小池康生句集『奎星』を読む

邦題がとつてもいいの日脚伸ぶ  小池康生


この俳句、「この映画とつてもいいの日脚ぶ」でも成立しますね。


でも作者はたぶん、「その映画(または小説?)の内容がよかったかどうかなんて、どうでもいい」と思っているんじゃないかな?と僕は思います。

海外作品がどう邦題に訳されたかを気にする君を、それを「とってもいいの」と口に出して言う君を、ちょっといいな、と心ひそかに思っている作者が透けて見えます。

その気持ちと、季語の「日脚伸ぶ」、ここ最近のような、日が伸びて春が近づくのを感じる陽気が、響き合います。


その他共鳴句を挙げさせていただきます。

巣箱掛け最初の雨が降つてをり
澄みてなほ水は面をうしなはず
風なくば風なきやうにちるさくら
訪れる影を放さぬ泉かな
夏の夕どこへも行かぬ歩きやう
初明かり奈良は生駒の向かう側
蝶の昼空の棺を持ちあぐる
ゆきぐものよこにあをぞら法隆寺
風一重二重三重八重芒原
胡桃柚餅子なかなか人を褒めぬ奴

※小池康生句集『奎星』について、現代俳句協会青年部オンライン勉強会「句集読書リレー」で発表させていただきました。よろしければ下記よりご覧ください。

https://filmuy.com/genhaiseinenbu


小池康生句集『奎星』



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