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奮い立たせてくれた言葉(歌集を出すまで)

「歌集を出すには、あと3年しないと無理かな」


五行歌の会主宰である草壁先生からのお言葉です。2016年、26歳の夏でした。月刊誌の同人になって約1年。五行歌歴は10年だったので、すぐにでも歌集を出したい気持ちがありました。そのため、「あと3年も……」とショックが大きかったです。

でも落ち着いて考えたときに、自信を持って読者の方に見せられるような作品が書けているかと言われれば、違いました。気持ちだけ先行しているだけ。今のままでは納得のいく歌集の出版はできない。もっともっと自分の作品を向上させなければ。そう考えて、五行歌秀歌集や個人歌集、短歌の歌集、現代詩を読み漁りました。真似をしてはいけないけれど、詩歌の呼吸はつかみたいと思い、作品を音読したり、書き写したりもしました。

月刊誌『五行歌』への投稿以外にも、新聞の投稿欄や雑誌などの公募に積極的に応募し、どんな作品が選ばれるのか判断する目を鍛えようとしました。また、宮尾節子さんと文月悠光さんの詩の講座にも参加しました。素敵な仲間とも出会え、温かい時間を過ごすことができました。作品だけでなく、自分自身もアピールしなければと思い、Webページでの連載を行ったのもこの頃です。

「売れるか売れないかの前に、書店においてもらえるかどうかだよ」


月刊誌では良い歌順に歌が並ぶのですが、だんだんと上位に載る回数が増えました。また、Webページの連載を読んでくださった周りの方や、五行歌の同人の方で私を認識してくださる方が増えてきたと感じていました。そこで2017年6月に草壁先生に歌群(今までの自分の作品から100首ほど選び、それを章分けしたもの)を見ていただき、出版しても大丈夫という了承を得ることができました。2017年3月~6月まではお世話になってる方や五行歌の会の事務局の方に相談したり、帰り道母親に電話しながら号泣したりと、心が休まらない日々でした。

喜んだのもつかの間。知り合いの書店員の方に、「詩歌集だとなかなか馴染みがない人が多いので、装丁にも力を入れたい。どんな装丁が売れているか」と聞くと、「売れるか売れないかの前に、書店においてもらえるかどうかだよ」と返ってきました。「書店で装丁を見て、選んで買ってもらう」という土俵にすら、私では立てないと分かり、悔しかったです。厳しい世界だとわかっていたはずなのに。まるで「調子にのってるんじゃないよ、おまえごときが。そんなに甘くないよ」と言われたような、頭を殴られたような衝撃でした。

でも、やるだけのことはやらなくては。気になった装丁の本を何冊も買ってひたすら研究したり、書店にいき何時間もぐるぐる回って装丁を見たり。出版社の装丁の方やデザインに詳しい友人と何度も何度も話し合い、文字の大きさやバランスなども数ミリ単位で決めて、やっとできあがりました。夜眠れない日が続くほど、苛酷な半年間でした。本を出す人は、こんなに苦しい思いをしてるんだな、とげっそりしながら思いました。


歌集を出版してからは、チラシ作り、SNSでの宣伝や書店回り。文学フリマへの参加や、動画の作成、朗読会で歌集を朗読させていただくなどしました。一番大変だったのは、書店回りです。断られて当然と思い、勇気をふりしぼって歌集を置いてくれないかとお話しました。ただやはり書店の状況によって置いていただけないことが多く、落ち込みました。遠くにあり、足を運べないけれど、「あこがれの書店」には手紙を書いて、歌集を送りました。その長崎の書店の店長さまは、丁寧に手紙の返信をくださり、書店に歌集を置いてくださいました。遠くのまだお会いできていない方が応援してくださっている、そのことがとても大きな励みになりました。

自費出版のため、歌の並び・カバー絵のデザイン決め、できてからの宣伝・営業など、わからないことだらけでしたが、助けてくれた人、応援してくれた人のおかげで、なんとか頑張れたのだと思います。なにより、上記の言葉を言って、奮い立たせてくれた草壁先生と知り合いの書店員さんには感謝です。

今後「詩歌の本を出版したい」と考えている人を応援するために、自分に何ができるのか、考えていこうと思っています。


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