みつめる

’96年生 生きづらさを抱えてる

みつめる

’96年生 生きづらさを抱えてる

マガジン

  • 【小説】アンビバレント

    現実かもしれないし、虚構かもしれない

最近の記事

ぬいぐるみと人形

ぬいぐるみを切った。 ぬいぐるみをハサミで切った。 ぬいぐるみを私はハサミで切った。 ぬいぐるみを私はお気に入りのハサミで切った。 ぬいぐるみを私はお気に入りの赤いハサミで右のうでを切った。 ぬいぐるみを私はお気に入りの赤いハサミで右のうでとお腹を切った。 ぬいぐるみを……。 ぬいぐるみは、泣いていた。 うでとお腹からはワタが出ている。 なぜ泣いているのか私にはわからないから ママに聞いてみたら「泣いてなんかないわよ」って。 なんで?ぬいぐるみは確かに泣いているのに。 え

    • とある友人の話

      通信障害その友人との出会いは、はっきりと覚えていない。 いつからか、そばにいることが当たり前になっていた。 友人は少しばかり裕福な家庭で母と父。それと歳の近い妹の4人で暮らしていた。 けれど友人から、家族の話はあまり聞いたことがない。 性格はというと、少し気まぐれというかだらしないところがあり私がしっかりしなきゃと思っていた。それでもなぜだか、責める気は起きないのだから不思議だ。 仕方ないという諦めよりも、そんな性格でも友人が私の傍に居てくれることが嬉しかった。 友人は好

      • とある少女の逃避行

        時計の針その少女は、好奇心旺盛だった。 しかし、とりわけ明るい性格というでもなくむしろ物静かに暮らすことを望 んでいた。 けれど淡々と毎日を消費するだけの日常に飽き飽きとするようになる頃。 「明日なんて来なければいい」と思いながら、布団を被り真っ暗な闇の中で光る画面を見つめる。 憧れ、嫉妬、憂鬱、不安、孤独感。いろんな感情が込み上げてきてはどうにかそれらを沈めるための言葉や方法を必死で探す。 自分のことを理解してくれる人は、彼女の周りにはいなかった。 むしろ理解されることを

        • とある青年の話

          人間1年生あるところに、真面目な青年が住んでいました。 青年は日がな労働を強いられ、労働のために生きる毎日。 でも青年には夢があった。 誰にも言えない夢。ただ、その夢を叶えるためには資金が必要。 だから、働いた。好きでもない、むしろ嫌いになりかけている仕事をして。 労働をしている最中は、夢のことを考えるのだけが唯一の楽しみだった。 ふとした考えが頭をよぎった。 「一生、毎日同じことの繰り返しでいいのか?」 手を働かせながら、暇な脳内はそればかりで埋め尽くされていく。 時報が

        ぬいぐるみと人形

        マガジン

        • 【小説】アンビバレント
          4本