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Vol.003 カゼイン

リハラボ 「予防医療ノート」 Vol.003
2019/09/13配信 (2020/8/28まで限定公開)

このノートは、毎週金曜日にLINEのOpenChatで配信する予防医療ノートです。
予防医療に関するトピックス、ニュース、論文、動画などをお届けします。
これからの日本の未来は、「自分の健康は自分で守る」時代に突入しました。
自分の健康を守るための、知識や技術、アイデアなどを提供していきます。


目次


①今週のテーマ
②予防医療ニュース
③予防医療論文
④予防医療動画
⑤今週の名言


①今週のテーマ


予防医療などに関するテーマについて、気になったことや感じたことを書くコーナーです。


テーマ「カゼイン」


 前回から三回に渡って、小麦粉、牛乳、砂糖、について書いていきます。
 今回は、牛乳に含まれるカゼインについて考えていきます。
 牛乳に含まれる「カゼイン」とは、牛乳をはじめとする乳製品に多く含まれる動物性タンパク質です。
 まず、カゼインと身体的な影響について書いていきます。
 人間の脳には、血液脳関門(Blood
Brain Barrier)と呼ばれる結合部分があって、その部分にカゼインが悪影響を与えると言われています。
 カゼインはバリアとなる細胞どうしの結合をゆるめ、有害物質がこの血液脳関門(Blood Brain Barrier)をすり抜けてしまいます。
それにより、免疫機能が誤作動して、自己免疫疾患が起きてしまうのです。
 また、カゼインは、腸内環境も悪化させることがわかっています。
 牛乳に含まれるカゼインの40%を占めるα-カゼインを、人は消化・吸収することができないとされています。(人間の母乳には、α-カゼインが入っていません)
 分解されなかったカゼインが小腸まで届くと腸に炎症が生じ、腸内を傷つけてしまいます。その結果、腸内環境が悪化し、傷ついた部分から、毒素やアレルゲンなどが体内へ侵入しやすくなります。

出典 
Universe of FLORIDA
The foundation of gator nation https://www.peds.ufl.edu/divisions/genetics/programs/autism_card/casein.htm

 また、脳には葉酸を受け止める葉酸受容体というものがあり、ここにカゼインペプチドに対する抗体ができると、血液中から脳へ葉酸を運ぶ働きをストップさせてしまいます。
 その結果、脳が葉酸不足になります。
 葉酸は、細胞の核分裂を促す大切な栄養素で、葉酸が不足すれば、細胞が正しく分裂することができなくなり、誤った遺伝情報
を持った細胞が作られます。
 そのため、脳の葉酸欠乏が起こっていると、脳の正常な発達を阻害されてしまいます。
 これは、自閉症の子どもが生まれる原因のひとつと考えられています。

出典 food resarch international https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0963996914000258
 
 このように、牛乳に含まれる「カゼイン」は、脳や腸内環境に悪影響を及ぼし、自己免疫疾患の原因となることが示唆されています。
 僕が一番気になるのが、学校の給食に、「グルテン」も「カゼイン」も両方とも大量に出される点です。
 子供にどのような影響が出るのか疑問です。12年間も出続けますから。
 ひょっとすると、現在の多くの患者さんは、子供の頃からの「グルテン」「カゼイン」の食生活によって腸内環境が悪化し、それによって引き起こされていることも考えられます。
 ただ、「グルテン」や「カゼイン」がすべて悪いとは思いません。
 タバコを吸い続けても肺ガンにならない人もいれば、「グルテン」や「カゼイン」を摂取し続けても大腸ガンにならない人もいるはずだからです。
 一つ言えるのは、小麦と同様に、牛乳を始めとする乳製品の摂取を少しでも減らすことです。それによって自分の脳と腸内環境を「自衛」することが大事だと考えます。


②予防医療ニュース

今週の気になったニュースをピックアップして、感想を交えながらお届けします。

~ 転載↓ ~


アスリートこそ腸内細菌 競技ごとに違い、戦績も左右


出典 日本経済新聞

https://r.nikkei.com/article/DGXMZO49505880W9A900C1MY1000?unlock=1&s=1


~ 転載終わり ~

・感想


 今週のテーマとリンクする内容ですが、今後の予防医療の鍵となるテーマは「腸内環境」であると考えます。
 人間の欲求は五段階あって、一番上の層が自己実現欲であります。
 これからは、自己実現欲を満たすためには何がポイントになるか。それが「腸内環境」ではないかと考えます。
 このニュースのように、腸内細菌は種類によって、働き方が全然違います。
 ですので、自分の自己実現欲を満たすには

①どのような腸内細菌を育てるべきか
②どのように腸内環境を整えるか 

この2つがポイントであると考えます。
 足の速くなる腸内細菌、記憶力が良くなる腸内細菌、絵が上手くなる腸内細菌、痩せる腸内細菌、などが市場に出回るはずです。
 もちろん、大便のカスがカプセルに入った状態で。
 今後も腸内細菌に注目です。

③予防医療論文


今週の気になった論文をピックアップして、感想を交えながらお届けします。

~ 転載↓ ~


地域在住高齢者のヘルスリテラシー低下と動脈硬化リスク


【はじめに、目的】

動脈硬化は心血管・脳血管疾患の危険因子であるだけなく、高齢者の骨格筋量や認知機能が低下する要因となり、介護予防の観点からも着目すべき病変といえる。
心臓足首血管指数(CAVI) は血圧に依存しない評価指標として、動脈硬化性疾患のリスクを反映する。
一方、ヘルスリテラシーは健康情報を獲得・活用する能力を指し、運動や食習慣などの健康行動の実践に関与する。
ヘルスリテラシーの低下は、糖尿病などの慢性疾患の自己管理不良や、入院・死亡のリスク増加につながるとされており、動脈硬化の進行にも影響を及ぼすことが予想される。
本研究の目的は、地域在住高齢者のヘルスリテラシーがCAVI で測定した動脈硬化リスクに及ぼす影響を検討することであり、動脈硬化の進行予防に向けた理学療法介入の開発に寄与することが期待される。

【方法】
対象は、65 歳以上の高齢者向け測定会に参加した 300 名のうち、閉塞性動脈硬化症の疑いがある者、データ欠損がある者を除いた288 名 (平均 72.4 歳、男性 99 名 ) とした。動脈硬化指標として、血圧脈波検査装置 VS-1500(フクダ電子社製)を用いて CAVIを測定し、9.0 以上を動脈硬化リスクありとして判定した。
ヘルスリテラシーの評価には、European Health Literacy
Survey Questionnaire(HLS-EU-Q47) 日本語版を用いた。HLS-EU-Q47 は、合計 47項目からなる包括的尺度であり、総得点(0-50 点)が高いほど、ヘルスリテラシーが高いことを指す。その他の測定項目は、基本属性 (年齢,性,教育歴 )、Mini–Mental State Examination、歩行速度、服薬数、飲酒・喫煙習慣、身体活動低下の有無とした。なお、国際標準化身体活動質問票に基づき、Inactiveと判定される場合を身体活動低下ありとした。
統計解析は、HLS-EU-Q47 総得点の四分位群 (Q1-4) をカテゴリ化し、CAVI値、動脈硬化リスクありの割合、およびその他の測定項目を一元配置分散分析(2値変数はχ2検定)により比較した。
さらに、動脈硬化リスクの有無を従属変数、カテゴリ化した四分位群 (Q1-4)を独立変数とし、年齢・性別およびその他の測定項目で調整したロジスティック回帰分析を行った。

【結果】
最もヘルスリテラシーの低い Q1
は、最も高い Q4 に比較して、有意に CAVI が高値であり、教育歴が短く、身体活動低下の割合が高かった(p<0.05)。
動脈硬化リスクありの割合は、Q1:67%、Q2:51%、Q3:49%、Q4:44%で、Q1 が最も高かった ( p<0.05)。
最もヘルスリテラシーの低い Q1 をリファレンスとすると、その他の変数による調整後も、Q4は有意に動脈硬化リスクの低下に関連していた(OR[95%CI]=0.44[0.19-0.98])。

【結論】

ヘルスリテラシーの低下した地域在住高齢者では、年齢や身体活動の影響を除いても、動脈硬化リスクが高いことが示唆された。
動脈硬化の進行による高齢者の疾病・介護の発生を予防するためには、ヘルスリテラシーに着目し、教育的支援を含めた理学療法介入が重要であると考えられた。


上村 一貴1)・山田 実2)・葛谷 雅文3)・岡本 啓1)
1) 富山県立大学教養教育
2) 筑波大学大学院人間総合科学研究科
3)名古屋大学大学院医学系研究科


出典 日本老年医学会雑誌

https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/55/4/55_55.605/_article/-char/ja/

~ 転載終わり ~

・感想


セラピストを始めとする医療従事者の役割は、住民の方々に対してヘルスリテラシーを上げることだと考えます。
そのためには、地域での講演会活動やマスメディアへの出演、啓蒙啓発、患者さん一人一人への教育などが挙げられます。
ただ、成果が出るまでに時間がかかるので、地道に一歩ずつ進めていくしかありません。
ヘルスリテラシーは、教養を身に付けると同様に何年もかかるからです。
また、住民の方々は、なにが本当の情報で、なにが嘘の情報かを見極める力が必要になってきます。情報の海を泳がなくてはいけませんから。
論文を読み解く力も必要になるでしょう。
あとは、健康を維持する動機付けでしょうか。
このように、医療従事者も住民もヘルスリテラシーの向上が、病気の予防には必要不可欠であると、この論文を見て感じました。


④予防医療動画


予防医療に関する授業を収録して、YouTubeの限定公開でアップしています。

今回も、北海道の理学療法士の廣谷による生活習慣病予防のための「腸のセルフケア」の動画です。
全部で3回に渡ってお届けしていきます。
今回は、1回目を配信します。

https://youtu.be/fHtUsweT-SI

⑤今週の名言

最後に、ココロが豊かになる言葉を厳選してお届けします。


『吾十有五にして学に志し、

 三十にして立つ。

 四十にして惑わず、

 五十にして天命を知り、

 六十にして耳順(したが)う。

 七十にして、心の欲する所に従えども、 矩(のり)を踰(こ)えず。』

          (論語)

 私は十五歳のとき学問に志を立てた。

 三十歳になって、その基礎ができて自立できるようになった。

 四十歳になると、心に迷うことがなくなった。

 五十歳になって、天が自分に与えた使命が自覚できた。

 六十歳になると、人の言うことがなんでもすなおに理解できるようになった。

 七十歳になると、自分のしたいと思うことをそのままやっても、
人の道を踏みはずすことがなくなった」


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リハラボ 代表
廣谷迪正(ひろやみちまさ)


リハラボホームページ
https://mkhjwh3.wixsite.com/selfreha


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