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懐かしのエレキ・インスト① 哀愁の北欧エレキ・サウンド「スプートニクス」

エレキ・インストは、ロックの中でもマイナーな存在でファンもそれほど多くありませんが、今回は、その中でも更に超マイナーな北欧エレキを紹介します。

時々調子に乗って、北欧エレキとは関係ない方向に脱線することがありますが、ご容赦のほどを。

北欧と言っても フィンランドのバンドが中心で、そこにスウェーデンのスプートニクスが加わるという感じです。                ノルウェーやデンマークのバンドは、耳にしたことがありません。

北欧エレキは、アメリカのエレキ・バンドのように軽快なリズムでぐいぐい押していく、カラッと明るいメジャーコード中心の曲調とは正反対で、マイナー調の哀愁感あふれる美しいメロディと澄んだギターの音色が特徴。

リズムよりも短調のメロディでしっとりと聴かせていくタイプの曲が多いので、北欧エレキを評してフィンランドの「歌謡曲」などと呼ぶ人もいます。確かにマイナーな曲調が、日本の歌謡曲と相通じるものがありますね。

民族性なのか、日本人は昔からマイナー調の音楽が大好きで、以前、「NOTE」に書いたことですが、戦意高揚のための勇ましい軍歌でさえ、大ヒットした曲の多くはマイナー調の曲でした。             特に朝ドラ『エール』で名前が知れ渡った古関裕而などは、軍歌のほとんどをマイナー調で作っていたほど。

因みに歌詞に五七調の歌謡曲が多いのも民族性ですかね。        もっとも、年末に亡くなった作詞家のなかにし礼はこれを嫌っていて、「五七調の歌詞は、絶対に書かない。」と言っていましたが。

北欧エレキ・バンドの代表格は、何と言っても『霧のカレリア』で有名なスプートニクス、知名度はかなり落ちますが、フィンランドのサウンズが二番手といったところでしょうか。

あとはムスタングスが通の人たちに少し知られている程度で、ベンチャーズやシャドウズ、アストロノウツ、サファリーズ、ディック・デイル&デル・トーンズ、シャンティーズ等の米英のメジャー・バンドの知名度とは比ぶべくもありません。

最近はユーチューブのおかげで全く知られていなかった北欧エレキの名曲を沢山聴けるようになりましたが、暫く前まではスプートニクスを除けば1999年に発売された「哀愁のエレキ・インスト第1集(サウンズ、アヴェンジャーズ、サベージズ他20曲)」と「第2集(フィーネーズ、アドベンチャーズ、エスクァイアーズ他20曲)」がほとんど唯一の音源でした。

版権の関係なのか、この2枚組のアルバムには、ムスタングスの曲が1曲も入っていなかったのが不思議でした。

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『さすらいのギター』のヒットで、北欧エレキ・バンドの中では一応メジャー的存在のサウンズは、「ザ・サウンズ / さすらいのギター~ザ・サウンズのすべて」が同じ1999年に前記のアルバムと揃いのような形で出ていて、このアルバムでようやくサウンズの全貌を知ることが出来るようになりました。

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                                  北欧エレキ・バンド自体の情報量も少なく、ウィキペディア日本版には、スプートニクスでさえ独立した項目としての扱いがありません。

その一方で、世界や日本のエレキ・インスト・バンドを網羅し、レアなアルバム・ジャケットのカラー写真に詳細な解説を付けた「エレキ・インスト大全」というエレキ・インストファンのバイブルのようなすごい研究書が1998年に出版されています。

ただし、ベンチャーズやシャドウズ、アメリカのエレキバンド、サーフィンインスト等については多くの頁が割かれているものの、北欧エレキついての情報量は意外に少なく、残念ながらこの件に関してはあまり参考にはなりませんでした。

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誰かフィンランド語に堪能な人が、黒沢清の『熱狂GS図鑑』のような研究書を書いてくれるとよいのですが。

                                  それでは、手始めに有名な曲から北欧エレキ・サウンドを聴いてみましょう。第1回は、主にスプートニクスです。

スプートニクス『霧のカレリア』

『霧のカレリア』(原題KARELIA)は、第二次世界大戦中の「継続戦争」(ソ連・フィンランド戦争)の結果、ソ連に奪われたカレリア地方をテーマにした曲という説があります。                      しかし、次に紹介するフィーネーズ版の原題が『Ajomie』なので、宣伝のために日本のレコード会社が勝手に作った話かもしれません。       そもそもスプートニクスは、フィンランドではなく、スウェーデンのバンドなんですけどね。

バンド名は旧ソ連が打ち上げた世界初の人工衛星につけられた名称。   その関係からか、初期は宇宙服を模したコスチュームで演奏していました。                                  アニマルズの『朝日の当たる家』のようなイントロの素晴らしいギター・リフによって曲に引き込まれます。                   そして、間奏のロシア民謡『トロイカ』が泣かせます。         ロシア民謡が好きな日本人は、多いですからね。                                              スプートニクスは、この曲が日本で大ヒットして初来日。        折りからのエレキブームに乗ってTVにも出演するなど、一躍人気者になりました。

フィーネーズ『霧のカレリア』

日本ではスプートニクス版と競作のような形で発売されました。
こちらのほうがスプートニクス版より、ややアップテンポです。     リーダーでリード・ギターのボー・ウィンベルグがスプートニクスを結成する前、フィンランド人のメンバーを集めて録音したとか、一人で多重録音したとか諸説があり、今となってはどれが本当なのか定かではありません。 どちらにしても、両曲ともリード・ギターは同じ人です。

スプートニクス『ハヴァ・ナギラ』

『シャローム・アレヘン』と並ぶイスラエルの代表的な民族音楽のエレキ・カバー。
日本では、 『霧のカレリア』のB面として発売されました。       珍しくコーラスが入っています。                   日本公演では、ボーカル入りの曲も披露していました。         まあ、ベンチャーズだってライブでは、ドン・ウィルソンが「フィール・ソー・ファイン」などのボーカル曲を歌っていたので、驚きませんが。

スプートニクス『空の終列車』

日本での2枚目のシングル。                     こちらもヒットし、ベンチャーズほどではありませんが、その後、何回も来日公演を行っています。

スプートニクス『夢見るギター』

『霧のカレリア』もそうですが、リズム・ギターが大活躍していい味を出しているのと間奏のキーボードが素晴らしい名曲。            日本の作曲家早川博二の提供曲。                   早川博二の代表曲は、黒澤明の『七人の侍』にも出ていた名脇役俳優左卜全が歌って大ヒットした『老人と子供のポルカ』。            キング・トーンズの『暗い港のブルース』もよく知られています。

哀愁のある名曲なので『暗い港のブルース』のキング・トーンズ盤とモダン・プレイボーイズのインスト盤をリンクしておきます。

キング・トーンズ『暗い港のブルース』

モダン・プレイボーイズ『暗い港のブルース』


スプートニクス『モスクワの灯』

こちらも早川博二の提供曲です。                   間奏が、ロシア民謡『ともしび』。                  スプートニクスには、ロシア民謡をうまく取り入れた名曲が何曲もあります。

スプートニクス『霧のロザリア』

初めて聴いたとき、どこかで聴いたような?と思ったら、スリー・グレイセスの大ヒット曲『山のロザリア』と同じ曲でした。
原曲は、ロシアの『アレキサンドロフスキー』。            こちらの間奏は、ロシア民謡『カチューシャ』。            要するに全部ロシアから頂いた曲です。

スリー・グレイセス『山のロザリア』

ロシア民謡『カチューシャ』

美少女戦車アニメ『ガールズ&パンツァー』プラウダ高校チームのテーマ曲として、若いアニメファンにも知られるようになりました。

スプートニクス『黒い瞳』

こういう激しいリズムの曲があるのが、スウェーデンのスプートニクスとフィンランドのバンドとの違いでしょうかね。

スプートニクス『夏の日の想い出』~『ジュピター・スペシャル』~『霧のカレリア』~ライブ・ヴァージョン『霧のカレリア』

『夏の日の想い出』は、日野てる子のヒット曲のカバー。        ちょっと変わった特徴的なリズムです。

スプートニクス『ジャニーギター』

エレキ・インスト第1回の〆は、やはりマイナー調の曲で。       映画『大砂塵』の主題歌、ペギー・リー『Johnny Guitar)』のカバーです。

                                  次回は、フィンランドの代表的エレキ・バンド「ザ・サウンズ」を取り上げます。


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