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LAST MONTH Episode10

<今回の主人公について>
2023年入社。商学部 経営流通学科卒業。
入社後、営業として渋谷に配属。
とにかく面白い人で、いつも周りを笑顔にしています。彼の話し方や言葉のチョイスは独特で、一緒にいると笑いが止まらずお腹の筋肉が悲鳴を上げること間違いありません。彼はまさにエンターテイナーです。

何故このタイミング!学生生活の締めくくりが・・・

長く苦しい就職活動を終え、地元福岡を離れいざ東京へ。就職前の一か月。遠く離れた福岡からの上京となる私は不安と期待でいっぱいだった。

友人と飲み会を開くたび、話題は”社会人になる不安”で、もちきりだった。
「私たちが働くなんて信じられない」「一生学生でいたい」など・・・半年以上前から言い続けている。正直自分が社会人として働く実感なんてないし、上京する引っ越しの準備も取り掛かってもいない。学生生活を終えることを受け入れられずにいたからだ。せめてこの生活が終わってしまう前に少しでも楽しい思い出で埋め尽くしたくて、いかに遊びの予定で学生生活を終えるか、ということしか頭になかった。

そんなことを考えていた矢先、事は起こった。昔から苦しんでいた鼻炎を学生の内に治しておこうと、耳鼻科に向かった。ちゃちゃっと終わりだろうと思っていたら、まさかだった。
「これは今すぐ手術が必要ですね」医師の言葉に、言葉を失った。

私の頭の中を数々の感情が飛び交った。
「そうは言っても、大した手術ではないであろう」「痛いのか?」
「いくらかかるのか?」「友人と遊ぶ約束や予定はどうなる?」などなど。
すぐには、なぜ手術をしないといけないのかが理解できなかった。
日常生活は出来ているし、今日もこれから遊びの予定が入っているのに手術なんていいから薬だけ出して早く帰らせてほしい・・・。
それが本音であった。
医師によるとの複合的な症状が重なり合い、左の鼻での呼吸が全くできていないという。言われてみれば、左の鼻だけ空気の通りが悪い気がしたし、味覚も半分程度にしか感じない時もあった。しかしながら、まさか手術になるとは思っていなかったし、すぐに治るものだと思っていたが、医師の説明によれば、全身麻酔での手術で術後の完治に一か月ほどかかるらしい。
ここで私の学生生活は終わりを迎えたと悟った・・・。

手術は2023年3月16日に決定した。
卒業式の前日だ・・・。
予約の関係でここしか手術できないと言われた。手術日は麻酔の影響で全く動けないが、翌日の朝、病院で止血剤を抜いた後なら、動けることは出来ると説明を聞き、卒業式に出ないなんていう考えは全く出来なく、動けるなら問題ないとその時は思っていた。

手術までの一週間、社会人になる不安よりも、突然楽しみにしていた学生最後の時間を奪われたことへのショックの方が大きかった。このまま社会人になるのかと思うと、いてもたってもいられず、手術までの間、毎日友達と遊んだ。思い残すことがないように・・・悔いが残らないように・・・。

別に死ぬわけではない・・・。親は”このまま治さずに苦しむより数日我慢するだけで一生が変わる”と僕をなぐさめるが、私から言わせると薬で治るという単純な気持ちで病院に行っただけなのに、何故よりによって、地元で過ごす学生生活の最後の時期に・・・。親が悪いわけではないのに強く反発してしまった。今では申し訳なく感じている。

そのような中、あっという間に手術当日を迎えた。手術後、目が覚めてからは想像以上に副作用が押し寄せた。医師から止血剤、鎮痛剤、抗生物質などを貰い、痛みや出血で眠れないだろうからと睡眠薬まで渡される始末。こうして予期せず学生最後の時間を潰してくれた「手術」 は幕を閉じた。

次の日。同期は皆晴れ姿で笑顔で写真を撮ったり、学生生活を懐かしんだり惜しんだり、式の後の飲み会を楽しみにしている中、何とか参加していた私 が考えていたことはただ一つ、「いち早く家に帰りたい・・・」
副作用で、しんどいなんてものじゃなかった。友人の話がまともに入ってこず、私は写真を撮るだけとり、すぐさま家に帰った。
SNSに上がるみんなの楽しそうな様子で胸が苦しくなり、スマホを伏せて寝床についた。 

それから引っ越しまで二日しかなく、その準備で手いっぱいだった。
地元を離れる日がきた。
不思議とあまり寂しくはなく、寂しそうにしている家族を横目に旅立った。
いよいよ社会人かというエモい気持ちもあまりなく、引越し荷物の荷ほどきをするのが面倒だな~ということしか頭になかった。

やっとのことで 新生活の準備を整え、ついに学生最後の日がやって来た。この日、同じゼミから上京してきた友人との飲み会があり、そこでまた、「全然実感沸かない」「一生学生でいたい」などと口走っている自分がいた。 
いよいよ明日から社会人生活が始まる。
この学生最後の一か月当初は、社会人になるにあたって準備や気持ちを改めないとなど、一ミリも考えてなかった。どんな思い出を最後に作ろうか、自分の学生生活をどう締めくくろうかそのことで頭はいっぱいだった。それなのに、手術によって、計画が台無しになった。それに術後の体調、新居の手続き関係などでそんなことを考える余裕もなかった。でも一つだけ言えることがある。「私の学生生活は最高だった。」悪かったのは最後の一カ月だけで学生生活を通じてみると僕の学生生活は友人やよき先生に恵まれてとても良いものとなったと身に染みて感じた。

入社式当日の朝。自然と学生気分は抜けていた。
更に言えば、今日から社会人としての責任がついてくることや、社会の荒波に揉まれながら自分はやっていけるのかなどなど、初めての満員電車に揺られながらモヤモヤ考えていた。ただ一方で、久しぶりに同期に会うことが楽しみでもあった。

今社会人になって五日が経ち、社内の導入研修も最終日を迎えた。会社がどのように成り立っているか、コンプライアンスなど学生では知りえない数多くのことを教えてもらったが、社会人は思ったより悪いものじゃない。研修を行ってくれた方々や同期のおかげで毎日楽しく過ごせている。この会社を選んだ自分に拍手を送りたい。
学生の頃はあんなになりたくなかった社会人だが、今は仕事に対する意欲が高く、今後の自分の将来が楽しみでならない。