departure おくりだすひと



母の葬儀から11日、迎えた長女の結婚式。



母が結婚式に出席するのは難しいかもしれないと思い始めたとき、長女は病院の看護師さんにある相談をしていた。

「式当日の様子を、インターネット経由で病室のおばあちゃんに見せてあげられないか」と。長女の思いを汲み、当日ネットでというのは難しいが、後からビデオなら見せてあげられるよう用意しますよ、との返事をいただいてた。


迎えた結婚式当日。
母が座るはずだったテーブルには、長女が用意した写真立てが置かれていた。


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新婚生活

昨年の3月に入籍を終え、既に新生活を始めていた娘夫婦。

最近のスタンダードは、「同居→入籍→結婚式」の順番。


「結婚前に一緖に住むこと」に、私たち世代は必要性を感じない。結婚する意志があるなら、結婚式をしてから一緖に住めばいいじゃないか。

が、そうも言ってられない。

私たちが反対して結婚話がなくなってしまっては大変だし、あちらのご両親も賛成してくださっていることだし、結婚そのものについては異存はないのだし。
ということで、とっくに家を出て新生活を始めている長女の結婚式。今さら、いよいよ結婚かぁーなんて実感も沸かないな、と思っていたが、これが意外にというか、やはり結婚式は格別というか。

これがとにかく




めちゃくちゃ楽しかった!!!!!!!!!!!

結婚式、いいなー。また行きたいなー。


式および披露宴の中身について全く知らされておらず、私は身内ながらもゲスト状態。へぇーあんなことやこんなこと、よく考えたね。細かいとこまで気を遣ってあるね。準備大変だったろうね。

よくある両親への感謝の手紙。あれはやらなくていいよーと言ってあったので、それはなかった。けれどその代わりに、「両親への感謝の気持ちを歌で伝えます」と、学生時代バンドをやっていた長女がドレス姿にベースを弾きながら、私たち夫婦の好きな曲、思い出の曲をメドレーで演奏してくれた。


いいね。お涙頂戴の手紙を読むより、断然良い。私は手拍子をしながらノリノリで歌って踊った。


最後に花束と、「子育て感謝状」なるものを渡され、そこには長女が生まれてから結婚するまでの日数が記されていた。


1万日ちょっと。


1日1日積み重ねての1万日。
子供とひとつ屋根の下で暮らせる日数ってそんなもんなのか。長いようで短いようで。


そしてそこにはこんな文章が。
「たくさん我儘を聞いてくれたお父さんと、世界一面白いお母さんのもとに生まれて私はとても幸せです」
いやいや、ちょっと待って。世界一面白いのはお父さんじゃない?と、心の中でツッコミ。ま、いっか。


そしてこの日、何よりも嬉しかった出来事。
それは披露宴終わり、ゲストの方々をお見送りする場面でのこと。
長女の職場の方、私と同年代か少し上の方が私に「世界一面白いお母さん、上手に子育てされましたね」と声をかけてくださった。


何それ。




…めちゃくちゃ嬉しい。




そんな褒め方されたの初めて。長女と私を同時に褒めてくださる、最上級の褒め方。

あぁ幸せだ。あぁ嬉しい。あぁ、なんて有難いんだ。

後日、長女は「結婚式でやりたいこと、全部できたから満足」と言った。
それがどれだけ幸せなことか、わかってるだろうか。そして、親の幸せは、子供の幸せと正比例だということをいつか知るだろう。





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