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映画ノート

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#反戦映画

映画ノート⑯ 『コリーニ事件』 ~自国の戦争加害責任と戦後処理の闇を鋭く告発した反戦映画

『コリーニ事件』は、昨年観た外国映画ベストワン。 全く予備知識なしで期待せずに観たドイツ映画。 弁護士兼作家のフェルディナント・フォン・シーラッハの同名小説が原作(邦訳あり)で、2011年に出版されて大反響を呼びベストセラーになったこと。それだけではなくこの小説の内容が、ある法律の改正を促すほどの衝撃をドイツ政界と法曹界に及ぼしたことなどは映画の鑑賞後に知った。 ドイツの高級ホテルで年老いたイタリア人コリーニが自分より高齢のドイツ人大物実業家ハンス・マイヤーを射殺し、殺

映画ノート⑭ 『海辺の映画館―キネマの玉手箱』~「戦争は絶対にしてはならない」とのメッセージが込められた大林監督の遺作

大林宣彦監督の遺作となった『海辺の映画館―キネマの玉手箱』は、監督の映画人生の集大成的な作品だった。 ロジェ・ヴァデムの耽美的吸血鬼映画『血とバラ』(原作ジョセフ・シェリダン・レ・ファニュ『吸血鬼カーミラ』)にオマージュを捧げた最初期の自主製作映画『EMOTION 伝説の午後 いつか見たドラキュラ』以来培ってきた映画への愛、晩年になって更に顕著になる反戦思想、戦争映画に対する批判、怪奇幻想映画趣味、アバンギャルド的手法など、映画キャリアの全てを注ぎ込んだ驚異のパワーに満ちた