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1960年代~80年代の泣ける名曲100選②宝塚歌劇『ベルサイユのばら』

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014 宝塚歌劇「青きドナウの岸辺に~愛あればこそ」

1974年の『ベルサイユのばら』初演月組公演フィナーレ。        

初代オスカル役は榛名由梨、アンドレ麻生薫、マリー・アントワネット初風諄という配役。特に榛名由梨のオスカルはまさに「男装の麗人」でとても目立っており、原作マンガのオスカル様とぴったり重なるイメージで感心しました。

物語もこの初演が最も原作に忠実で、演劇としてもこれまでに観た宝塚版『ベルばら』全作中のベストワン。クライマックスのバスチーユ監獄襲撃の場面をはじめ、革命劇としての骨格も大変しっかりしていて見応えがありました。

オスカルの人間としての成長がきっちり描かれていたのも特筆に値します。特にパリの貧民街で人々の悲惨な生活を目の当たりにした上級貴族のオスカルが国王を守る近衛隊指揮官という立場や身分を捨て、一個の人間として貴族に虐げられているシトワイヤン(市民)の側に立とうと決意する場面は感動的でした。

演出は何と戦前からの時代劇の大スター長谷川一夫。          映画『雪之丞変化』等で女形の役も演じているので、演技は勿論の事、ダイエットや化粧の仕方まで細かく指導したそうです。その上、マンガの世界をそのまま再現しようと、目の中に星を飛ばす目線の動かし方まで。

そのせいか、上に書いたように榛名の男装姿があまりにも素晴らしすぎて、後日、普段着でテレビ出て来た時の姿がオスカルとは似ても似つかず、そのあまりにも大きな落差に「えっ、この人が本当にオスカルをやった人なの?」と驚いてしまいました。化け方も超一流でないと、トップスターは務まらないという事ですね。

初演は公演開始と共に大評判を呼び、『ベルばら』ブームという社会現象まで巻き起こします。それまで赤字続きで閑古鳥が鳴いていた宝塚歌劇はこの成功によって一気に息を吹き返し、以後、その人気が不動のものになった事を考えると、長谷川一夫はまさに宝塚中興の祖、まさに功労者ですね。  1974年の初演は、文化庁芸術祭優秀賞を受賞するなど高く評価されています。

宝塚はその後、同じ池田理代子原作の『オルフェウスの窓』も舞台化しています。『ベルばら』がフランス革命なら『オルフェウス』はロシア革命。フランス革命終盤に登場するナポレオンも『エロイカ』でマンガ化していますから、池田さん、若い頃は革命物が大好きだったのですね。さすがは、元「民青」です。

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フランス革命については、こちらに少し書いています。

015 「ばらベルサイユ」(「青きドナウの岸辺」の後、1分5秒頃から)

2001年 星組公演『ベルサイユのばら〜オスカルとアンドレ編〜』フィナーレより。

「愛あればこそ」と並び、こちらの「ばらベルサイユ」もプロローグやフィナーレで歌われることが多い名曲です。                オスカル 稔幸、アンドレ 香寿たつき、アントワネット 星奈優里、フェルゼン 安蘭けいという配役でした。

当時は若手だった皆様、どの方も素晴らしい歌唱力です。        歌いつつ客席の方を見ながら大階段を降りるのは、なかなか大変ですね。  下手をしたら足を踏み外しますから。実際、本番の公演中に落ちられた方がいらっしゃるそうで(伝説の「階段落ち」)。

『ベルばら』関連曲ではありませんが、                016  安蘭けい「ブルージーンと革ジャンパー」

ブルース調のアレンジに乗せて踊り歌うパフォーマンスが見事に決まっていて素敵です。中性的な魅力がよく出ていますね。

017 寿ひずる 「ばらベルサイユ」

寿さん、ちょっとゆっくり歌いすぎてませんかねえ。せめて、後半だけでも転調してアップテンポにしてほしかったなあと。

018 ベルサイユのばら'89 星組「駆けろペガサスの如く」

平成版『ベルばら』の第1作『フェルゼンとマリー・アントワネット編』から、スウェーデンの貴族フェルゼンが窮地に陥ったアントワネットを救うため、馬車でパリへ急行する場面で歌われます。 

フェルゼン役は、当時星組トップだった日向薫。            短いですが、こちらもいい曲です。疾走する馬車の背景動画が暗くて、はっきり見えないのがちょっと残念。

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                                 019 テレビアニメ版『ベルサイユのばら』主題歌「薔薇は美しく散る」

「ベルばらブーム」を受けて、1979年から80年にかけてテレビアニメ版も作られました。大河マンガなので、全40回とアニメにしては長丁場。

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同じ年に『シェルブールの雨傘』のジャック・ドゥミ監督の映画版も公開されていますが、こちらは残念ながら期待外れもいいところの凡作でした。 ベルサイユ宮殿で撮影されたことも含めてジャック・ドゥミらしく映像はきれいでしたが、肝心の中身はもう『ベルばら』とは別物としか言いようがありません。

オスカルが身分制度に疑問を持ち、自由と平等に目覚め人間として成長して行く過程がばっさり切られていたのも腹が立ちましたが 映画の解像度が高すぎてどう見てもオスカルが女性にしか見えず、宝塚のような中性的な魅力に欠けるのです。きっと舞台を遠くから眺めるからいいのでしょうね。

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