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1年間大河ドラマを見終えたぐらいの一代記のススメ

NHKの大河ドラマは1つの作品が1年間放送される。主役となるのは日本史上の人物であり、その生涯が描かれる。戦国時代と幕末を舞台にした物が人気が高い。今年の大河ドラマ『麒麟がくる』も感染症の影響で6月放送分までしか撮影が出来ていないとかで、そのあとは休止の予定らしい。大河ドラマファンはさぞかしガッカリしていることだろう。私もその1人だ。


そこで今日は、読後の感想が「まるで大河ドラマを1本見終えたぐらい」(個人的感想)の一代記小説を紹介してみよう!と思います。


若冲/澤田瞳子

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言わずと知れた江戸時代の絵師、伊藤若冲の一代記である。本作には池大雅、円山応挙、与謝蕪村など同時代の有名人が沢山登場する。京の大きな青物屋の跡継ぎだった若冲が弟に家督を譲って絵の世界へ邁進していく姿が描かれる。若冲がどんな人生を送り何を自分の絵に込め唯一無二の絵師になっていったのか、史実と作者の創作部分が絶妙に絡み合う。

ポイントは、作中に登場する作品をググりながら読むとさらに楽しめるところ。


渦uzu 妹背山婦女庭訓魂結び/大島真寿美

(いもせやまおんなていきんたまむすび)

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第161回(2019年)直木賞受賞作。人形浄瑠璃(文楽)作者、近松半二の生涯が描かれる一代記。大阪道頓堀、芝居好きの父と芝居小屋に通ううち浄瑠璃の魅力に取り憑かれ物書きの道を歩み出した半二。歌舞伎は役者の人気や実力に左右されるところもあるが、浄瑠璃はシンプルに作品の良し悪しが客の入りに関係する。誤魔化しのきかない世界だ。実力のある者が出世し、人形使いが作者に対してダメ出しする世界だ。それでも書かずにはいられなかった半二の人生の渦に読者も巻き込まれる。

昔NHKで放送されていた「里見八犬伝」を思い出しました。無表情な人形に喜怒哀楽を演じさせる人形使いさんたちの技に拍手。


国宝(上・青春篇 下・花道篇)/吉田修一

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架空の歌舞伎役者、極道生まれの喜久雄と梨園の嫡男として生まれた俊介。育ちも才能も違う2人の若者がそれぞれが描く役者道を一途に歩む一代記。華やかに見える歌舞伎界の裏は、なんと狭くて厳しい世界なのか。伝統を背負う重さ、技を磨く努力、鍛錬、もっと上、まだ足りないと求めていく凄み。その姿は徐々に狂気じみていくも誰も止められない。読後の感想は「なんだか物凄い本を読んでしまった‥

作中に歌舞伎の名場面がいくつも登場し、その描写が凄くてホンモノの歌舞伎を観に行きたくなります。とりあえずYouTubeで鑑賞。裏で支える女性たちの豪胆さがカッコ良い。


孤独な生き方

1つの道を極めた人たちに共通しているのは”孤独”だ。沢山の人にとり囲まれて一見華やかに見えても、常に向き合っているのは自分自身なのだ。彼らの死を、その行末を知った時に涙が流れてしまうのは、もっと楽な生き方は無かったのか、一途によく頑張ったねと、そんなふうに思えるからだろう。



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