問いかけた答えも付け加えた。

「あれはな!
自立歩行型記念碑さ・・・!」

暴風でかき消された、細いかすれ声だった。

「なんの記念碑かって?
君は、そんなことも知らんのか?」

風に押された頭を、のろのろと回しだし、ゆっくりと顔を正面に戻していく。

「わしも知らんけどな!
なんせ、あれは特別な出来事が起こった日を覚えておくための記念碑じゃなくて。
数秘的に特別な日を覚えておくために、出来事を起こす記念碑なのだから!
えっ?どんな出来事が起こるのかって?
君は、そんなことも知らんのか?」

この学者は興奮すると、会話形式の独り言を叫びだすクセで有名だった。

「わしも知らんけどな!」

「なるほど・・・」

なるほど感ゼロの口調で、呪商男はつぶやくように歴史学者と調子をあわせる。

「あっ!
そうだったのか!」

歴史学者は呪商男にぱっと明るい顔を向けて、

「SPECシンプルプランの逆バージョンは、元々の予定は逆バージョンじゃなかったのだ!」
「そのとおりだと、わしも思うぞ!
途中のプロセスをこそっと土壇場でひっくり返して、まるで別の結果になるようにしたのだよ!」
「ゼーレとネルフの、似て非なるシナリオみたいにな!」
「だとしたら、めっちゃ頭いいな!」
「めっちゃ頭いいな!」
「君は知ってたのか?」
「いや、知らんかった!」
「わしもだ!」
「なるほど・・・」

最後のなるほど以外は、歴史学者の独り言だった。

自分ひとりで顔を見合わせあう歴史学者と、
なるほど感ゼロの顔つきの呪文字を造型し商いする男を、長大な歩幅でまたぎ。

自立歩行型記念碑は、数秘的に重要な日付に向かって、ずんずん歩み続ける。

(おわり)

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